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2023 年度

発表年月日:24/03/14 | J-PARCセンター

世界初、中性子で車載用燃料電池内部の水の凍結過程を観察
~氷点下環境での性能向上に大きく貢献~

 日本原子力研究開発機構J-PARCセンターの篠原 武尚 研究主幹、豊田中央研究所の樋口 雄紀 研究員、総合科学研究機構中性子科学センターの林田 洋寿 副主任研究員らの研究グループは、大強度陽子加速器施設 (J-PARC)物質・生命科学実験施設 (MLF)中性子イメージング装置「RADEN」において、広い視野で観察するための大型環境模擬装置と、水と氷を高精度で識別する技術を新たに開発し、測定用の大強度中性子ビームの条件を最適化することで、氷点下における大型燃料電池内部で水と氷を識別することを可能としました。
 本研究で開発した観察技術を用いた燃料電池内部での水の凍結・融解現象の解明によって、電池の最適な制御方法の確立や、現象に対する正しい理解に基づいた材料の選定や流路構造の設計とその検証など、燃料電池の研究開発を加速する様々な展開が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p24031401/
発表年月日:24/03/6 | 原子力基礎工学研究センター

耐火ハイエントロピー合金の脆性と延性を支配する因子の解明
~多様な元素が拓く優れた合金の開発~

 京都大学工学研究科の乾 晴行 教授、日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究センターの都留 智仁 研究主席らは、実験、理論、原子・電子シミュレーションを用いて、二つの代表的な耐火ハイエントロピー合金(RHEA)であるTiZrHfNbTa合金(RHEA-Ti)とVNbMoTaW合金(RHEA-V)という2つの代表的なRHEAの示す力学特性と機構について検討を行い、RHEA-Tiで観察される高い強度と低温における延びは第IV族(HCP)元素の添加による電子の結合状態に基づく効果によってもたらされることを明らかとしました。
 この結果は、戦略的な元素設計がRHEA合金の機能制御に大きな威力を発揮することを示しています。本知見を生かした元素戦略に基づく合金設計により、次世代の高温構造用途に向けた新しいRHEAの開発が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p24030601/
発表年月日:24/03/5 | 原子力科学研究部門

量子ビームで「漆黒の闇」に潜む謎を解明
~縄文から始まった”漆技術”を最先端活用へ~

 日本原子力研究開発機構原子力科学研究部門企画調整室の南川 卓也 研究員、物質科学研究センターの関根 由莉奈 研究副主幹、松村 大樹 研究主幹、J-PARCセンターの廣井 孝介 研究副主幹、高田 慎一 研究副主幹、明治大学理工学部応用化学科の神谷 嘉美 客員研究員、本多 貴之 准教授の研究グループは、放射光や中性子、X線などの量子ビームを駆使することで、実用性や装飾性に優れた塗料として古来利用されてきた漆のナノ構造を解明することに成功し、その結果から、長年の謎であった黒漆の黒色の起源を明らかにしました。
 本研究によって、漆の興味深い形成過程と特殊なナノ構造が明らかになるとともに、性質の異なる量子ビームを利用することで長年にわたって謎であった漆膜の非破壊での構造解析が可能であることが示されました。本手法を歴史的な資料に適用することで、今まで明らかになっていなかった歴史の謎も解明できるかもしれません。また、漆の優れた物性がどのよう構造から発現しているのかを明らかにすることで、自然に優しい優れた次世代材料の開発が期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p24030501/
発表年月日:24/02/9 | 先端基礎研究センター

\鋼鉄の品質管理・日本刀など文化財の非破壊分析も/
鋼鉄中のわずかな炭素を素粒子で透視する
~ミュオンによる新しい非破壊微量軽元素分析法の開発~

 大阪大学ラジオアイソトープ総合センターの二宮 和彦 准教授、国際基督教大学の久保 謙哉 教授、京都大学複合原子力研究所の稲垣 誠特 定助教、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の下村 浩一郎 教授、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの髭本 亘 研究主幹、国立歴史民俗博物館の齋藤 努 教授らの研究グループは、量子ビームの一つであるミュオンを用いて、鋼鉄中に含まれる微量な炭素を非破壊で定量する方法を開発しました。
 本研究の成果は、人類にとって最も重要な物質の一つである鋼鉄の品質管理にミュオン分析という新たな選択肢を与えるとともに、日本刀などの文化財に新たな分析法を提供するものです。本手法は鋼鉄中の炭素の分析以外にも適用可能であり、金属中の酸素の分析など、様々な応用が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p24020902/
発表年月日:24/02/8 | 先端基礎研究センター

スピン三重項超伝導体の電子対状態を解明~超流動ヘリウム3と似た前例のない超伝導状態~

 京都大学大学院理学研究科の末次 祥大 助教、下邨 真輝 同修士課程学生(2023年3月卒業)、神村 真志 同修士課程学生、浅場 智也 特定准教授、笠原 裕一 同准教授、幸坂 祐生 同教授、栁瀬 陽一 同教授、松田 祐司 同教授、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの芳賀 芳範 研究主幹らの研究グループは、米国・コロラド大学ボルダー校と共同で、スピン三重項超伝導体の候補物質であるウラン系超伝導体UTe2における超伝導電子状態を世界で初めて明らかにしました。
 超伝導は2つの電子が対を組むことにより生じますが、本研究成果はUTe2の電子対状態がヘリウム3の超流動状態と類似した前例のないものであることを示したものです。この結果は、電子の量子力学的状態が非自明な位相幾何学的構造を有するトポロジカル超伝導の実現を支持する結果であり、結晶表面にマヨラナ準粒子と呼ばれる奇妙な粒子が現れることを示しています。この表面マヨラナ状態の制御法を開発することができれば、次世代量子コンピュータへの応用につながることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p24020801/
発表年月日:24/01/17 | J-PARCセンター

J-PARC加速器、ビームパワーを大幅更新し省エネも実現
〜ニュートリノ研究の強力な原動力に~

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で建設し運営している、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCの「メインリング」加速器で、性能指標であるビームパワーが当初目標を超える760kWを達成しました。大幅な省エネも実現しています。
 J-PARCで作った大強度ニュートリノビームを295km離れた岐阜県飛騨市神岡町の地下1,000mに位置する東京大学宇宙線研究所の5万トン水チェレンコフ検出器スーパーカミオカンデに打ち込みニュートリノの謎を解明する「T2K実験」の飛躍が期待されると同時に、ハイパーカミオカンデ計画への道筋を確実にしました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p24011701/
発表年月日:23/12/14 | 物質科学研究センター

集まれ!分子
~含水溶液中における疎水性物質の集合状態を観察~

 神奈川大学理学部 辻 勇人 教授らの研究グループは、大阪大学大学院理学研究科 中畑 雅樹 助教、東京理科大学理学部 菱田 真史 准教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 瀬戸 秀紀 教授、日本原子力研究開発機構物質科学研究センター 元川 竜平 マネージャーとの共同研究により、水とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中に独自開発の疎水性発光分子が分散した系について様々な測定を行い、溶媒中の水の割合を変化させると発光分子を含む集合体のサイズと集合状態が変化し、それが発光強度の変化と相関することを示しました。
 今回得られた知見に基づいて疎水性分子の集合状態を自在に制御できれば、有機ELや有機レーザー等の発光デバイスの効率向上や、薬物送達(ドラッグデリバリー)システムなどへの応用が期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23121401/
発表年月日:23/12/1 | 物質科学研究センター

天然素材のセルロースを凍らせるだけ!強い機能性ゲル材料を新たに開発
~凍結によるセルロースの結晶相転移と簡易なゲル合成法を発見~

 日本原子力研究開発機構物質科学研究センターの関根 由莉奈 研究副主幹、南川 卓也 研究員、廣井 孝介 研究副主幹、杉田 剛 研究員、柴山 由樹 博士研究員、豊橋技術科学大学の大場 洋次郎 准教授、東京都立産業技術研究センターの永川 栄泰 主任研究員、明治大学理工学部の深澤 倫子 教授の研究グループは、水溶液の凍結時に氷結晶間に生じるナノ空間内で、セルロースの結晶相転移が起きることを発見しました。さらに、その構造変化を利用することで、天然構造を持つセルロースを原料にして、簡易な方法で高強度セルロース多孔質ゲル材料を実現しました。
 本研究によって開発されたゲル材料は、自然由来の再生可能素材と凍結を利用した、新しい材料としての応用が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23120102/
発表年月日:23/11/30 | 先端基礎研究センター

ウラン系超伝導体はなぜ磁場に強い?
~超伝導を強くする磁気揺らぎの観測に成功~

 日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの徳永 陽 グループリーダーらは、東北大学金属材料研究所の青木 大 教授、京都大学理学研究科の石田 憲二 教授らと共同で、スピン三重項超伝導の候補物質であるウラン系超伝導体において強磁場中での核磁気共鳴(NMR)実験を行い、高い臨界磁場を示す超伝導のメカニズムを解明しました。
 今回の研究は、物質の持つ磁性と超伝導の密接な関係を明らかしたものです。その原理の応用によって、今後、ウラン系以外の化合物でもより高い臨界磁場を持つ超伝導体が開発できると期待されます。高い臨界磁場を持つ超伝導体の開発は、高性能の超伝導線材や超伝導を使った量子デバイスの開発にとって重要であり、超伝導技術の応用分野を拡げることに繋がります。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23113001/
発表年月日:23/11/25 | J-PARCセンター

硬くて丈夫なゲル電解質
~フレキシブル電池の耐久性向上に期待~

 東京大学物性研究所の橋本 慧 特任助教(研究当時)と眞弓 皓一 准教授、同大学大学院新領域創成科学研究科の伊藤 耕三 教授らは、「硬くて丈夫な電池用ゲル電解質」を開発しました。
 フレキシブル電池に適用可能なゲル電解質には、イオン伝導性に加えて、短絡の原因となる充放電時に生じる金属結晶の成長を防ぐための硬さが必要です。また、繰り返しの曲げ変形に耐えられる強靭性も兼ね備える必要があります。従来材料では、硬さと靭性にはトレードオフの関係があり、この両立は難しいと考えられてきました。本材料では、材料内部にミクロ相分離構造を形成させることで、金属結晶の成長を防ぐのに十分な硬さを実現しました。さらに、曲げ伸ばしで大きな負荷がかかると、高分子鎖が結晶化して硬くなることで、固体・半固体・有機無機複合ゲル電解質の中でも世界最高水準の高い強靭性を達成しました。
 硬さと強靭性を併せ持つゲル電解質を電解質膜として用いることで、フレキシブル電池の耐久性向上につながることが期待されます。
 日本原子力研究開発機構からはJ-PARCセンターの青木 裕之 研究主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23112501/
発表年月日:23/11/20 | 原子力科学研究部門

タンパク質の分子骨格が実は持っていた知られざる機能 中性子で明らかに
~タンパク質分子の機能の解明や、迅速な創薬に向けた新しいタンパク質分子デザインに期待~

 茨城工業高等専門学校 千葉 薫 教授、元日本原子力研究所特別研究員 松井 拓郎 氏、京都大学複合原子力科学研究所 茶竹 俊行 准教授、日本原子力研究開発機構 大原 高志 研究主幹、元理化学研究所上級研究員 油谷 克英 氏(故人)、茨城大学 田中 伊知朗 教授、元日本原子力研究所研究主幹・元茨城大学教授 新村 信雄 氏は、日本原子力研究所(現、日本原子力研究開発機構原子力科学研究所)の生体高分子用単結晶中性子回折装置-3(BIX-3)を用いて行ったヒトリゾチームの中性子結晶構造解析を起点として複数の実験手法で得られたデータを精査し、タンパク質の分子の中では、タンパク質分子自身が作る静電ポテンシャルなどにより作られる「タンパク質場」に引き寄せられた水素イオンまたは重水素イオンによって、ペプチド結合が個々に柔らかくなることを明らかにしました。
 本研究の結果は、タンパク質のペプチド結合は一様に硬い平面である、という、長年にわたりタンパク質の構造研究を支えてきた概念と、タンパク質の主鎖は立体構造の骨格を保ち、側鎖が機能を担う、という役割分担を見直す必要があることを示しています。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23112001/
発表年月日:23/11/9 | 先端基礎研究センター

隠された磁気を超音波で診断
~高速磁気メモリ開発に向けた材料研究の新手法~

 理化学研究所創発物性科学研究センターのトマス・リヨンス学振特別研究員(研究当時)、ホルヘ・プエブラ研究員、東京大学物性研究所の大谷 義近 教授(理研創発物性科学研究センター量子ナノ磁性研究チームチームリーダー)、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの山本 慧 研究副主幹(科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者、理研開拓研究本部柚木計算物性物理研究室客員研究員)らの共同研究グループは、磁場には容易に応答しないにもかかわらず磁気を内に秘める材料「反強磁性体」の性質を、超音波を用いて詳細に調べられることを実証しました。
 本研究成果は、磁気メモリの高記録密度化および動作高速化や高周波磁場の検知を可能にするとして注目されている反強磁性材料の新しい物性測定手法を提供し、今後幅広く利用されると期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23110901/
発表年月日:23/10/26 | 先端基礎研究センター

磁石によるうろこ模様で回る音波を制御
~人工格子デザインで「左回り」「右回り」の読み出しに成功~

 理化学研究所創発物性科学研究センターのホルヘ・プエブラ研究員、東京大学物性研究所のリーヤン・リャオ大学院生、大谷 義近 教授(理研創発物性科学研究センター量子ナノ磁性研究チームチームリーダー)、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの山本 慧 研究副主幹(科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者、理研開拓研究本部柚木計算物性物理研究室客員研究員)らの共同研究グループは、基板の表面に磁石を用いたうろこ状の周期的な模様(パターン)を形成することで、その表面を伝わる音波に「バレー」(valley、谷)と呼ばれるある種の回転状態を与え、磁場によって、その「バレー音波」の左回りと右回りを区別して制御できることを明らかにしました。
 本研究成果は、バレー音波の回転状態に0と1のビットを割り振ることで、省エネルギーで過酷環境でも動作する新たな情報処理デバイスの開発に貢献すると期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23102601/
発表年月日:23/10/24 | 物質科学研究センター

超伝導になる電子のカタチが見えた!
~量子ビームで描く次世代材料の設計図~

 大阪大学大学院基礎工学研究科 藤原 秀紀 助教、中谷 泰博さん(当時大学院生)、関山 明 教授の研究グループは、日本原子力研究開発機構 斎藤 祐児 研究主幹、静岡大学 海老原 孝雄 教授、立命館大学 今田 真 教授、甲南大学 山﨑 篤志 教授、摂南大学 東谷 篤志 准教授、広島大学 田中 新 准教授、および理化学研究所 玉作 賢治チームリーダーなどとの共同研究のもと、大型放射光施設SPring-8において硬X線光電子分光、X線吸収分光の直線偏光依存性を測定することで、希土類Ce化合物CeNi2Ge2の超伝導状態を形成する“電子のカタチ”ともいえる実空間における電荷分布を直接捉えることに世界で初めて成功しました。
 この手法を用いることで超伝導体の系統的な材料探索に道が開かれ、Society 5.0の実現に向けた次世代材料研究の加速が大いに期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23102401/
発表年月日:23/10/23 | 物質科学研究センター

画期的な自動減圧ろ過装置「ろかすま」
10月23日(月)に販売開始!

 (株)藤原製作所は日本原子力研究開発機構の技術協力のもと、化学分析や工業製品の材料の調整など、幅広い用途で用いられている減圧ろ過の作業を劇的に簡素化した“スマート”な自動減圧ろ過装置「ろかすま」と、2つのサンプルを同時に減圧ろ過できる「ろかすまツイン」を開発し、10月23日に販売開始します。「ろかすま」「ろかすまツイン」は、たくさんの種類のサンプルを連続してろ過する必要がある分野での活用が期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23102301/
発表年月日:23/10/11 | J-PARCセンター

自動車向け燃料電池内部の水の挙動を解明
~中性子と放射光による観察に世界で初めて成功~

 豊田中央研究所 (豊田中研) 、日本原子力研究開発機構(JAEA)、総合科学研究機構 (CROSS) の三機関は、大強度陽子加速器施設 (J-PARC)物質・生命科学実験施設 (MLF) エネルギー分析型中性子イメージング装置「RADEN」のパルス中性子ビーム、および大型放射光施設SPring-8豊田ビームライン(BL33XU)の放射光X線を用いて、車載用大型燃料電池内部の水の挙動を明らかにすることに成功しました。
 本研究で開発した車載用燃料電池の水解析技術は、燃料電池の性能に影響を及ぼす滞留水の解析に応用でき、将来の燃料電池の高性能化に不可欠な役割を果たすものです。現象解明による制御方法の最適化だけでなく、現象に対する正しい理解に基づいた材料・流路のコンセプトの立案とその検証など、燃料電池の研究開発を加速する様々な展開が期待されます。
 日本原子力研究開発機構からはJ-PARCセンターの篠原 武尚 研究主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23101101/
発表年月日:23/09/27 | 物質科学研究センター

小惑星リュウグウが宇宙と実験室で違って見えるのはなぜ?
~「宇宙風化」が水のしるしを隠す~

 産業技術総合研究所地質調査総合センターの松岡 萌 研究員・デジタルアーキテクチャ研究センターの神山 徹 研究チーム長は、東北大学大学院理学研究科の中村 智樹 教授、天野 香菜 学術振興会特別研究員(地学専攻・博士課程後期)、日本原子力研究開発機構物質科学研究センターの大澤 崇人 研究主幹、東京大学大学院理学系研究科の橘 省吾 教授、九州大学理学研究院の奈良岡 浩 教授・岡崎 隆司 准教授などと共同で、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの表面を上空から観測したデータと、リュウグウで採取して持ち帰った試料を地球大気にさらさずに分析したデータを直接比較し、さらに、リュウグウに似て含水ケイ酸塩に富む始原的な隕石を分析した結果と比較しました。その結果、リュウグウは宇宙線や宇宙塵にさらされて表面(1/100 mm程度)が変質し、水が部分的に失われていることを明らかにしました。
 本研究成果は、探査機からの遠隔観測と採取試料分析を組み合わせて初めて明らかにできたものであり、惑星探査におけるサンプルリターンの重要性を示す画期的な成果です。これらの分析結果から、リュウグウが現在までにたどった形成進化過程や、地球・海・生命の原材料間の相互作用と進化を解明し、太陽系科学の発展へ貢献することが期待されています。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23092701/
発表年月日:23/09/7 | 先端基礎研究センター

アルカンとベンゼンの直接結合反応のための金属ナノ粒子-ゼオライト複合触媒を開発
~酸点とPd粒子の近接による反応の高効率化を実現~

 横浜国立大学 大学院工学研究院 本倉 健 教授(研究当時は東京工業大学 物質理工学院 特定教授)、東京工業大学 物質理工学院 美崎 慧 大学院生(研究当時)、電気通信大学 燃料電池・水素イノベーション研究センター 三輪 寛子 特任准教授、日本原子力研究開発機構 伊藤 孝 研究副主幹らの研究グループは、ゼオライトの外表面にPdナノ粒子を担持した触媒を開発し、この触媒を用いてアルカンとベンゼンの直接結合反応を実現しました。
 従来のアルキルベンゼン合成では副生成物が大量に排出されますが、本手法を用いると水素あるいは水のみが副生成物となります。本手法によって合成洗剤等の原料となり工業的価値の高いアルキルベンゼンの合成における副生成物を低減し、プロセスを簡略化できることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23090702/
発表年月日:23/08/22 | 物質科学研究センター

中性子と水素のスピンでナノプレート状の氷結晶観測に成功
~食品・医薬品・細胞組織の凍結保存技術開発への貢献に期待~

 日本原子力研究開発機構物質科学研究センター・J-PARCセンターの熊田 高之 研究主幹、中川 洋 研究主幹、関根 由莉奈 研究副主幹らは、総合科学研究機構の大石 一城 次長ら、広島大学大学院統合生命科学研究科の川井 清司 教授とともに、スピンコントラスト変調中性子小角散乱法を用いてグルコース水溶液中に生成した直後の氷結晶の特異な形状を観測することに初めて成功しました。
 今後、計算科学などとあわせてグルコース分子や他の凍結保護剤による氷結晶成長抑制メカニズムを明らかにすることで、将来的には本測定法を通じた臓器・細胞・卵子や精子の冷凍保存技術の開発や、寒冷地における生物の生命維持機能の解明への貢献が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23082201/
発表年月日:23/08/21 | 先端基礎研究センター

気体の熱はどう固体に伝わるか
~気体-固体間での熱の伝搬過程を解明、新たな熱伝達制御へ~

 日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの植田 寛和 研究副主幹と福谷 克之 グループリーダー(東京大学生産技術研究所 教授)は、水素分子から固体表面への回転エネルギー移動機構を明らかにしました。
 本研究の成果は、気体から固体への熱の伝わりやすさを固体最表面の元素と構造を変えることで制御できる可能性を示すものです。気体から固体へ熱が伝わりやすくする、断熱性をよくするなど熱伝達の自在制御が可能になることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23082101/
発表年月日:23/08/15 | J-PARCセンター

日本が開発した高強度マグネシウム合金はなぜ強いのか
~その場中性子回折実験で変形中の構成相それぞれのふるまいを解明~

 日本原子力研究開発機構J-PARCセンターのハルヨ・ステファヌス 研究主幹、ゴン・ウー 研究副主幹、相澤 一也 研究員、川崎 卓郎 研究副主幹、熊本大学の山崎 倫昭 教授の研究グループは、熊本大学が開発した高強度マグネシウム合金(LPSO–Mg合金)が高温押出加工により強度が大きく増加するメカニズムを、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)に設置している工学材料回折装置TAKUMIを用いた「その場中性子回折実験」によって解明しました。
 この研究結果はマグネシウム合金の設計や高温加工プロセスの最適化において重要なガイドラインとなり、強度と延性をさらに向上させたマグネシウム合金の開発につながることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23081501/
発表年月日:23/07/20 | 先端基礎研究センター

ステップアンバンチング現象の発見
~半導体表面を原子レベルで平坦にする新技術~

 早稲田大学理工学術院の乗松 航 教授(名古屋大学客員教授)らの研究グループは、名古屋大学博士後期課程の榊原 涼太郎 学生、中国内モンゴル民族大学の包 建峰 講師、日本原子力研究開発機構の寺澤 知潮 研究員、名古屋大学未来材料システム研究所の楠 美智子 名誉教授らとの共同研究で、半導体表面を原子レベルで平坦にする新技術として応用可能な、ステップアンバンチング現象を発見しました。
 この現象は既存の理論からは単純には説明できず、本成果は表面科学理論に一石を投じるものと考えられます。また、本技術によって化学機械研磨を含むプロセスを削減しつつ加工ダメージ層のない原子レベルで平坦な表面を得られる可能性があり、これによって半導体製造工程をシンプルにすることができるため、大幅なコスト・時間の削減が可能になることも期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23072001/
発表年月日:23/06/16 | 先端基礎研究センター

「インダクタ」のサイズを10000分の1に!超小型化できる新原理を考案
~電子回路の小型・省電力化によるIoT社会の進展に期待~

 日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの荒木 康史 研究副主幹と、家田 淳一 研究主幹は、電子回路の基礎となる素子「インダクタ」の機能について、絶縁体の薄膜を用いることにより、従来型インダクタと同等の電力効率を保ちつつサイズを抜本的に小型化できる新原理を考案し、理論的に検証しました。
 本研究の成果は、電子回路の小型化と省電力化を両立する、基盤技術の足掛かりとなるものです。これまで信号処理回路中で大きなサイズを占めていたインダクタを大幅に小型化かつ省電力化することは、身の周りのあらゆる電子機器に高度な情報処理機能を搭載するための鍵となります。これにより、様々な電子機器がネットワークと連携して機能する「Internet of Things (IoT)」社会の進展に大きく貢献することが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23061602/
発表年月日:23/06/5 | 原子力基礎工学研究センター

電子機器の信頼性評価の迅速化に光明
~様々な中性子施設で半導体ソフトエラー評価を可能にする技術を開発~

 量子アプリ共創コンソーシアム(QiSS)で京都大学大学院情報学研究科 橋本 昌宜 教授が課題責任者を務める産学連携ソフトエラー研究グループでは、任意の中性子源による1つの測定結果とシミュレーションを組み合わせて地上ソフトエラー率を求める手法を開発しました。また、3施設7種類の中性子源による測定値と放射線挙動解析コードPHITSを用いてソフトエラー率評価を行い、本手法の有効性を実証しました。
 本手法によって、限られた特殊な中性子源を用いることなく国内外に多数ある一般の中性子源を用いたソフトエラー率評価が可能となり、高まるソフトエラー率評価の需要に応じることができます。これにより、情報化社会を支える安心・安全で信頼できる半導体チップの開発ペースを加速させることが期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、原子力基礎工学研究センターの安部 晋一郎 研究副主幹と佐藤 達彦 研究主席、J-PARCセンターの原田 正英 研究主幹と及川 建一 研究主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23060501/
発表年月日:23/06/1 | 先端基礎研究センター

ウラン化合物におけるカイラリティを持つ超伝導状態を解明

 東京大学大学院新領域創成科学研究科の石原 滉大 助教、水上 雄太 助教(研究当時、現在東北大学大学院理学研究科准教授)、橋本 顕一郎 准教授、芝内 孝禎 教授、日本原子力研究開発機構の酒井 宏典 研究主幹、芳賀 芳範 研究主幹らの研究グループは、磁場を3つの方向にかけたときの応答の違いを見るという新しい手法を用いて、ウランを含む超伝導体であるウランテルル化物(UTe2)においてカイラリティ(掌性)を持つ超伝導状態が実現していることを実験的に明らかにしました。
 カイラル超伝導状態は従来は基礎物理学的な観点から研究されてきましたが、近年ではトポロジカル量子計算への応用も期待されています。本成果をもととして、UTe2を舞台としてカイラル超伝導状態の基礎的な理解が深められていくとともに、量子計算技術への応用的な研究が促進されることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23060101/
発表年月日:23/05/12 | 先端基礎研究センター

新・超伝導状態: ウラン系超伝導体の超純良単結晶で発見
~磁場によって性格を変える超伝導~

 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの酒井 宏典 研究主幹、徳永 陽 グループリーダーらは、東北大学 金属材料研究所の木俣 基 准教授、淡路 智 教授、佐々木 孝彦 教授、青木 大 教授らと共同で、スピン三重項トポロジカル超伝導物質候補であるウラン化合物UTe2において、低磁場超伝導状態と高磁場超伝導状態との間に、両者が入り混じった新しい超伝導状態が存在することを発見しました。
 本研究は、UTe2がスピン三重項トポロジカル超伝導体であることを裏付けるものです。低磁場・高磁場・その混合超伝導状態のように、多彩な超伝導状態を制御する方法を見出すことができれば、次世代量子コンピュータ用の新しい超伝導量子デバイスの開発につながると期待されます。
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発表年月日:23/05/10 | 先端基礎研究センター

量子電磁力学をエキゾチック原子で検証
~ミュオン特性X線エネルギーの精密測定に成功~

 理化学研究所の奥村 拓馬 特別研究員(研究当時、現東京都立大学理学研究科化学専攻助教)、東 俊行 主任研究員、日本原子力研究開発機構の橋本 直 研究副主幹、東京都立大学の竜野 秀行 客員研究員、立教大学の山田 真也 准教授、カスラー・ブロッセル研究所のポール・インデリカート教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の高橋 忠幸 教授、高エネルギー加速器研究機構の下村 浩一郎 教授、中部大学の岡田 信二 准教授(研究当時、現教授)らの国際共同研究グループは、最先端のX線検出器である超伝導転移端マイクロカロリメータを用いて、負ミュオンと原子核からなる「ミュオン原子」から放出される「ミュオン特性X線」のエネルギースペクトルを精密に測定し、強電場量子電磁力学をエキゾチック原子で検証するための原理検証実験に成功しました。
 本研究成果は、人類がいまだ人工的には作り出せない超強電場下における基礎物理法則の検証に向けた大きな一歩です。本研究により実証された最先端量子技術による高効率かつ高精度なX線エネルギー決定法は、ミュオン原子を用いた非破壊元素分析法などさまざまな研究分野への応用が期待できます。
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発表年月日:23/04/27 | J-PARCセンター

層状化合物にミクロな磁気ゆらぎが存在
~ミュオンで3つの温度領域を発見~

 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の中村 惇平 技師、下村 浩一郎 教授と、日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター、東北大学 金属材料研究所、中国科学院 金属研究所、筑波大学 数理物質系で構成される研究グループは、J-PARCのミュオン測定(μSR)によって層状化合物であるセレン化クロム銀(AgCrSe2)の短距離スピン相関の存在を確定させるとともに広い温度範囲での温度依存性を初めて明らかにし、その常磁性相が3つの温度領域に分けられることを発見しました。現状では短距離スピン相関を応用したデバイスはありませんが、本研究のような基礎研究によって短距離スピン相関の理解が進むことで、将来、革新的デバイスが開発されるきっかけとなる可能性があります。
 日本原子力研究開発機構からは、J-PARCセンターの川北 至信 副ディビジョン長が本研究に参加しました。
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発表年月日:23/04/21 | J-PARCセンター

反強磁性体におけるトポロジカルホール効果の実証に成功
~磁気情報の新しい読み出し手法としての活用に期待~

 東京大学大学院工学系研究科の高木 寛貴 大学院生(研究当時)、高木 里奈 助教(研究当時)、関真 一郎 准教授らの研究グループは、同物性研究所の中島 多朗 准教授、同先端科学技術研究センターの有田 亮太郎 教授らとの共同研究を通じて、スピンの立体的な配列に起因して電子の進行方向が曲げられる現象「トポロジカルホール効果」を、磁化を持たない反強磁性体において実証することに成功しました。
 ホール効果は、地磁気の検出や、強磁性体における磁気情報の読み出しなどに広く活用されている現象で、通常は磁場や磁化に比例して生じることが知られています。一方、本研究で注目した反強磁性体においては、四面体状のスピン配列の中を運動する電子が「曲がった空間」に由来した仮想磁場を感じることで、強磁性体に匹敵する巨大なホール効果が発現することが明らかになりました。上記の現象は、磁化を持たない反強磁性体における磁気情報の新たな読み出し原理として利用できることが期待され、反強磁性体をベースにした高速・高密度な新しい磁気情報素子の開発につながることが期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、J-PARCセンターの鬼柳 亮嗣 研究副主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2023/p23042102/
発表年月日:23/04/4 | 物質科学研究センター

電子源からの電子放出量を7倍に増やす表面コーティング技術を開発
~電顕や放射光施設の高性能化に期待~

 日本大学生産工学部の小川 修一 准教授(研究当時は東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター兼 多元物質科学研究所)らの研究グループとロスアラモス国立研究所(米国)、北京理工大学(中国)、日本原子力研究開発機構からなる共同研究チームは、光電子顕微鏡と光電子分光法、および第一原理計算によって六ホウ化ランタン(LaB6)表面への六方晶系窒化ホウ素(hBN)コーティングによる仕事関数低下を発見し、そのメカニズムを解明しました。
 電子を空間中に放出するための電子源は、電子顕微鏡や半導体製造のための電子線描画装置、放射光施設等で利用される加速器などに利用されています。電子源の材料として現在は仕事関数の低いLaB6が広く使われていますが、より仕事関数の低い材料を開発できれば、より多くの電子放出が可能となり、電子源の高性能化につながります。本成果は電子顕微鏡や放射光を使った物質材料研究を側面からサポートし、より優れた材料開発に貢献すると期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、物質科学研究センターの吉越 章隆 研究主幹が本研究に参加しました。
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2022 年度

発表年月日:23/02/28 | 先端基礎研究センター

磁気デバイスの小型化に重要な「磁気の波の真空に潜むエネルギー」を解明
~ナノスケールにまで薄くした磁石の基礎原理が理論計算から明らかに~

 日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの仲田 光樹 研究副主幹、鈴木 渓 研究員は、「磁気の波の真空に潜むエネルギー」の存在を理論計算で示し、そのエネルギーが「磁石を薄くしたときに生まれるエネルギー」であることを明らかにしました。
 急速なモバイル化が進んでいる現代の情報化社会において、磁気デバイスの更なる小型化が求められており、薄い(薄膜化された)磁石は重要な研究対象です。しかし、磁石をナノスケールにまで薄くしたとき、磁石の性質がどのように変化するかは、よくわかっていませんでした。海面を伝わる波のように、磁石の中にも波(磁気の波)が生じます。この波の特徴として、波が一つもない真空にもエネルギーが潜んでいると言われています。本研究では、薄い磁石に特有の「磁気の波の真空のエネルギー」を理論計算で解明しました。本研究を更に推進させることで、薄膜磁石の高集積化などへの道が開け、磁気デバイスの小型化が実現可能になることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p23022801/
発表年月日:23/02/14 | 原子力基礎工学研究センター

世界初!がん幹細胞の考慮により臨床の放射線治療効果の予測に成功
~基礎細胞実験と臨床研究をつなぐ予測モデルを開発~

 弘前大学大学院保健学研究科の嵯峨 涼 助教、日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究センターの松谷 悠佑 研究員(研究当時。現職:北海道大学保健学研究院 講師)らは、“がん幹細胞を考慮することで臨床の放射線治療効果の再現が可能な予測モデルの開発”に世界で初めて成功しました。
 臨床において治療されるがん組織は、放射線に対して様々な細胞応答を示す不均質な細胞集団で構成されています。本研究では、不均質な細胞集団の中でも高い抵抗性を示すがん幹細胞の割合を測定し、不均質な細胞集団を考慮した細胞殺傷効果予測モデルを開発しました。このモデルを用いて肺がんの治療効果の解析を進めた結果、細胞実験で測定される肺がん細胞の細胞殺傷効果、ならびに臨床における肺がん患者さんの治療効果を同時に再現することに成功しました。
 本研究では、肺がんの放射線治療効果について検討しましたが、今後は、肺がん以外のがん組織に対しても同様の評価を進める予定です。また、この技術を応用することで、がん幹細胞の含まれる割合が異なる患者さんに合わせたオーダーメイド治療への発展が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p23021401/
発表年月日:23/02/2 | 原子力基礎工学研究センター

結晶粒超微細化により、酸素に起因したチタンの低温脆性を克服
~悪者とされてきた不純物酸素の有効利用に期待~

 京都大学大学院工学研究科の崇 巌(CHONG, Yan)特定助教、辻 伸泰 教授、日本原子力研究開発機構の都留 智仁 研究主幹らの研究グループは、結晶粒超微細化によって酸素に起因したチタンの低温脆性を克服することに成功しました。チタンおよびチタン合金の結晶中に侵入型固溶原子として存在する酸素は、力学特性上の諸刃の剣と考えられてきました。酸素は強度を大きく向上する一方で延性(均一な伸び)を著しく低下させます。本研究では、チタンにおけるこのジレンマを克服する基本戦略として、結晶粒超微細化の有効性を明らかにしました。0.3 wt.%の酸素を含む超微細粒多結晶純チタンは、77Kで超高強度と大きな均一伸びを示すことを発見し、先端的なナノスケール材料解析手法と理論計算により高強度化と脆性抑制の理由が明らかとなりました。本成果は、チタンおよびチタン合金においてこれまで悪者とされてきた酸素の役割を転換し、酸素の有効利用と、チタン製造コストの低減の可能性を示すものです。
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発表年月日:23/01/30 | 先端基礎研究センター

炭素膜グラフェンと金はどのように電子の手をつなぐか?
~金原子の配置でグラフェンとの化学結合を操作して省エネ集積回路の実現へ~

 日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの寺澤 知潮 研究員、名古屋大学シンクロトロン光研究センターの伊藤 孝寛 准教授、大阪大学産業科学研究所の田中 慎一郎 准教授らは、次世代材料グラフェンと金の化学結合が形成する機構を明らかにしました。本研究では原子の配置が明らかにされている凹凸構造を持つ金の表面にグラフェンを成長させ、角度分解光電子分光(ARPES)法を用いてグラフェンと金の境目にある「電子の手」である電子軌道を観察したところ、凹凸構造の金の6sと呼ばれる電子軌道とグラフェンの電子軌道が繋がり化学結合を作った様子を世界で初めて観測しました。さらに、凹凸構造の周期によって化学結合の位置を変えられることがわかりました。
 本研究による金とグラフェンの化学結合のメカニズムの解明は、化学結合を通じて金の自発的なスピンの偏りをグラフェンに受け渡す手法の制御に繋がります。この現象はスピンを利用した次世代省エネルギー集積回路などの研究分野であるスピントロニクス素子への活用が見込まれます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p23013001/
発表年月日:23/01/26 | 先端基礎研究センター

K中間子と陽子が織りなす風変わりなバリオンを測定
~Λ(1405)ハイペロンの複素質量の直接測定に成功~

 大阪大学核物理研究センターの井上 謙太郎 特任研究員、川崎 新吾 特任研究員、野海 博之 教授(高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所・特別教授)、高エネルギー加速器研究機構、理化学研究所、日本原子力研究開発機構、東北大学電子光理学研究センター、J-PARCセンター、イタリア国立原子核研究所、ステファンメイヤーサブアトミック物理学研究所他からなる研究グループは、K中間子と陽子から直接Λ(1405)粒子を合成し、その複素質量の直接測定に世界で初めて成功しました。
 本研究の結果は、K中間子と核子の相互作用を与え、最近発見された新奇なK中間子原子核を理解する基礎的な情報となります。さらには、中性子星の中心部のような超高密度核物質の記述に繋がる理論の進展が期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、先端基礎研究センターの橋本 直 研究副主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p23012601/
発表年月日:22/12/19 | 物質科学研究センター

高輝度放射光で解き明かすシリコン酸化膜の成長過程
~ナノデバイスの世界を支配する界面欠陥とキャリア捕獲~

 日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの津田 泰孝 博士研究員、吉越 章隆 研究主幹、東北大学 マイクロシステム融合研究開発センターの高桑 雄二 教授、国際放射光イノベーション・スマート研究センター、兼 多元物質科学研究所の小川 修一 助教、福井工業高等専門学校の山本 幸男 教授らの研究グループは、シリコン酸化膜の成長メカニズムをSPring-8の高輝度放射光を用いたリアルタイム光電子分光法によって観察し、これまで酸化には無関係と思われていた電子や正孔などのキャリアが関与する反応機構を世界で初めて明らかにしました。
 今後、本研究を応用することで、デバイスの省電力化や信頼性向上、さらなる高密度集積化による小型化や高性能化などへの貢献が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22121901/
発表年月日:22/12/7 | 先端基礎研究センター

スピンの揺らぎの直接観測に世界で初めて成功
~ナノメートルサイズの磁性を解明し、超小型磁気素子の機能向上へ~

 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの社本 真一 客員研究員と、総合科学研究機構 中性子科学センターの飯田 一樹 副主任研究員、日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの樹神 克明 グループリーダー、同J-PARCセンターの稲村 泰弘 副主任研究員らのグループは、フーリエ変換を利用した新しい解析法を開発することで、スピン揺らぎ、すなわち波として揺らぐスピン波の様子を、1ナノメートル以下で直接観測することに世界で初めて成功しました。
 今後、これまでよくわからなかったナノ磁性体やアモルファス磁性体、スピングラスなど、様々な磁性体のスピン揺らぎの研究に本手法が大きく貢献し、ナノメートルサイズの超小型の磁性材料の開発が加速されると期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22120701/
発表年月日:22/12/5 | 原子力基礎工学研究センター

二次宇宙線計測データの気温効果と積雪効果を補正する新手法を開発
~太陽フレアの影響など、宇宙環境の診断に応用~

 国立極地研究所の片岡 龍峰 准教授らの研究グループは、昭和基地の宇宙線観測データを用いて、ミューオン計測に現れる気温効果と中性子計測に現れる積雪効果の新しい補正方法を開発しました。積雪効果については、物理モデルによる補正方法を新たに提案するとともに、対流圏・成層圏の気温を入力データ、宇宙線計数率を出力データとした機械学習によって、物理モデルによる補正と同等の補正ができることが明らかになりました。この研究成果により、太陽フレアに伴う宇宙天気現象の影響を受けて変動する宇宙線の精密測定から宇宙環境を診断できるようになります。
 日本原子力研究開発機構からは、原子力基礎工学研究センターの佐藤 達彦 研究主席が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22120501/
発表年月日:22/11/29 | 先端基礎研究センター

素粒子ミュオンで捉えた!超伝導に埋もれた微弱な磁気の発見
~超伝導発現機構の解明に向けて前進~

 日本原子力研究開発機構 髭本 亘 研究主幹および茨城大学 横山 淳 教授は、原子力機構 伊藤 孝 研究副主幹、京都大学 栁瀬 陽一 教授、仏グルノーブルアルプ大学、東京工業大学、J-PARCセンター、自然科学研究機構 分子科学研究所のグループと共同で、絶対零度近くまで冷やしたセリウム系金属化合物であるCeCoIn5において、超伝導状態のまま磁気を帯びた状態が出現することをJ-PARCの大強度のミュオンなどによって観測しました。
 磁気と超伝導の結びつきを示した本成果は、超伝導がどのようなメカニズムで起こるのかを知るうえで重要な成果です。今後、超伝導が現れる温度の上昇に向けた研究開発など、超伝導のより広い分野での利用や産業的応用につながることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22112901/
発表年月日:22/10/28 | J-PARCセンター

宇宙産業等への応用が期待!
構造量子臨界点付近の結晶質固体Ba1-xSrxAl2O4が結晶・非晶質両方の性質を併せ持つことを発見

 大阪公立大学 大学院工学研究科 石井 悠衣 准教授、物質・材料研究機構 佐藤 直大 研究員、森 孝雄 グループリーダー、東北大学金属材料研究所 南部 雄亮 准教授、J-PARCセンター 河村 聖子 研究副主幹、村井 直樹 研究員、高輝度光科学研究センター 尾原 幸治 主幹研究員、河口 彰吾 主幹研究員らの研究グループは、放射光X線や中性子を用いた結晶構造や原子振動の解析によって、Ba1-xSrxAl2O4において、結晶と非晶質両方の性質を併せ持つ「副格子ガラス状態」が実現していることを発見しました。
 本研究で得られた知見を活用した物質開発によって、結晶と非晶質の2つの性質を併せ持つ、ハイブリッド材料の実現が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22102802/
発表年月日:22/10/25 | 物質科学研究センター

全固体電池内のリチウムイオンの動きを捉えることに成功
~全固体電池の研究開発を加速~

 理化学研究所光量子工学研究センターの小林 峰 特別嘱託研究員(研究当時)、日本原子力研究開発機構物質科学研究センターの大澤 崇人 研究主幹らの国際共同研究グループは、研究用原子炉JRR-3においてリチウム-6(6Li)濃度を濃縮した正極を用いて作製した全固体電池試料に熱中性子を入射し、6Li(n,α)3H熱中性子誘起核反応によって放出される粒子のエネルギーを時間分解して分析することで、動作(充電)中の全固体電池内のリチウムイオンの動きを捉えることに成功しました。
 本研究成果は、次世代リチウムイオン電池として期待される全固体電池の研究開発を加速するものと期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22102501/
発表年月日:22/10/13 | J-PARCセンター

4.3%を超える巨大弾性歪みを示す金属を開発
~大きな弾性変形の実現で高性能ばね材等への応用に期待~

 東北大学大学院工学研究科金属フロンティア工学専攻の許 勝 特任助教、貝沼 亮介 教授らの研究グループは、日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、チェコ科学アカデミー、チェコ工科大学、九州大学との共同研究により、バルク単結晶銅系合金において従来の実用金属より数倍も大きい弾性変形(弾性歪み>4.3%)を実現しました。通常、実用バルク金属材料の弾性歪みは約1%以下であり、本研究成果は画期的です。さらに、本合金では、応力と歪みの関係が直線となるフックの法則が成り立たず、応力の増大に従ってヤング率が小さくなる弾性軟化現象も確認されました。このような非線形で大きな弾性変形は、金属学の常識を覆すもので、高性能ばね材等への応用が期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、J-PARCセンターのステファヌス・ハルヨ 研究主幹、川崎 卓郎 研究副主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22101301/
発表年月日:22/09/23 | J-PARCセンター

素粒子ミュオンにより非破壊で小惑星リュウグウの石の元素分析に成功
~太陽系を代表する新たな標準試料となる可能性~

 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所、日本原子力研究開発機構、大阪大学、東京大学、京都大学、国際基督教大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所、東北大学で構成される小惑星リュウグウ試料の分析を行うミュオン分析チームは、J-PARC物質・生命科学実験施設においてミュオンを用いた元素分析法をリュウグウの石に適用し、非破壊でその元素組成を明らかにすることに成功しました。
 リュウグウの石の組成は、これまで最も始原的な物質であると言われていた隕石と近い組成を示す一方で、これらの隕石と比べて酸素の含有量が明らかに少ないことが分かりました。この成果は、なぜ太陽系の地球という星で生命が誕生したのか、その理由に迫る重要なヒントとなることが期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、物質科学研究センターの大澤 崇人 研究主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22092301/
発表年月日:22/09/16 | 物質科学研究センター

炭素原子膜グラフェンに含まれる微量元素量の計測に成功
~ドーピングによるグラフェン機能制御へ大きな進展!~

 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター(兼多元物質科学研究所)の小川 修一 助教らの研究グループと日本原子力研究開発機構、産業技術総合研究所、静岡大学との共同研究チームは、大型放射光施設SPring-8の高輝度放射光を利用した光電子分光法を用いて、グラフェンにドーピングされたカリウムの量を測ることに成功しました。
 本研究によって確立した手法を活用し、より効率的なドーピング方法を開発することによって、カリウムドープグラフェンの燃料電池の電極や透明電極、高速動作半導体デバイスなど様々な分野への応用が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22091602/
発表年月日:22/09/9 | 原子力科学研究部門

東海村発!産官連携により新型ボルテックスチューブを開発
~熱力学に潜む“マクスウェルの悪魔“を制御して冷却性能を向上~

 茨城県東海村を拠点とする山藤鉄工株式会社、日本原子力研究開発機構、株式会社アート科学が連携し、従来品よりも冷却性能が24%向上し長さを半分以下に短くした小型で冷却性能が高いボルテックスチューブを開発しました。
 開発した新型ボルテックスチューブは、小型・軽量・シンプルであることで低コスト化を実現し、可動部位が無いために故障の心配がない、製造現場で使いやすい装置です。今後は製造現場だけでなく産業機器類の冷却といった応用を含め、幅広い分野での活用が期待できることから製品化を目指します。
 日本原子力研究開発機構からは、原子力科学研究部門の呉田 昌俊 上級研究主席が本開発に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22090902/
発表年月日:22/09/6 | J-PARCセンター

省エネ、省スペース! チタンを活用した超高真空ゲッターポンプを発明
~カーボンニュートラルな持続可能社会に大きく貢献!~

 日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの神谷 潤一郎 研究主幹と原子力基礎工学研究センターの大久保 成彰 研究主幹は共同で、チタンを材料とした真空容器を電源が不要の超高真空ポンプとして活用する技術を構築しました。また応用例として、電子顕微鏡の真空性能が向上することを実証しました。
 既存のゲッターポンプは、ゲッター材料の焼結体を真空の中に配置しますが、本発明ではゲッター材料を設置するスペースが不要となります。この技術を用いた真空容器は、電子顕微鏡や加速器のビームラインだけでなく、真空を維持したまま半導体部品を輸送する容器などにも利用が可能です。また真空容器自体がゲッターポンプとして機能するため、従来ポンプに必要である設置スペースや消費電力を大幅に低減することが可能となり、カーボンニュートラルな持続可能社会の実現に大きく貢献することが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22090601/
発表年月日:22/09/5 | 先端基礎研究センター

クォーク間の「芯」をとらえた
~物質が安定して存在できる理由の理解に貢献~

 東北大学・京都大学・高エネルギー加速器研究機構・日本原子力研究開発機構・大阪大学などからなる国際共同実験E40グループ(実験責任者:東北大学 三輪浩司、14機関、71名)は、J-PARCハドロン実験施設で供給される大強度パイ中間子ビームを液体水素標的に照射して従来の約100倍のΣ+を作り出し、生成されたΣ+が液体水素標的内の陽子と散乱して叩き出された陽子や、散乱後にΣ+が崩壊して放出した陽子をCATCHと呼ばれる実験装置で検出することで、Σ+と陽子の散乱微分断面積を高精度で測定することに世界で初めて成功しました。
 得られた微分断面積を解析することで、散乱する2つの粒子が3割程度重なり合うような場合には核力はまだ引力であるのに対して、Σ+陽子間の力はすでに核力の2倍程度も強い斥力になっていることが分かりました。これはパウリ原理による斥力の起源を検証し、その芯の堅さを実測したことに相当します。今まで未知であったクォーク間のパウリ斥力の強さを決定したことで、核力の短距離での斥力の理解が一層進むと考えられます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22090501/
発表年月日:22/08/31 | 先端基礎研究センター

原子一個の厚みのカーボン膜で水素と重水素を分ける
~幅広い分野でのキーマテリアル「重水素」を安価に精製する新技術を実証~

 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの保田 諭 研究主幹、福谷 克之 グループリーダー(東京大学 生産技術研究所 教授)、北海道大学大学院 工学研究院 松島 永佳 准教授と大阪大学大学院 工学研究科 Wilson Agerico Diño 准教授らは、一原子の厚みのグラフェン膜で水素と重水素を分離できることを示し、またその分離機構も明らかにしました。
 この結果は、長らく論争となっていたグラフェン膜H/D分離能力とそのメカニズムを明らかにした重要な成果です。半導体、光通信用材料、重水素標識医薬品の開発といった幅広い分野でキーマテリアルであるD2の安価な製造法として、また、将来のエネルギー源として注目されている核融合炉での水素同位体ガスの新しい精製法として期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22083101/
発表年月日:22/08/25 | 原子力基礎工学研究センター

重粒子線治療の全身被ばく線量評価システムが完成
~過去の重粒子線治療の症例から学び、未来の放射線治療に活かす~

 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの古田 琢哉 研究主幹、量子科学技術研究開発機構 放射線医学研究所の古場 裕介 主任研究員をはじめとするチームでは、重粒子線治療後の2次がんなどの副作用の発生原因を究明することを目的として、患者の全身を対象とした線量評価システムRT-PHITS for CIRTを開発しました。
 本システムを用いた線量評価結果を治療後の2次がん発生などの疫学データと組み合わせることで、治療計画時にこれまで不可能であった晩発の副作用の発生リスクの考慮が可能になり、副作用の発生リスクの小さな治療の実現につながることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22082501/
発表年月日:22/08/18 | 先端基礎研究センター

ナノ磁石の磁気エネルギー地形の測量に成功
~高性能疑似量子コンピューター開発に向けた数学的基盤を確立~

 東北大学 電気通信研究所の舩津 拓也 博士前期課程学生(当時)、金井 駿 助教、深見 俊輔 教授、大野 英男 教授(現、総長)及び日本原子力研究開発機構の家田 淳一 研究主幹の研究チームは、電気通信研究所附属ナノ・スピン実験施設の設備を用いて、ナノスケールの超常磁性磁気トンネル接合を作製し、磁場と電流下にあるナノ磁石の磁気エネルギー形状を実験的に明らかにすることに世界で初めて成功しました。
 今後、確率論的コンピューターや磁気抵抗ランダムアクセスメモリー(MRAM)の研究開発、基礎数学・物理学理論研究を検証するプラットフォームとしてのスピントロニクス素子の利用への貢献が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22081801/
発表年月日:22/07/29 | 先端基礎研究センター

身近な塩で超純良ウラン超伝導物質の育成に成功!
~次世代量子コンピューターへの応用に期待~

 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの酒井 宏典 研究主幹らは、溶融塩フラックス法と呼ばれる手法を用いたウランテルル化物(UTe2)の新しい結晶育成法を考案し、結晶の大幅な純良化と超伝導性能の向上に成功しました。
 UTe2は次世代量子コンピューターへの応用が期待されているトポロジカル超伝導物質の候補であり、この手法で育成した純良単結晶を用いた超電導研究によって、量子コンピューターに必要な新規物質開発への寄与が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22072902/
発表年月日:22/07/12 | J-PARCセンター

世界初、パルス中性子ビームで車載用燃料電池セル内部の水の可視化に成功
~燃料電池のさらなる高性能化で、温室効果ガス排出量削減に貢献~

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が取り組んでいる燃料電池解析技術の高度化事業の下、高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、日産アーク、技術研究組合FC-Cubicは、豊田中央研究所、本田技術研究所、トヨタ自動車と協力し、トヨタ自動車の燃料電池自動車(FCV)である「MIRAI」の燃料電池セル内部の水の生成・排出の挙動を、パルス中性子イメージングによってほぼリアルタイムで可視化することに成功しました。
 今回の成果を燃料電池開発で活用し、さらなる高性能化・低コスト化を進めることで、温室効果ガス排出量の削減や、2050年カーボンニュートラル実現への貢献が期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22071201/
発表年月日:22/06/23 | 原子力科学研究所

日本初!放射線測定器のJIS登録試験所が誕生
~放射線測定の信頼性確保が大きく前進~

 日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所に整備した放射線測定器の試験所が、製品評価技術基盤機構による産業標準化法(JIS法)に基づく試験事業者登録制度の審査を経て、日本で初めての放射線測定器のJIS登録試験所となりました。
 今後、本試験所で放射線測定器の性能を公的に証明することで放射線測定結果の信頼性を客観的に示し、安全・安心な社会の実現へ寄与することが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22062301/
発表年月日:22/06/20 | 先端基礎研究センター

―宇宙での元素合成過程の謎に迫る成果―
超変形した原子核40Caの崩壊メカニズムを解明

 大阪大学核物理研究センター、オーストラリア国立大学、日本原子力研究開発機構、東京大学、GITAM大学の国際共同研究グループ(代表:大阪大学 井手口 栄治 准教授)は、カルシウム40の超変形状態から球形の基底状態への崩壊遷移が予想外に抑制されていることを世界で初めて明らかにしました。
 この新しい発見は原子核に特有な変形共存現象を広く理解する上でも重要なものです。
 日本原子力研究開発機構からは、宇都野 穣 マネージャーが本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22062001/
発表年月日:22/06/13 | 原子力基礎工学研究センター

固溶体化が燃料デブリの「その後、」を決める
~核燃料デブリの安全な保管や処理・処分に関わる新たな化学的知見~

 東北大学多元物質科学研究所 桐島 陽 教授らの研究グループは日本原子力研究開発機構、京都大学と共同で、核燃料物質や燃料被覆管材料、原子炉内の構造材として使われるステンレス鋼を原料とした模擬デブリを合成して化学的な性質を調べ、「固溶体化」という現象が燃料デブリの化学的な性質を決める鍵となることを突き止めました。
 これは、東京電力福島第一原子力発電所における取り出し後の燃料デブリの保管や処理・処分を考える上で重要な知見となります。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22061301/
発表年月日:22/06/10 | 原子力基礎工学研究センター

静かなオーロラが地球大気を深くまで電離させる
~最先端の観測とシミュ レーションで見えた宇宙と大気のつながり~

 総合研究大学院大学、情報・システム研究機構 国立極地研究所、東京大学大学院理学系研究科、大阪大学大学院理学研究科、東海国立大学機構 名古屋大学、日本原子力研究開発機構で構成される研究グループは、南極昭和基地の大型大気レーダー「PANSYレーダー」による低高度での大気電離の発見、ジオスペース探査衛星「あらせ」による高エネルギー電子の降り込みの観測、放射線挙動解析コード「PHITS」での電子が大気に入射した際の大気電離の見積によって、宇宙空間から大気へと高いエネルギーを持つ電子が降り込むことで発生するオーロラ爆発前にも、無視できない大気電離のインパクトがあることを明らかにしました。
 宇宙から降り込む粒子による大気電離を統一的に研究することで、将来的には太陽活動に起因する気候変動への影響の定量評価が可能となることが期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、原子力基礎工学研究センターの佐藤 達彦 研究主席が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22061002/
発表年月日:22/05/20 | 物質科学研究センター

高レベル放射性廃液中の元素を光で選別、分別回収の革新的原理を実証
~デザインされた光により、光反応の元素選択性と反応性を両立させることに成功~

 日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの松田 晶平 博士研究員(研究当時)ら及び大阪市立大学 中島 信昭 名誉教授(現・レーザー技術総合研究所 特別研究員)は、アメリシウムに特徴的な吸収波長のレーザーを硝酸水溶液中のアメリシウムに照射することにより酸化反応が誘起されることを見出しました。また、そのメカニズムを解明すると共に、この現象を用いたアメリシウムの分離実証試験によって、酸化されたアメリシウムとランタノイドをきれいに分離できることを実証しました。
 今後、本手法が放射性廃棄物の分別原理として新たな選択肢となりうることが期待されます。また、アメリシウム以外のランタノイド・アクチノイドに対しても有効な選別原理になると考えられるため、希少金属の再利用を促進する超高純度精製法への発展が期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22052003/
発表年月日:22/05/19 | J-PARCセンター

柔らかくて硬い!? 生体骨に近い特性の金属材料を開発
~ボーンプレートや人工関節への応用に期待~

 東北大学 工学研究科の大平 拓実 大学院生(研究当時)、許 皛 助教らの研究グループは、東北大学金属材料研究所、日本原子力研究開発機構、チェコ科学アカデミーとの共同研究により、今まで実現できなかった、骨との高い力学的親和性と耐摩耗性を両立させた CoCr系生体用金属材料を開発しました。
 本合金は優れた超弾性特性を示すことから、多機能性生体用金属材料として有望です。特に低いヤング率、高い耐食性と耐摩耗性および優れた超弾性特性の4拍子そろった本CoCr系生体材料は、人工関節、ボーンプレート、脊髄固定器具やステントなどへの応用が期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、J-PARCセンターのStefanus Harjo 研究主幹、川崎 卓郎 研究副主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22051901/
発表年月日:22/05/15 | 物質科学研究センター

小さな原子の磁気をもっと小さな原子核の磁気と比べて測定する
~強い磁石の開発に役立つ簡便で正確な「原子の磁気」の新測定法の開発~

 日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの目時 直人 研究主幹らは、磁性体の磁力の源である磁性元素をその原子核の磁気によって特定し、原子の持つ小さな磁気の強さを、さらに小さな原子核の磁気と比較して簡便かつ正確に測定する新たな手法を開発しました。
 今後、この手法を種々の磁性元素に適用して磁気的性質の起源や複雑な磁気構造を理解することで、有用な機能を持つ新物質や、強力な磁石に用いられる磁性体の開発などに役立つことが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22051501/
発表年月日:22/04/27 | 先端基礎研究センター

スーパーコンピュータ「富岳」で炭素の起源を探る
~第一原理計算で導かれたアルファクラスターの構造~

 理化学研究所 仁科加速器科学研究センター 核分光研究室の大塚 孝治 客員主管研究員、阿部 喬 協力研究員、東京大学 大学院 理学系研究科附属原子核科学研究センターの角田 佑介 特任研究員(研究当時)、日本原子力研究開発機構の宇都野 穣 主任研究員らの国際共同研究グループは、スーパーコンピュータ「京」と「富岳」を用いた第一原理計算により、炭素-12(12C)原子核(陽子数6、中性子数6)の量子構造を明らかにしました。
 本研究成果は、地球環境や生命の誕生に欠かせない炭素の起源の解明に貢献するとともに、アルファ崩壊の理解に新たな視点を与え、超重元素崩壊の予言に寄与するものと期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22042701/
発表年月日:22/04/20 | 原子力基礎工学研究センター

統合核燃料サイクルシミュレーター「NMB4.0」の無償提供を開始
~先進エネルギーシステム開発の戦略立案に資する、原子力のサイクル全体を計算可能な基盤プラットフォームを構築し、一般に公開~

 東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の中瀬 正彦 助教らの研究グループは、日本原子力研究開発機構の西原 健司 グループリーダーらの研究グループと共同で、将来の原子力利用シナリオを評価するシミュレーター「NMB4.0」を開発し、3月15日に無償公開しました。
 今後は国内外の標準シミュレーターを目指し、経済性や環境負荷などの評価機能をさらに充実させながら、他電源を含むエネルギー分野全般を横断した評価研究の実現に向けた研究プラットフォームの構築に取り組んでいきます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22042001/
発表年月日:22/04/16 | 先端基礎研究センター

磁化反転に応用可能な新原理トルクを世界で初めて実証
~磁気メモリの大幅な省電力化が期待~

 北海道大学大学院の山ノ内 路彦 准教授らの研究グループと、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの荒木 康史 文部科学省卓越研究員、家田 淳一 研究主幹は、ワイル点と呼ばれる特殊な電子状態をもつ酸化物の磁石ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)において、電気による磁化反転に応用可能な新原理を実証しました。
 この新原理を用いることで従来原理よりも高効率に電気による磁化反転が可能になるため、高速かつ低消費電力なメモリとして注目されている磁気メモリなどの省電力化が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22041601/
発表年月日:22/04/14 | 先端基礎研究センター

電気回路の基本要素 -インダクタ- の「ねじれ」をほどく
~電子スピンの量子相対論効果で電力制御研究に新展開~

 ごく最近、量子現象に基づく「創発インダクタ」が提案・実証され、コイルに基づく従来技術が抱える原理的な制限を克服する試みが始まりました。ここでは、らせん磁性金属という、ねじれた磁気をもつ特殊な材料が用いられていましたが、東北大学学際科学の山根 結太 助教、電気通信研究所の深見 俊輔 教授、日本原子力研究開発機構の家田 淳一 研究主幹は、量子相対論効果である「スピン軌道相互作用」により、創発インダクタがより普遍的な磁性材料で生じることを理論的に明らかにしました。
 今後、この原理の実証研究を推し進めることで、電子スピンを介したエネルギー変換現象に基づく、次世代の基盤量子技術の開発が切り開かれていくものと期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22041401/
発表年月日:22/04/13 | J-PARCセンター

どうして生物の24時間リズムは安定なのか?
~水素原子の運動から迫る時計タンパク質の温度補償制御~

 自然科学研究機構 分子科学研究所の古池 美彦 助教、量子科学技術研究開発機構の松尾 龍人 主幹研究員、総合科学研究機構の富永 大輝 副主任研究員、日本原子力研究開発機構の川北 至信 主任研究員らの研究グループは、シアノバクテリアの時計タンパク質KaiCの運動を中性子を用いて観察し、温度に依らず24時間周期が一定に保たれる仕組みを調べました。その結果、「時計タンパク質が原子や分子全体の運動それぞれの特性を活かして精密な計時システムを実現していること」を解明しました。
 今後、観察対象を他の生物種の時計タンパク質にも広げることで、概日時計(一般的には体内時計と呼ばれる)の温度補償性を裏打ちしている自律的な制御機構の秘密が明らかになることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22041301/
発表年月日:22/04/7 | 物質科学研究センター

光と加熱で、金属と絶縁体を行ったり来たり
~高性能な光応答イットリウム化合物薄膜を世界で初めて作製~

 東京工業大学 物質理工学院の清水 亮太 准教授、小松 遊矢 大学院生らの共同研究グループは、イットリウム・酸素・水素の化合物(YOxHy)の結晶方位を揃えたエピタキシャル薄膜を世界で初めて作製し、光照射と加熱によって絶縁体と金属の繰り返し変化に成功しました。
 今後、本成果を活用した高性能な光メモリ・スマートウィンドウ等のデバイス開発が期待されます。また、この極めて大きな光応答性は水素の局所的な結合や荷電状態に由来していることから、薄膜内における水素の密度・結合・荷電状態などの高度な制御により、さらなる光エレクトロニクスの進展へとつながることが期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、物質科学研究センターの松村 大樹 研究主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22040701/
発表年月日:22/04/4 | J-PARCセンター

ホウ素が形成するパワーデバイス半導体中の特異構造
~中性子ホログラフィーが拓く3D局所構造サイエンス~

 名古屋工業大学大学院 工学研究科の林 好一 教授、茨城大学大学院 理工学研究科の大山 研司 教授、広島市立大学大学院 情報科学研究科の八方 直久 准教授、日本原子力研究開発機構J-PARCセンターの原田 正英 主任研究員、及川 健一 主任研究員、稲村 泰弘 副主任研究員らは共同で、本チームで開発・実用化した日本発「白色中性子ホログラフィー」を用いて、代表的パワーデバイス半導体材料である炭化ケイ素(SiC)の微量添加元素であるホウ素周辺の精密原子像取得に成功しました。
 パワー半導体に加え、革新畜電池や電気自動車モーターの磁石など、エネルギー関連の材料開発において軽元素の有効利用は重要なファクターとなります。「白色中性子ホログラフィー」はこれらの材料における軽元素の役割解明に大きく近づくことができる技術であり、新規材料開発に向けたブレークスルーへの貢献が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22040401/

2021 年度

発表年月日:22/03/31 | 物質科学研究センター

燃料電池触媒の酸素還元反応活性を2倍以上向上させることに成功
~触媒性能10倍に向け前進 燃料電池のコスト低減に期待~

 量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所の八巻 徹也 次長・プロジェクトリーダー、山本 春也 上席研究員、木全哲也 協力研究員(当時は実習生)、東京大学大学院工学系研究科の毛 偉 特任研究員(当時は助教)、寺井 隆幸 名誉教授(当時は教授)、日本原子力研究開発機構の松村 大樹 研究主幹、下山 巖 研究主幹らは、イオンビーム照射した炭素材料に白金を保持させる新手法によって、固体高分子形燃料電池(PEFC)の触媒性能を 2 倍以上向上させることに成功しました。また、この性能向上には、炭素材料に導入した欠陥構造と白金(Pt)微粒子の相互作用に起因するメカニズムが関与することを明らかにしました。
 将来、本技術による実触媒の製造プロセスが実現すれば、PEFCのコスト低減という課題は解決され、FCVの本格的普及や水素利活用の拡大を通してカーボンニュートラル実現への貢献が期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22033102/
発表年月日:22/03/30 | 物質科学研究センター

超高密度な磁気渦を示すシンプルな二元合金物質を発見
~次世代磁気メモリへの応用に期待~

 東京大学 大学院工学系研究科の高木 里奈 助教、関 真一郎 准教授らの研究グループは、二種類の元素からなるシンプルな合金中で超高密度な磁気スキルミオン(微小な磁気渦)が生成されていることを発見し、磁場の強さや温度によって磁気スキルミオンの並び方が変化する、その微視的な機構を明らかにしました。
 本研究成果は、二種類の元素のみを含む単純な二元合金であっても、極小サイズの磁気スキルミオンの多彩な秩序構造を実現できることを示しており、次世代磁気メモリ材料等の物質設計・探索や制御手法の開拓に重要な指針を与えることが期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは、物質科学研究センターの金子 耕士 研究主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22033002/
発表年月日:22/03/29 | 先端基礎研究センター

スピンの響き、超音波で奏でて中性子で聴く
~超音波と中性子を組み合わせた新手法でスピンによる発電の効率因子を特定~

 総合科学研究機構 中性子科学センターの社本 真一 サイエンスコーディネータ、松浦 直人 副主任研究員、新潟大学 理学部の赤津 光洋 助教、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの家田 淳一 研究主幹らは、工業用磁性材料として広く用いられるイットリウム鉄ガーネット(YIG)において、スピン・格子結合が100K 以上の温度で抑制されることを超音波と中性子を組み合わせた新実験手法により明らかにしました。
 本成果により、外場として超音波を加え、中性子で様々な物質のスピン・格子結合を調べることが可能になり、より強いスピン・格子結合の物質を探索する新しい実験手法が得られました。今後、室温でスピンによる発電効率を大きく上昇させる物質の探索に、本手法が大きく貢献すると期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22032901/
発表年月日:22/03/28 | 先端基礎研究センター

大強度加速器×超高精度“温度計”で原子核を作る力に迫る
~風変わりな原子からのX線の測定精度を飛躍的に向上~

 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 橋本 直 研究副主幹、中部大学 工学部 岡田 信二 准教授らの国際共同研究グループは、大強度陽子加速器施設 J-PARCで供給される世界最高強度のK-中間子ビームと超高精度“温度計”を用いて、K中間子に働く「強い相互作用」の測定精度を飛躍的に高めることに成功しました。
 本成果は、K-中間子に働く「強い相互作用」に関する重要な基礎データとなります。今後、同様の手法で高精度なデータを積み重ねていくことで、現在全く未知である高密度領域まで含めた「強い相互作用」の解明、そして物質の起源の解明へと繋がっていくと期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22032801/
発表年月日:22/03/5 | 原子力基礎工学研究センター

建物を考慮した詳細な放射性物質の拡散計算に基づく線量評価を初めて実現
~ 局所域高分解能大気拡散・線量評価システム「LHADDAS」を開発 ~

 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの中山 浩成 研究副主幹、佐藤 大樹 研究主幹、システム計算科学センターの小野寺 直幸 研究副主幹らは、個々の建物の影響を考慮して詳細に大気拡散および線量評価ができる局所域高分解能大気拡散・線量評価システム「LHADDAS(ラーダス)」を開発しました。
 「LHADDAS」は、原子力施設の安全審査における線量評価について、これまで用いられてきた風洞実験では困難な実際の気象条件を取り込んだより現実的な評価手法としての利用が期待されます。また、事前・事後詳細解析により、原子力事故時の施設内外作業員の被ばく線量評価、都市域での放射性物質拡散テロに対する汚染状況の把握と住民および対応要員の被ばく線量評価が可能です。さらに、即時解析による都市大気拡散テロ時での迅速な拡散計算結果の情報提供も可能です。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22030501/
発表年月日:22/02/17 | J-PARCセンター

ハイドロゲルの流動性をDNAで予測・制御する
~ 細胞培地や注入型ゲル薬剤など,医療への応用に期待 ~

 北海道大学大学院先端生命科学研究院の李 响 准教授と東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻博士後期課程の大平 征史 氏らの研究グループは,ハイドロゲルの流動性を,DNAの塩基配列を設計することによって予測・制御することに成功しました。
 今回開発されたゲルの流動性を制御する技術は,細胞培養の培地や注射可能なゲル材料への応用が期待されます。さらに,DNAが温度やpHなどの外部環境,ペプチド等添加物に応答を示す特性を活かして,センサーやソフトロボティックスへの応用も期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22021701/
発表年月日:22/02/16 | 先端基礎研究センター

究極の原子核をつくるには
~ 超重元素の「安定の島」に向けて前進 ~

 日本原子力研究開発機構(JAEA)先端基礎研究センター 重元素核科学研究グループ 田中 翔也 学生実習生(近畿大学大学院総合理工学研究科大学院生)、廣瀬 健太郎 研究副主幹(JAEA)、西尾 勝久 研究主席(JAEA)、および有友 嘉浩 教授(近大大学院)らは、原子核反応のひとつである「多核子移行反応」で生成される原子核に与えられる角運動量を実験的に決定することに成功しました。
 この知見は、安定の島に到達するための重要な指針を与えるもので、元素がどこまで存在できるか、という疑問に答えることにつながります。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22021601/
発表年月日:22/02/11 | 先端基礎研究センター

伝導電子と局在スピン・軌道が織りなす悪魔の調律
~ 多極子の衣をまとった電子「多極子ポーラロン」を発見 ~

 東京大学物性研究所の黒田 健太 助教(研究当時、現在:広島大学大学院先進理工系科学研究科准教授)、新井 陽介 大学院生、近藤 猛 准教授を中心とするグループは、東京大学大学院工学系研究科の野本 拓也 助教(理化学研究所創発物性科学研究センター計算物質科学研究チーム客員研究員兼任)、有田 亮太郎 教授(理化学研究所創発物性科学研究センター計算物質科学研究チームチームリーダー兼任)、大阪大学大学院理学研究科の宮坂 茂樹 准教授と田島 節子 名誉教授、茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの岩佐 和晃 教授らの協力のもと、セリウム・アンチモンが示す「悪魔の階段」の相転移において、多極子と呼ばれる局在スピン・軌道と強く相互作用する伝導電子が準粒子として振る舞う「多極子ポーラロン」を発見しました。
 発見された伝導電子と局在スピン・軌道の新しい相互作用は、磁場や圧力で伝導電子を制御する磁気メモリなどの動作原理としても機能する可能性があるため、スピントロニクスに向けた磁性材料設計へ新たな展開が期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22021101/
発表年月日:22/01/6 | 原子力基礎工学研究センター

福島の森林樹木の放射性セシウム汚染は今後どうなるか?
~ 新開発の計算モデルで汚染メカニズムを解明し将来予測を可能に ~

 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの太田 雅和 研究副主幹らの研究グループは、放射性物質の動きを詳細に予測する計算モデル「SOLVEG-R」により、1F事故による放射性セシウムで汚染された森林について樹木の木部の汚染のメカニズムを明らかにするとともに、観測データがない森林における木部の濃度の変動予測を可能にしました。
 「SOLVEG-R」は、実測データによるチューニングなしに森林内の放射性セシウムの動きを計算できるので、今回の評価地点以外の森林についても木部の濃度低下を予測できます。また、林床の落葉層の放射性セシウムの動きや樹木の成長も考慮するので、落葉層の除去といった除染作業や、伐採と再造林といった森林施業による樹木汚染の低減効果の評価へも活用できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p22010601/
発表年月日:21/12/27 | 原子力基礎工学研究センター

原子核の基盤データベースJENDELの最新版を公開
~ 将来の「新原子力」へ向け世界最高レベルの信頼性・完備性をもつデータを提供 ~

 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 核データ研究グループ 岩本 修 グループリーダーを中心とするJENDL開発チームは、様々な放射線と原子核との反応や原子核の崩壊の基盤データベースである核データライブラリ JENDL-5 を開発しました。
 原子炉や加速器の開発・運用・利用などにかかわる様々な分野で活用されている数値シミュレーションの信頼性を向上させるためには、その根幹となる核データライブラリが重要です。その最新版であるJENDL-5の開発ではJ-PARCなどでの最新の測定データや原子核の反応や崩壊の理論的な知見を取り入れています。
 原子炉シミュレーションで重要となるアクチノイドなどのデータの信頼性を向上させつつ、中性子データを大幅に拡充すると共に、多様な放射線による反応データを追加することにより、データの完備性が大幅に向上しています。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21122701/
発表年月日:21/12/24 | 先端基礎研究センター

スピントロニクスの大幅な省電力化につながる新原理を発見
~ 「電気的な磁気制御」を可能にする物質開発に新たなアプローチ ~

 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター スピン-エネルギー変換材料科学研究グループ 荒木 康史 任期付研究員と、家田 淳一 研究主幹は、磁性体の磁気が、電気抵抗に影響されず電圧によって省電力で制御されるメカニズムを、電子の持つ数学的構造「トポロジー」に基づき新たに見出しました。
 現在のスピントロニクスでは、磁性体や重金属に電流を流し、流れる電子が持つスピンを用いて、磁性体の磁気を操作する方法が広く使われています。しかし、この方法はまず磁性体等に電流を流す必要があるため、電気抵抗の影響を受け、電流から発生する熱によるエネルギー損失が避けられません。スピントロニクスを用いる磁気メモリ等の微細化・集積化のためには、このエネルギー損失は無視できない課題であり、電気抵抗の影響を受けない磁気制御の方法が求められていました。
 この問題を解決するため、本研究では、電子が示す「異常速度」と呼ばれる性質に着目しました。異常速度による電子の動きはエネルギー損失を起こさないため、省電力で磁気を制御できることを提案しました。
 本研究の成果は、少ない電流・消費電力での磁気制御技術の実現に道を拓くものです。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21122402/
発表年月日:21/12/21 | 原子力基礎工学研究センター

世界初!あらゆる物質中の放射線の動きを原子サイズで予測
~ 人体や物質への放射線影響に極小の世界から迫る ~

 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの小川 達彦 研究副主幹、松谷 悠佑 研究員らは、放射線の原子サイズにおける複雑な動きをあらゆる物質中で予測し、放射線影響を原理から予測できる飛跡構造解析コード「ITSART」を開発しました。
 「ITSART」は従来の1000倍の解像度で放射線の動きを追跡できます。さらに飛跡構造解析によって、代表的な放射線である電子線によって生じるDNA損傷を定量的に再現し、コードの性能も実証しました。
 「ITSART」は汎用放射線挙動解析コードPHITSに組み込まれ、世界50カ国5,000名以上のユーザーに配布される予定です。このコードを様々な研究分野へ普及させることで、例えば放射線生物影響の基礎となるDNA損傷の原理解明や、それを応用した放射線医学、電子機器中の半導体デバイスが放射線によって起こす誤作動の予測などへの応用が期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21122101/
発表年月日:21/12/11 | 物質科学研究センター

世界初!元素種を識別して材料のミクロ構造を解析するノイズ耐性の高い新解析法を開発
~ 将来的なデバイス材料のミクロ構造研究に活路を開く ~

 熊本大学 産業ナノマテリアル研究所の熊添 博之 特任助教、赤井 一郎 教授らの共同研究グループは、イットリウム酸水素化物(YHO)薄膜の広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルに、電子波多重散乱理論に基づいた基底関数を用いたスパースモデリングとベイズ推定を組み合わせた新しい解析法を適用しました。その結果、YHO薄膜のイットリウム周りに存在する酸素原子が四面体配位していることが明らかになり、ベイズ推定により、データに重畳するノイズをモデリングして、解析困難なノイズの大きいデータからミクロ構造を解析することに成功しました。この手法は機能性薄膜材料を始めとする様々な物質のミクロ構造解明への応用が期待されます。
 日本原子力研究開発機構からは 松村 大樹 研究主幹が本研究に参加しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21121101/
発表年月日:21/12/8 | J-PARCセンター

ディープラーニングによって大幅な統計ノイズの低減に成功
~ 中性子実験の測定時間を1/10以下に短縮、新規材料開発等に貢献 ~

 日本原子力研究開発機構/高エネルギー加速器研究機構の青木 裕之 研究主幹/特別教授らの研究グループは、ディープラーニングを適用することで、薄膜材料の評価に用いられる中性子反射率測定の測定効率を向上させる手法を開発しました。
 これまで数十分〜数時間を要していた測定時間を大幅に短縮できるため、大型施設の限られたマシンタイムを有効に活用でき、より多くの試料の評価が可能になります。また、時間とともに変化する試料に対して、その変化の様子を高速に捉えることが可能になるほか、従来の技術では非現実的な測定時間が必要だった特殊な実験も可能になるものと考えられます。本手法は中性子反射率だけでなく、散乱実験など様々な測定にも応用可能であり、各種材料の研究開発を加速するものと期待されます。
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発表年月日:21/11/25 | 物質科学研究センター

チタン酸バリウムナノキューブの粒径を制御する手法を新たに開発
~ 環境調和型のプロセスを採用 高性能小型電子デバイスの開発に期待 ~

 茨城大学大学院理工学研究科の中島 光一 准教授、同研究科量子線科学専攻・博士前期課程の廣中 航太さん、大内 一真さん、茨城大学工学部の味岡 真央さん、茨城大学大学院理工学研究科の小林 芳男 教授、大阪大学産業科学研究所の関野 徹 教授、垣花 眞人 特任教授、東北大学多元物質科学研究所の殷 シュウ 教授、日本原子力研究開発機構の米田 安宏 研究主幹の研究グループは、チタン酸バリウムナノキューブの粒径制御には、出発原料である酸化チタンの粒径が影響することを明らかにしました。
 今後、チタン酸バリウムナノキューブの粒径を自由自在に制御する技術を確立することができれば、セラミックコンデンサの飛躍的な誘電率の向上を期待することができます。
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発表年月日:21/10/18 | J-PARCセンター

鉄シリコン化合物における新しいトポロジカル表面状態
~ ありふれた元素を用いたスピントロニクス機能の実現 ~

 東京大学大学院工学系研究科の大塚 悠介 大学院生(当時)、金澤 直也 講師、平山 元昭 特任准教授、理化学研究所創発物性科学研究センターの十倉 好紀 センター長らを中心とする研究グループは、東北大学金属材料研究所の塚﨑 敦 教授、藤原 宏平 准教授らの研究グループと共同で、地球上に豊富に存在する鉄とシリコンから成る化合物FeSiにおける新しいトポロジカル表面状態を発見し、強いスピン軌道相互作用に由来したスピントロニクス機能を実現しました。また東京大学物性研究所の中島 多朗 准教授、総合科学研究機構中性子科学センターの花島 隆泰 研究員、日本原子力研究開発機構J-PARCセンター/高エネルギー加速器研究機構の青木 裕之 特別教授と共同で、FeSi表面における強磁性スピン状態を直接観測しました。
 今回の発見によって、希少元素化合物において開拓されてきたトポロジカル物性やスピン操作機能を、ありふれた元素の化合物でも実現可能であることが明らかにされました。つまり、資源の制約や環境負荷を抑えつつ、電子デバイスの省電力化や高機能化を大きく進展させる可能性があり、情報化社会の持続的発展を支える物質基盤の確立に貢献することが期待されます。
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発表年月日:21/10/8 | 先端基礎研究センター・J-PARCセンター

J-PARCハドロン実験施設で奇妙な粒子と陽子の散乱現象を精密に測定
~ 原子核を作る力の解明に大きな前進 ~

 東北大学・高エネルギー加速器研究機構・日本原子力研究開発機構・京都大学・大阪大学などからなる国際共同実験グループは、ハイペロンの1つである負電荷を持つシグマ粒子が液体水素標的中を飛行する際に、ごく稀に標的中の陽子と散乱する現象を測定しました。散乱の際に叩き出された陽子を検出し、どの方向にどれだけ散乱されやすいかという微分断面積を精度良く測定することに初めて成功しました。今回測定された実験データは、理論計算を改良するための指針となり、拡張された核力の理解が今後飛躍的に進むことが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21110801/
発表年月日:21/10/7 | 原子力基礎工学研究センター

1Fの格納容器内にたまった水の中で金属材料はどう腐食するのか?
~ 放射線環境下での腐食データベースの構築 ~

 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター の佐藤 智徳 研究副主幹、加治 芳行 副センター長、安全研究センターの端 邦樹 研究副主幹、廃炉環境国際共同研究センターの上野 文義 研究主席、量子科学技術研究開発機構の田口 光正 上席研究員と清藤 一 主任技術員、大阪府立大学大学院工学研究科の井上 博之 准教授、東北大学 原子炉廃止措置基盤研究センターの秋山 英二 教授と阿部 博志 准教授、東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構の鈴木 俊一 特任教授らは、1F廃炉作業の安全対策に必要な、「放射線環境下での腐食データベース」を構築しました。
 本研究では、1F廃止措置特有の放射線環境下での腐食トラブルの発生可能性、腐食対策等を検討するうえで有用な情報である、①海水混入系での水の放射線分解データ、および②放射線照射下での腐食試験データをデータベース化しました。また、③1F廃炉工程における潜在的腐食影響に関して検討した結果を腐食調査票データベースとして整理し、「放射線環境下での腐食データベース」として取りまとめました。
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発表年月日:21/09/21 | J-PARCセンター

中性子で人工ガラス膜境界面の意外な機能「高い接合性」に迫る
~ 偏極中性子反射率法によるガラスコーティング膜の非破壊精密分析 ~

 総合科学研究機構(CROSS) 中性子科学センターの阿久津 和宏 技師をはじめとする研究グループは、日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの研究メンバーと共同で、J-PARC 物質・生命科学実験施設に設置された偏極中性子反射率計(写楽)を用いて、ポリプロピレン試料内部に埋め込まれたPHPS由来シリカガラス膜の精密構造解析に成功し、人工シリカガラス膜の高い接合性の起源は、シリカガラスと樹脂が混合した特別な層を形成するためであるとの結論に至りました。
 本研究で得られた知見は、セルロース等の天然資源材料へのPHPSコーティング法の開発・研究にも活用される見込みです。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21092101/
発表年月日:21/09/3 | 原子力基礎工学研究センター

太陽フレアによる被ばくの脅威から航空機搭乗者を「合理的」に護る
~ 経済的損失リスクの定量化により最適な航空機運用指針の策定が可能に ~

京都大学 総合生存学館 SIC有人宇宙学研究センター 山敷 庸亮 教授(責任著者)、MS&ADインシュアランス グループのあいおいニッセイ同和損保 藤田 萌(筆頭著者)、日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 佐藤 達彦 研究主席、海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所 斎藤 享 上席研究員 らの共同研究グループは、過去2000年間に発生した太陽フレアの頻度と強度、及び最新のシミュレーションにより得られた太陽放射線被ばく線量率の4次元空間時系列データを解析し、太陽放射線被ばくによる航空機運航計画変更に伴う経済的損失リスクの定量化に世界で初めて成功しました。その結果は、太陽フレアによる被ばくの脅威から合理的に航空機搭乗者を護ることができることを示唆しています。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21090302/
発表年月日:21/08/5 | 原子力基礎工学研究センター

最も分析困難な放射性核種の一つパラジウム-107の簡便な分析に成功
~ 中性子を使った最先端技術により煩雑な化学的操作の必要がない分析が可能に ~

 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの藤 暢輔 グループリーダーらと早稲田大学 教育・総合科学学術院の海老原 充 教授は、即発ガンマ線分析と中性子共鳴捕獲分析を組み合わせた分析法である飛行時間型即発ガンマ線分析法(TOF-PGA)によって、複雑な構成を持つ試料に含まれる最も分析が困難な放射性核種の一つであるパラジウム-107(107Pd)を化学的操作せずに分析することに世界で初めて成功しました。
 TOF-PGAは高い分析性能を持ち、前処理が不要で溶解が困難な試料にも対応できるため、複雑な組成を持つ放射性廃棄物の分析などでの利用のほか、工学、理学、農学、医学などの学術から産業までの幅広い分野において、例えば貴重な考古学試料、隕石や小惑星試料、最先端材料の分析への応用も期待されます。
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発表年月日:21/07/26 | 先端基礎研究センター・J-PARCセンター

最先端超伝導検出器で探るミュオン原子形成過程の全貌
~ 負ミュオン・電子・原子核の織り成すフェムト秒ダイナミクス ~

理化学研究所 開拓研究本部 東 原子分子物理研究室の奥村 拓馬 特別研究員、東 俊行 主任研究員、岡田 信二 協力研究員(研究当時、現中部大学准教授)、日本原子力研究開発機構の橋本 直 研究員、立教大学の山田 真也 准教授、東京都立大学の竜野 秀行 客員研究員、カスラー・ブロッセル研究所のポール・インデリカート 教授、筑波大学のトン・ショウミン 准教授、東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構の高橋 忠幸 教授、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の三宅 康博 特別教授らの国際共同研究グループは、最先端X線検出器である超伝導転移端マイクロカロリメータを用いて、「ミュオン原子」から放出される「電子特性X線」のエネルギースペクトルを精密に測定し、ミュオン原子形成過程のダイナミクスの全貌を明らかにしました。本研究成果は、負ミュオン・電子・原子核から構成されるエキゾチック量子少数多体系のダイナミクスという新たな研究分野の開拓につながると期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21072601/
発表年月日:21/07/7 | 先端基礎研究センター

元素周期表の極限の分子にみつけた周期律のほころび
~ 超アクチノイド元素ドブニウム化合物の分子の結合に変化が ~

日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 重元素核科学研究グループ キエラ・ナディーン博士研究員(現 ポール・シェラー研究所(スイス))、佐藤 哲也 研究副主幹らは、105番元素「ドブニウム」の純粋な揮発性化合物の合成と分離に成功し、ドブニウム化合物を形作る化学結合が周期表の予想から変化していることを見出しました。
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発表年月日:21/07/2 | J-PARCセンター

国立科学博物館 企画展「加速器-とてつもなく大きな実験施設で宇宙と物質と生命の謎に挑んでみた-」開催及び報道内覧会実施のお知らせ

国立科学博物館、高エネルギー加速器研究機構及び日本原子力研究開発機構は、2021(令和3)年7月13日(火)から10月3日(日)までの期間、国立科学博物館において、企画展「加速器-とてつもなく大きな実験施設で宇宙と物質と生命の謎に挑んでみた-」を開催いたします。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21070202/
発表年月日:21/06/24 | J-PARCセンター

地球形成初期、鉄への水素の溶け込みは硫黄に阻害されていた

東京大学大学院理学系研究科の飯塚 理子 客員共同研究員をはじめとする地殻化学実験施設の研究グループは、東京大学物性研究所の後藤 弘匡 技術専門職員と日本原子力研究開発機構J-PARCセンター、総合科学研究機構と共同で、地球形成初期を模擬した高温高圧実験を行い、鉄に軽元素が取り込まれる過程を中性子回折によりその場観察しました。その結果、高温高圧下で含水鉱物から脱水した水と鉄との反応で起こる鉄の水素化が、共存する硫化鉄によって抑制されることが明らかになりました。このことから、水素と硫黄が固体状態の鉄に優先的に溶け込み、その後に溶融した鉄に他の軽元素が溶解した可能性が高いことが示唆されました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21062401/
発表年月日:21/06/21 | 物質科学研究センター

磁場と圧力でマルチに冷却可能な酸化物新材料
~ フェリ磁性電荷転移酸化物におけるマルチ熱量効果の実証 ~

 京都大学化学研究所の小杉 佳久 博士課程学生、後藤 真人 助教、譚 振宏 博士課程卒業生、菅 大介 准教授、島川 祐一 教授と日本原子力研究開発機構の吉井 賢資 研究主幹、高輝度光科学研究センターの水牧 仁一朗 主幹研究員、産業技術総合研究所の藤田 麻哉 研究チーム長、ドイツ・マックスプランク固体研究所の磯部 正彦 研究員、高木 英典 ディレクターの共同研究チームは、電荷転移を示すペロブスカイト構造フェリ磁性酸化物BiCu3Cr4O12が磁場および圧力を加えた際に大きな熱量効果を示し、高効率な熱制御を実現する新たな固体熱制御材料となることを実証しました。
 今回発見した材料では、磁場と圧力という複数の手法により熱を効率的に制御できます。磁場と圧力を協同的に加えることでより広範囲な熱特性の制御も可能となり、また新規な高効率冷却技術の発展にもつながります。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21062101/
発表年月日:21/06/4 | 原子力基礎工学研究センター

核物質を非破壊で確実に検知
~ 低コストで可搬性に優れた核物質検知装置の原理実証実験に成功 ~

日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの 米田 政夫 研究副主幹らと警察庁 科学警察研究所の田辺 鴻典 研究員、及び京都大学 複合原子力科学研究所の北村 康則 准教授らは、新たな原理に基づく核物質検知装置を開発し、京大複合研においてその原理実証実験に成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21060402/
発表年月日:21/06/3 | 先端基礎研究センター・イノベーション推進室

限りあるレアメタル資源を、未来につなぐ
~ 原子力機構発ベンチャー企業 株式会社エマルションフローテクノロジーズを認定 ~

 日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)が開発した新規溶媒抽出技術「エマルションフロー」をコア技術とした株式会社エマルションフローテクノロジーズ(以下、EFT社)をJAEA発ベンチャー企業として認定しました。
 エマルションフローは溶媒抽出技術の一つであり、使用済み核燃料の元素分離の研究から生まれた技術です。従来の溶媒抽出技術では、液相どうしを「混ぜる」、「置く」、「分離する」の3工程を必要としますが、エマルションフローは、「送液」のみの1工程でこれら3つの工程を同時に行うことができる革新的な溶媒抽出技術です。
 EFT社は、そのエマルションフロー技術を「都市鉱山で活用する」という発想で、リチウムイオン電池などに含まれるレアメタルを低コスト、高効率、かつ高純度に回収する技術を確立し、回収したレアメタルをハイテク産業に直接再利用できる「水平リサイクル」を実現します。
 そして、従来の溶媒抽出技術に代わる新しい技術として「エマルションフロー」を世界に普及し、国が進める脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現に不可欠なレアメタル資源の将来にわたる安定供給に貢献します。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21060301/
発表年月日:21/05/14 | 先端基礎研究センター

電気で操る磁石の研究で新発見
~ 電子スピンで「沈黙の磁石」にGHzのモーター回転 ~

東北大学材料科学高等研究所の竹内 祐太朗 特任助教、学際科学フロンティア研究所の山根 結太 助教、電気通信研究所の深見 俊輔 教授、大野 英男 教授(現東北大学総長)、日本原子力研究開発機構の家田 淳一 研究主幹らは、強い磁気を内部に秘する「沈黙の磁石」反強磁性体に電子スピンを作用させたときに生じる現象を調べ、内部のカイラルスピン構造が無磁場中で恒常的に回転する新現象を発見しました。また、この回転の周波数はGHz程度であり、モーターと同様に入力する電流の大きさに応じて変化することを明らかにしました。これは磁石の電気的制御の四半世紀の研究史で見出されたいずれの現象とも一線を画すものであり、またそれらと比べて極めて小さな電流で誘起できることから、従来技術では実現できない発振器や乱数生成器などの新機能・高効率スピントロニクス素子の実現へと繋がるものと期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21051402/
発表年月日:21/05/11 | J-PARCセンター

化学的圧力で単結晶の欠陥を制御して最低熱伝導率を達成
~ 中性子ホログラフィーでマグネシウム錫化合物にドープしたホウ素の役割を解明 ~

 熱エネルギーから発電できる熱電変換材料として、安価で環境に優しいマグネシウム錫化合物が注目されています。マグネシウム錫化合物単結晶をホウ素で部分置換したところ、理論的に予想されている最低熱伝導率を達成することができました。本研究により、化学的圧力を制御することで、さらにマグネシウム錫化合物単結晶の熱電変換性能を向上させることができる可能性が示されました。マグネシウム錫化合物単結晶を用いた熱電変換デバイスを実用化できれば、省エネルギー社会と低炭素社会を実現できると期待されます。
 本研究は、東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻の齋藤 亘氏、黄 志成氏、林 慶 准教授、宮﨑 讓 教授、茨城大学大学院理工学研究科 量子線科学専攻の杉本 和哉 氏、大山 研司 教授、名古屋工業大学大学院工学研究科 物理工学専攻 林 好一 教授、広島市立大学大学院情報科学研究科 情報工学専攻 八方 直久 准教授、東北大学大学院工学研究科 合同計測分析班 宮崎 孝道 氏、およびJ-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョンの原田 正英 研究主幹、及川 健一 研究主幹、稲村 泰弘 研究副主幹との共同研究です。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21051101/
発表年月日:21/04/12 | 先端基礎研究センター

磁石を使った絶対零度近くへの冷やし方
~ 量子的に揺れる微小磁石が実現する極低温冷却材「イッテルビウム磁性体」 ~

 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 重元素材料物性研究グループ 常盤 欣文 研究副主幹は、独アウグスブルグ大学との国際共同研究で、量子効果の強いイッテルビウム磁性体が絶対零度近くの極低温に到達可能な優れた磁気冷却材であることを示しました。
 現在主流のヘリウム冷凍機は、使用しているヘリウム3ガスが原子炉などでしか生産できず、極めて希少で供給不安定なことが懸念されていました。一方で、イッテルビウム磁性体は原料の入手が容易です。この高性能冷却材の登場により、イッテルビウム磁性体を使用した磁気冷却が現行冷却法を代替し、量子コンピュータなどに広く利用されることが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21041201/
発表年月日:21/04/1 | 物質科学研究センター

核スピン偏極化試料での偏極中性子回折による構造解析法の開発
~ 水素の位置情報を選択的に抽出 ~

 山形大学が原子核物理実験用に開発した結晶試料の核スピン偏極技術を、スピンコントラスト偏極中性子回折測定法に展開しました。これまで、同測定法では試料中の水素を核偏極化させる必要があるため、結晶試料の測定は困難でした。本研究では、同大の核スピン偏極技術により、水素核偏極化されたグルタミン酸試料の作製に成功し、粉末結晶試料中の水素の配向および凝集・分散などの構造情報を抽出できることを世界で初めて実証しました。本研究は、日本原子力研究開発機構及び総合科学研究機構との共同研究で、J-PARC MLFに設置されている中性子小角・広角散乱装置を用いて実験を行いました。物質中の水素の状態は、材料の機能性を評価・検討するために非常に重要な情報です。
 本研究方法は、様々な試料中の水素の位置・配向などの詳細な構造情報を議論できるため、機能性材料、ポリマー、生体高分子などの機能の解明を促進する有用な手段となるとともに、材料工学や生命科学の幅広い分野で応用が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21040102/

2020 年度

発表年月日:21/03/31 | 物質科学研究センター

チタン酸バリウムナノキューブの合成と粒子表面の原子配列の可視化に成功
~ 高性能小型電子デバイスの開発に期待 ~

 茨城大学大学院理工学研究科の中島 光一 准教授、小名木 海飛さん(量子線科学専攻・博士前期課程2 年次)、小林 芳男 教授、茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの石垣 徹 教授、大阪大学産業科学研究所の関野 徹 教授、垣花 眞人 特任教授(常勤)、東北大学多元物質科学研究所の殷シュウ 教授、日本原子力研究開発機構の米田 安宏 研究主幹、総合科学研究機構中性子科学センターの石川 喜久 研究員は、反応温度が80℃以下という低温領域でチタン酸バリウム(BaTiO3)の合成を可能としました。さらに、反応温度が200℃の下で、核生成と結晶成長を制御することによりBaTiO3がナノキューブ化することを実証するとともに、BaTiO3 ナノキューブの粒子表面がチタンカラムで表面再構成されていることを見出しました。  BaTiO3ナノキューブは緻密なセラミックス開発の基盤粒子になる潜在能力を秘めています。BaTiO3ナノキューブの粒子表面の原子配列を明らかにし、物性発現に重要な粒子表面の状態の可視化に成功したことは、粒子表面を利用した材料設計につながるものです。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21033101/
発表年月日:21/03/29 | J-PARCセンター

次世代太陽電池材料“有機無機ハイブリッドペロブスカイト”の圧力印加・同位体置換による高効率化・長寿命化を実現

北京高圧科学研究センターのリンピン・コン(孔令平)らの研究グループは、太陽光発電材料として有望な有機無機ハイブリッドペロブスカイト (CH3NH3PbI3) について、水素の同位体置換を行うことで、太陽電池としての性能を向上させた。本研究は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、米国フロリダ州立大、仏国シンクロトロン放射光センター(SOLEIL)、仏国国立科学研究センター(CNRS)と共同で行った。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21032901/
発表年月日:21/03/5 | 先端基礎研究センター

電力制御の小さな横綱「パワースピントロニクス素子」の開発に道
~ 電源回路の小型化とノイズ除去の切り札「負のインダクタンス」の活用に期待 ~

日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター スピン-エネルギー変換材料科学研究グループ 家田 淳一 研究主幹 (東北大学電気通信研究所客員教授兼任)は、東北大学 学際科学フロンティア研究所 (電気通信研究所兼務)山根 結太 助教と共同で、電子回路の基本的な性質「インダクタンス」を電子スピンの特性を活用することにより広範囲に制御する新しい方法を見出しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21030502/
発表年月日:21/03/2 | 先端基礎研究センター

稀少な超原子核「グザイ核」の質量を初めて決定
~ 原子核の成り立ちや中性子星の構造を理解する新たな知見 ~

岐阜大学教育学部・工学研究科 仲澤 和馬 シニア教授のグループをはじめとする日・韓・米・中・独・ミャンマーの6国26大学・研究機関の総勢97名の研究者・大学院生からなる国際研究チームは、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設 (J-PARC) を利用した国際共同実験 で、グザイマイナスと呼ばれるストレンジクォークを2つ持つ粒子を含む超原子核である「グザイ核」を新たに観測しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21030201/
発表年月日:21/02/19 | 物質科学研究センター

異なる金属を混ぜて表面反応を制御する
~合金表面でさびができる過程を解明、腐食に強い材料の開発に貢献 ~

日本原子力研究開発機構 物質科学研究センター アクチノイド化学研究グループ 津田 泰孝 博士研究員、吉越 章隆 研究主幹、ならびに大阪大学 放射線科学基盤機構 岡田 美智雄 教授、工学研究科 Diño Wislon Agerico Tan准教授らの研究グループは、パラジウム、白金を銅と混ぜあわせた合金の表面で、高速の酸素分子が反応し酸化物を作る過程を解明しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21021903/
発表年月日:21/02/19 | J-PARCセンター

低温高圧下で新しい氷の相(氷XIX)を発見

東京大学物性研究所 山根 崚 特任研究員、東京大学大学院理学系研究科 小松 一生 准教授、鍵 裕之 教授らの研究グループは物性研究所、総合科学研究機構 中性子科学センターおよび日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターとの共同研究で、低温高圧下における誘電率測定および中性子回折実験により、新たな氷の多形である氷XIXを発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21021902/
発表年月日:21/02/10 | 原子力基礎工学研究センター

新たな中性子利用開拓の鍵となる高精度核反応計算手法を開発
~ 計算結果を基礎科学や医療等での中性子利用に資するデータベースとして公開 ~

日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの中山 梓介 研究員と岩本 修 グループリーダー、九州大学大学院 総合理工学研究院の渡辺 幸信 教授、大阪大学 核物理研究センターの緒方 一介 准教授は、重陽子による核反応からの中性子発生量を高精度に予測する計算手法を開発しました。また、その予測値を基に中性子源の設計のための核反応データベースJENDL/DEU-2020を整備し、公開しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21021002/
発表年月日:21/02/4 | 物質科学研究センター・先端基礎研究センター

廃棄豚骨が有害金属吸着剤に
~ 廃材を利用した安価で高性能な金属吸着技術を実現 ~

日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの関根 由莉奈 研究員ら、先端基礎研究センターの南川 卓也 研究員ら、東京大学大学院 理学系研究科の山田 鉄兵 教授、物質・材料研究機構の根本 善弘 NIMSエンジニア、竹口 雅樹 グループリーダーの研究グループは、ストロンチウムやカドミウムなどの金属に対して高い吸着性能を有する骨の特徴を活かすことで、廃棄豚骨を原料とした安価かつ高効率な吸着剤を開発しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21020401/
発表年月日:21/01/21 | 先端基礎研究センター

スズ原子核の表面でアルファ粒子を発見
~ 中性子星の構造とアルファ崩壊の謎に迫る ~

理化学研究所 仁科加速器科学研究センター スピン・アイソスピン研究室のザイホン・ヤン 基礎科学特別研究員(研究当時)、上坂 友洋 室長、ドイツ・ダルムシュタット工科大学の田中 純貴 特別研究員(研究当時)、大阪大学 核物理研究センター(RCNP)の民井 淳 准教授、京都大学 理学研究科の銭廣 十三 准教授ら、宮崎大学、東北大学、大阪市立大学、日本原子力研究開発機構の国際共同研究グループは、RCNPサイクロトロン施設の高分解能磁気分析装置を用いた実験により、スズ同位体の原子核表面に存在するアルファ粒子を発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21012101/
発表年月日:21/01/14 | 原子力基礎工学研究センター

患者の個性を反映したα線核医学治療の線量評価が可能に
~ オーダーメードの治療計画で、より安全で効果的な治療法の確立を目指す ~

日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 放射線挙動解析研究グループの佐藤 達彦 研究主席(大阪大学 核物理研究センター 特任教授を兼任)、大阪大学大学院医学系研究科の渡部 直史 助教らの研究チームは、患者のPET-CT画像から自動で体内の積算放射能分布を推定し、放射線挙動解析コードPHITSを用いて吸収線量や治療効果を推定するα線核医学治療用の線量評価システムの開発に成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p21011401/
発表年月日:20/12/14 | J-PARCセンター

核変換研究のための陽子ビーム制御技術を開発
~ 微小出力陽子ビーム取り出し技術の確認試験に成功 ~

日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの武井 早憲 研究主幹らのグループは、実験のニーズに応じた多様な微小出力陽子ビームを大出力陽子ビームから安定して取り出す技術を開発してきました。今回、ビームエネルギー300万電子ボルト(3メガ電子ボルト、3 MeV)の陽子加速器に本技術を適用し、多様な出力の陽子ビームを取り出すことに成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20121401/
発表年月日:20/12/4 | 物質科学研究センター

半導体が磁石にもなるとき何が起こるのか?
~ エレクトロニクスから次世代スピントロニクス社会実現への一歩 ~

日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの竹田 幸治 研究主幹、東京大学大学院工学系研究科の大矢 忍 准教授、Pham Nam Hai 准教授(現:東京工業大学工学院)、小林 正起 准教授、田中 雅明 教授、東京大学大学院理学系研究科の藤森 淳 教授(現:名誉教授)らの研究グループは、東京工業大学、京都産業大学との共同研究で、強磁性半導体が常磁性状態から強磁性状態に変化していく過程を詳細に観察することで、原子レベルでの強磁性発現メカニズムを明らかにすることに成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20120402/
発表年月日:20/11/6 | J-PARCセンター

陽子ビームにさらされるとチタン合金製のビーム窓がもろくなる原因を解明
~ RaDIATE国際コラボレーションによる大強度加速器標的・ビーム窓材料開発 ~

高エネルギー加速器研究機構 J-PARCセンターの石田 卓 講師、日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの若井 栄一 研究主席等は、加速器標的やビーム窓に用いる材料への大強度陽子ビーム照射を実施して、64チタン合金には、その主要なα相の結晶に、陽子ビームの照射によってナノメートルサイズの欠陥クラスターが高密度で生成するとともに、そのβ相の中に微細なω相と呼ばれる結晶構造が高密度で成長していくために、著しくかたくてもろくなった可能性を明らかにしました。陽子ビーム照射がチタン合金中に高密度のω相の生成と成長を誘起する現象は、本研究で初めて観測されました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20110602/
発表年月日:20/11/5 | 先端基礎研究センター

原子核の存在限界(中性子ドリップライン)の新たなメカニズム
~ 中性子は原子核にいくつ入るか ~

大塚 孝治 東京大学名誉教授、角田 直文 東京大学大学院 理学系研究科 附属原子核科学研究センター 元特任助教、高柳 和雄 上智大学 理工学部 教授、清水 則孝 東京大学大学院 理学系研究科 附属原子核科学研究センター 特任准教授、鈴木 俊夫 日本大学 文理学部 特任教授、宇都野 穣 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター マネージャー・主任研究員、吉田 聡太 宇都宮大学 大学教育推進機構基盤教育センター 特任助教、上野 秀樹 理化学研究所 仁科加速器科学研究センター 核分光研究室 室長等は、ドリップラインが決まる新たなメカニズムを理論的に解明した。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20110501/
発表年月日:20/10/30 | 物質科学研究センター

凍らせて、混ぜて、溶かすだけ 高い強度と成型性を持つ新しいゲル材料を開発
~ 身近なバイオマス素材を利用した汎用性の高い材料開発に新展開 ~

日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの関根 由莉奈 研究員、中川 洋 研究主幹、先端基礎研究センターの南川 卓也 研究員、杉田 剛 研究員、東京都立産業技術研究センターの柚木 俊二 上席研究員、東京大学大学院 理学系研究科の山田 鉄兵 教授の研究グループは、中性子線を利用して明らかにした高分子ー水の構造研究に関する知見を活かして、木材から得られるセルロースナノファイバーとレモンに含まれるクエン酸、そして水から構成される、環境にやさしい高強度ゲル材料「凍結架橋セルロースナノファイバーゲル」の開発に成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20103003/
発表年月日:20/10/26 | 物質科学研究センター

速い分子だと炭素の網を通り抜ける!?
~ 酸素がグラフェンをすり抜ける現象を発見 ~

東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センターの小川 修一 助教らは、産業技術総合研究所、日本原子力研究開発機構、ロスアラモス国立研究所(米国)との共同研究によって、高速の酸素分子を照射すると酸素分子がグラフェンを壊すことなく透過する現象を発見しました。分子の「速度」によってグラフェンを透過できたりできなかったりする現象は世界で初めての発見です。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20102601/
発表年月日:20/10/8 | 物質科学研究センター

新奇な磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造の作成に成功
~ 磁性とトポロジカル物性の協奏現象に新たな知見 ~

東京工業大学 理学院 物理学系の平原 徹 准教授は、分子科学研究所の田中 清尚 准教授、広島大学 放射光科学研究センターの奥田 太一 教授、日本原子力研究開発機構の竹田 幸治 研究主幹、東京大学大学院 工学系研究科の小林 正起 准教授、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の雨宮 健太 教授、筑波大学 数理物質系の黒田 眞司 教授、物質・材料研究機構 磁性・スピントロニクス材料研究拠点の佐々木 泰祐 主幹研究員、ロシア・スペインの理論グループと共同で、トポロジカル絶縁体の表面近傍に複数の規則的な磁性層を埋め込むことに成功し、その表面ディラックコーンのエネルギーギャップが磁化秩序の発現する温度より高い温度で閉じることを実証した。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20100801/
発表年月日:20/09/3 | 原子力基礎工学研究センター

1945年の日本人体型を精緻に再現し原爆被爆者の臓器線量を再評価
~ 日米共同研究の成果により、更に精度の高い疫学調査が可能に ~

日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの佐藤 達彦 研究主幹、放射線影響研究所 統計部のHarry Cullings 博士、フロリダ大学のWesley Bolch 教授、米国国立がん研究所のChoonsik Lee 博士らによる日米共同研究プロジェクトチームは、1945年の日本人標準体型に基づく人体モデルを構築し、最新の放射線挙動解析コードを組み合わせて原爆被爆者の臓器線量を従来手法よりも精度よく評価する手法を確立しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20090301/
発表年月日:20/08/28 | 先端基礎研究センター

放射線に負けない熱電発電の実現に向けて
~ スピン熱電素子が重イオン線に高耐性を持つことを実証 ~

日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 岡安 悟 研究主幹、家田 淳一 研究主幹、齊藤 英治 グループリーダー、日本電気株式会社 システムプラットフォーム研究所 石田 真彦 主幹研究員らの研究チームは、電子スピンを利用して熱から電気を生む「スピン熱電素子」が、非常に高い放射線耐性を示すことを、重イオン加速器と放射光を使った実験で初めて実証しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20082802/
発表年月日:20/08/25 | J-PARCセンター

鋳鉄が強化されるメカニズムを大強度中性子ビームで解明
~ その場中性子回折実験により鋳鉄の組織挙動を原子レベルで観測 ~

日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターのハルヨ・ステファヌス 研究主幹、川崎 卓郎 研究副主幹、ゴン・ウー 特別推進研究員(現:京都大学)、日立建機株式会社(現:新東北メタル株式会社)の窪田 哲 博士、京都大学のガオ・シ 博士の研究グループは、J-PARCの物質・生命科学実験施設に設置している高性能工学材料回折装置 TAKUMIを用いて、鋳鉄が「繰り返し引張圧縮」によって強度が増加するメカニズムを解明しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20082501/
発表年月日:20/08/8 | 先端基礎研究センター

磁気を用いて音波を一方通行に
~ 音響整流装置の基礎原理開拓 ~

理化学研究所の許 明然 研修生、東京大学の大谷 義近 教授、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの山本 慧 任期付研究員らの国際共同研究グループは、固体表面に沿って伝わる音波が磁石の薄膜を通過する際に、片側から入射する場合にのみ磁石に全く吸収されずに伝わることを発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20080801/
発表年月日:20/07/22 | J-PARCセンター

J-PARCにおける大強度陽子ビーム制御技術の開発
~ 非線形光学を駆使したビーム整形法でターゲットの損傷を軽減、施設の安全運転に貢献 ~

日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの明午 伸一郎 研究主席らのグループは、原子力機構および高エネルギー加速器研究機構の共同運営組織であるJ-PARCの物質・生命科学実験施設における中性子源施設の安定な運転のため、大強度陽子ビームの整形技術を開発しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20072202/
発表年月日:20/07/21 | 物質科学研究センター

伝導電子スピンの奇妙な「短距離秩序」を世界最高温度で発見
~ 新物質Mn3RhSiで新しい金属状態が実現 ~

日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの山内 宏樹 研究副主幹、総合科学研究機構 中性子科学センターの社本 真一 サイエンスコーディネータ、理化学研究所 仁科加速器科学研究センターの渡邊 功雄 専任研究員及び芝浦工業大学 理工学研究科 地域環境システム専攻のディタ・プスピタ・サリ 博士研究員(現: 工学部助教)らのグループは、原子力機構が世界で初めて合成した新物質Mn3RhSiにおいて、720 K(447℃)という世界最高温度で伝導電子スピンの一部がほぼ固化(短距離秩序化)し相分離していることを中性子とミュオンを相補的に用いた観測で発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20072101/
発表年月日:20/07/15 | J-PARCセンター

中性子で迫る宇宙創成の謎
~ 大強度偏極熱外中性子で、原子核内での対称性の破れの増幅現象に迫る ~

日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの奥平 琢也 博士研究員、名古屋大学大学院 理学研究科の山本 知樹 大学院生らの研究グループは、偏極した中性子を原子核が吸収した時に放出するガンマ線を測定したところ、その放出方向に偏りが存在し、その偏りが中性子のスピン方向に依存して変化することを世界で初めて発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20071501/
発表年月日:20/07/1 | J-PARCセンター

大強度陽子ビームに晒される金属はどのくらい損傷するのか
~ 高エネルギー陽子ビームを用いる加速器駆動システムの安全に貢献 ~

日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの明午 伸一郎 研究主席、原子力基礎工学研究センターの岩元 洋介 研究主幹らのグループは、高レベル放射性廃棄物を効率的に減容化・有害度低減する加速器駆動システム(Accelerator Driven System, ADS)における陽子ビームに起因する材料の損傷について、J-PARCセンターの陽子加速器施設を用いて定量化しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20070102/
発表年月日:20/06/23 | 先端基礎研究センター

陽子衝突からの左右非対称なπ中間子生成
~ 粒子生成の起源に迫る新たな発見 ~

理化学研究所の後藤雄二 先任研究員、キム・ミンホ 国際プログラム・アソシエイト(研究当時)、東京大学のさこ隆志 准教授、名古屋大学の伊藤好孝 教授、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの谷田聖 研究主幹、高麗大学校のホン・ビョンシク 教授らが参画する国際共同研究グループは、米国ブルックヘブン国立研究所の偏極陽子衝突型加速器「RHIC」を使って、反対方向に運動する陽子同士の衝突により、衝突位置の超前方に生成される「中性π中間子」が大きな左右非対称度を持つことを発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20062301/
発表年月日:20/06/16 | 先端基礎研究センター

スピン流を介した流体発電現象の大幅な発電効率向上を実現
~ スピントロニクス技術を応用した新たなナノ流体デバイスへ道 ~

ERATO 齊藤スピン量子整流プロジェクトの髙橋 遼 研究協力員(研究開始時 日本原子力研究開発機構 博士研究員、現 お茶の水女子大学 助教)、中堂 博之 サブグループリーダー(日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 副主任研究員)、松尾 衛 グループリーダー(研究開始時 日本原子力研究開発機構 副主任研究員、現 中国科学院大学 准教授)、前川 禎通 グループリーダー(理化学研究所 上級研究員)、齊藤 英治 研究総括(東京大学 教授)らは、電子の自転の流れであるスピン流を介した流体発電現象のマイクロメートルスケールの微細流路における特性を解明し、微細になるほど発電効率が飛躍的に向上することを発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20061601/
発表年月日:20/06/11 | 原子力基礎工学研究センター

放射性物質の様々な条件の大気拡散計算を高速化
~ 新開発の「WSPEEDI-DB」で計算時間が1/100に! ~

日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの寺田宏明 研究副主幹らの研究グループは、放射性物質が大気中を拡散する様子を予測する大気拡散データベースシステム「WSPEEDI-DB」を開発しました。「WSPEEDI-DB」では、今まで困難だった様々な気象条件や任意の放出源情報に対する大気拡散の計算結果を即座に取得でき、様々な応用が可能になります。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20061101/
発表年月日:20/06/8 | 先端基礎研究センター

悪魔と取引した電子たち
~ 磁性体における40年来の謎を解明 ~

東京大学物性研究所の黒田健太 助教をはじめとする東京大学、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター、及び理化学研究所からなる研究グループは、「悪魔の階段」として知られるスピンが複雑な配列を示す相転移現象において、伝導電子の振る舞いが激変している様子を観測することに初めて成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20060801/
発表年月日:20/04/10 | J-PARCセンター

物理学の未解決問題に光!
~ 超流動ヘリウム中の流れの可視化へ ~

名古屋大学大学院工学研究科のフォルカ・ゾンネンシャイン(Volker Sonnenschein) 助教、同大学院理学研究科の松下 琢 講師 をはじめとする名古屋大学、J-PARC、CROSS 及び京都大学からなる研究グループは、可搬型の小型計測装置を開発し、超流動4Heに中性子ビームを照射することによって生成された4He2エキシマーからの発光現象の確認に成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20041002/
発表年月日:20/04/7 | 原子力基礎工学研究センター

アルミニウムの自発的破壊現象の解明
~ 水素でアルミがもろくなる原因の解明と、計算科学による高強度合金への期待 ~

日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの都留智仁 研究主幹、システム計算科学センターの山口正剛 研究主幹、九州大学の戸田裕之 主幹教授、富山大学の松田健二 教授らは、先端分析計測機器を用いて水素によるアルミニウムの破壊現象の詳細な観察を行い、また、大型計算機を用いてアルミニウムに水素が侵入した場合の材料内部の挙動のシミュレーション行い、破壊機構の評価を行いました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2020/p20040601/

2019 年度

発表年月日:20/03/28 | J-PARCセンター

極低温で現れる先進的合金の特異な変形メカニズムを解明
~ 宇宙開発などに役立つ高性能な低温構造材料の開発に期待 ~

香港城市大学のXun-Li Wang教授、北京科技大学、日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターのステファヌス・ハルヨ 研究主幹、川崎卓郎 研究副主幹、南京理工大学、及びハルビン工程大学の研究グループは、J-PARCの中性子を使って、先進的な合金「ハイエントロピー合金」が持つ、極低温で延性が増大する特性の原因を、結晶の欠陥など、複数の要因が協働的に作用するためであることを突き止めました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p20032801/
発表年月日:20/03/26 | 原子力基礎工学研究センター

原子炉内での放射性物質のふるまい予測をめざす
~ 重大事故時のセシウムの「化学」をデータベース化 ~

日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 性能高度化技術開発グループの逢坂正彦 グループリーダー、中島邦久 研究主幹、三輪周平 研究副主幹らは、軽水炉の重大事故時におけるセシウム等の放射性物質の事故時ふるまいに大きな影響を与える化学挙動を予測可能な核分裂生成物化学挙動データベース ECUME を構築しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p20032602/
発表年月日:20/03/26 | 物質科学研究センター

ものづくり現場で中性子線を使った材料分析が可能に
~ 軽量化を可能にする鋼材開発に新たな道筋 ~

日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの徐平光 研究副主幹、鈴木裕士 グループリーダーらは、理化学研究所光量子工学研究センター中性子ビーム技術開発チームの高村正人 上級研究員、大竹淑恵 チームリーダーらとの共同研究により、中性子回折法による実験室レベルでの集合組織測定技術の開発に世界で初めて成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p20032601/
発表年月日:20/03/10 | J-PARCセンター

中性子回折実験から解き明かされた氷の謎
~ 水素の移動様式の変化が高圧下でさまざまな異常を引き起こしていた ~

東京大学大学院理学系研究科 小松一生 准教授、鍵裕之 教授らの研究グループは、フランス・ソルボンヌ大学、総合科学研究機構 中性子科学センターおよび日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターとの共同研究で、低温高圧その場中性子回折実験により、氷VII-VIII相転移における水素の秩序化の速度が10 GPa付近で最も遅くなることを発見しました。 この異常な振る舞いは、加圧によって水分子の回転運動が遅くなると同時に隣の酸素原子への水素の移動が速くなるというモデルによって説明できることがわかりました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p20031001/
発表年月日:20/02/14 | 物質科学研究センター

隕石衝突後の環境激変の証拠を発見
~ 白亜紀最末期の生物大量絶滅は大規模酸性雨により引き起こされた? ~

筑波大学生命環境系 丸岡照幸 准教授、高知大学農林海洋科学部 西尾嘉朗 准教授、京都大学大学院人間・環境学研究科 小木曽哲 教授、海洋研究開発機構海底資源センター 鈴木勝彦 センター長、日本原子力研究開発機構 大澤崇人 研究主幹、量子科学技術研究開発機構 初川雄一 専門業務員、高輝度光科学研究センター 寺田靖子 主幹研究員からなる研究チームは、白亜紀―古第三紀境界層試料について、放射光を利用した蛍光X線微量元素マッピング分析、中性子放射化分析、質量分析計全岩元素分析を行い、隕石衝突直後の地球環境変動のうち、大規模な酸性雨が実際に発生していた証拠を発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p20021402/
発表年月日:20/02/3 | J-PARCセンター

乱れのない氷をつくる

東京大学大学院理学系研究科 小松一生 准教授、鍵裕之 教授らの研究グループは、総合科学研究機構 中性子科学センター、山梨大学大学院総合研究部および日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターとの共同研究において、水素ハイドレートから水素を抜き取るという方法により、積層不整のない立方晶系の対称性をもつ氷Icの合成に世界で初めて成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p20020301/
発表年月日:20/01/30 | 原子力基礎工学研究センター

世界最高性能のガンマ線ビームと新開発の中性子検出器で光核反応データの真実を解明
~ 国際協力で開発した光核反応データライブラリーの完成に貢献 ~

甲南大学理工学部物理学科の宇都宮弘章 教授は、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所の宮本修治 特任教授とともに、ニュースバル放射光施設において世界最高性能のレーザーコンプトンガンマ線ビームと新開発の平坦効率中性子検出器を用いて光核反応データを取得することにより、30年続いたアメリカとフランスの測定データ間の矛盾を解決しました。日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの岩本信之 研究主幹は、本測定データなどを基に核反応理論モデル計算を行い、光核反応データを整備しました。測定・整備したデータを国際原子力機関(International Atomic Energy Agency、以下「IAEA」という)に提供することで、IAEAが主導して開発した光核反応のデータベース「IAEA 光核反応データライブラリー2019」の完成に大きく貢献しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p20013001/
発表年月日:19/11/14 | 先端基礎研究センター

グラフェン超伝導材料の原子配列解明に成功
~ 薄くて柔らかい、原子スケールの2次元超伝導材料の開発に新たな道 ~

東京大学大学院理学系研究科博士後期課程3年の遠藤由大および長谷川修司 教授、早稲田大学理工学術院の高山あかり 専任講師、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの深谷有喜 研究主幹、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の望月出海 助教および兵頭俊夫 ダイヤモンドフェローの研究グループは、これまで未解決だった超伝導を示す炭素原子層物質グラフェンとカルシウムの2次元化合物の原子配列を、全反射高速陽電子回折法という実験手法を用いて初めて決定しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19111402/
発表年月日:19/11/14 | 物質科学研究センター

アルミでコンピュータメモリを省電力化する
~ アルミ酸化膜を用いた新しい不揮発メモリの動作メカニズムを解明 ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 物質科学研究センター 多重自由度相関研究グループの久保田正人 研究副主幹、国立研究開発法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の加藤誠一 主任研究員、児子精祐 外来研究員及び大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の雨宮健太 教授らの研究グループは、次世代不揮発メモリの材料として期待されるアモルファスアルミ酸化膜において、半導体メモリのまったく新しい動作メカニズムを説明する電子状態変化を世界で初めて直接観測でとらえました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19111401/
発表年月日:19/11/7 | 原子力基礎工学研究センター

太陽放射線被ばく警報システム(WASAVIES)の開発に成功
~ ICAOグローバル宇宙天気センターの一員としてデータ提供開始 ~

国立研究開発法人情報通信研究機構、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所を中心とする研究グループは、太陽フレア発生時に飛来する太陽放射線の突発的な増加を地上と人工衛星の観測装置を用いてリアルタイムに検出し、太陽フレア発生直後から太陽放射線による被ばく線量を推定する、太陽放射線被ばく警報システムWASAVIES(ワサビーズ)の開発に成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19110701/
発表年月日:19/10/18 | 原子力基礎工学研究センター

放射性廃棄物を減らす核変換技術の実用化に道筋
~ 核変換用燃料のふるまい予測に必要な物性データベースを公開 ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 燃料高温科学研究グループの柴田裕樹 副主任研究員及び高野公秀 グループリーダーらは、長寿命放射性核種を短寿命または安定核種に変換する加速器駆動核変換システムに使われる燃料のふるまいを解析するための窒化物燃料物性データベースを整備し、公開しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19101802/
発表年月日:19/08/30 | 原子力基礎工学研究センター

核変換のための基盤データの信頼性を大幅に向上
~ 原子核反応データと計算科学で放射性廃棄物の課題へ挑む ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 核データ研究グループの国枝賢 研究主幹、湊太志 研究副主幹らは、使用済み燃料中に存在する長寿命核分裂生成物と、照射する陽子・中性子との核反応の起こりやすさを理論的に予測する新たな計算手法を開発し、従来手法と比較して信頼性を2倍以上向上させました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19083001/
発表年月日:19/08/26 | J-PARCセンター

タンパク質の動きが病気を引き起こす
~ パーキンソン病の原因タンパク質の分子運動を観測することに成功 ~

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子生命科学領域の藤原悟 専門業務員、松尾龍人 主任研究員、河野史明 研究員、名古屋大学シンクロトロン光研究センターの杉本泰伸 准教授、構造生物学研究センターの成田哲博 准教授、松本友治 研究員、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの柴田薫 常勤特別嘱託らは共同で、脳内に存在する正常なタンパク質「α-シヌクレイン」の分子の特定の運動が、パーキンソン病発症のカギとなる「アミロイド線維」という異常な塊を作り出す原因となることを突き止めました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19082601/
発表年月日:19/08/21 | J-PARCセンター

量子干渉効果と格子欠陥が磁気準粒子に及ぼす作用を中性子散乱で観測

東京工業大学 理学院 物理学系の栗田伸之助教、田中秀数教授、青山学院大学 理工学部 物理・数理学科の山本大輔助教、古川信夫教授、理工学研究科 理工学専攻基礎科学コース博士前期課程の金坂拓哉大学院生(研究当時)、日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの河村聖子研究副主幹、中島健次研究主席の研究グループは、量子反強磁性体Ba2CoSi2O6Cl2の中性子散乱実験により、この磁性体中ではトリプロンと呼ばれる磁気準粒子が、相互作用のフラストレーションによる量子干渉効果によって全く動けなくなることを確認しました。また、格子欠陥による不対スピンとトリプロンが量子力学的励起状態を形成することを明らかにしました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19082101/
発表年月日:19/07/16 | 原子力基礎工学研究センター

生命が居住可能な系外惑星へのスーパーフレアの影響を算出
~ ハビタブル惑星における宇宙線被ばくの定量化に成功 ~

京都大学総合生存学館(思修館)山敷庸亮 教授、国立天文台ハワイ観測所岡山分室 前原裕之 助教、アメリカ航空宇宙局ゴダード宇宙飛行センター Vladimir Airapetian博士、コロラド大学ボルダー校 野津湧太 博士、日本原子力研究開発機構 佐藤達彦 研究主幹、ライデン大学ライデン天文台 野津翔太 博士、京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室 佐々木貴教 助教、同附属天文台 柴田一成 教授らの国際共同研究グループは、太陽型恒星でのスーパーフレアの発生頻度とエネルギーおよび極紫外線を考慮した惑星放射線環境と大気散逸の定量的評価を世界で初めて行いました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19071601/
発表年月日:19/06/14 | 先端基礎研究センター

スピン流が機械的な動力を運ぶことを実証
~ ミクロな量子力学からマクロな機械運動を生み出す新手法 ~

JST戦略的創造研究推進事業において、ERATO齊藤スピン量子整流プロジェクトの針井一哉 研究員(日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 特定課題推進員)、齊藤英治 研究総括(研究当時 東北大学金属材料研究所・材料科学高等研究所 教授、現 東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 教授 兼任)、前川禎通 グループリーダー(理化学研究所 創発物性科学研究センター 上級研究員)らの研究グループは、磁気の流れであるスピン流を注入することでマイクロメートルスケールの磁性絶縁片持ち梁を振動させることに成功し、スピン流が運ぶミクロな量子力学的回転がマクロな動力となることを実証しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19061402/
発表年月日:19/05/29 | 先端基礎研究センター

磁石を伝わる磁気の波を数学(トポロジー)で分類
~ 表面波の安定性のメカニズム解明が、情報機器の省エネ・高機能化に新たな道を拓く ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター スピン-エネルギー変換材料科学研究グループ 山本慧 任期付研究員(文科省卓越研究員制度)、東京大学工学部の齊藤英治 教授らの研究グループは、磁石を伝わる磁気の波をトポロジーを用いて分類し、表面波が持つ安定性を説明することに世界で初めて成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19052901/
発表年月日:19/05/10 | J-PARCセンター

量子磁性体でのトポロジカル準粒子の観測に成功
~ トポロジカルに保護された磁性準粒子端状態の予言 ~

東北大学多元物質科学研究所 那波和宏 助教、佐藤卓 教授、東京工業大学理学院 田中公彦 大学院生(研究当時)、田中秀数 教授、日本原子力研究開発機構J-PARCセンター 中島健次 研究主席らの研究グループは、化学式Ba2CuSi2O6Cl2で表される量子反強磁性体において、トリプロンと呼ばれる磁気準粒子がトポロジカルに非自明な状態を形成することを明らかにし、トポロジカルに保護された端状態の存在を提案しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19051002/
発表年月日:19/04/24 | 原子力基礎工学研究センター

放射性のゴミを分別する「SELECTプロセス」の開発に成功
~ 高レベル放射性廃液の有害度低減・減容化を目指す分離変換技術の開発に進展 ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)原子力科学研究部門原子力基礎工学研究センター群分離技術開発グループ(松村達郎グループリーダー)は、原子力発電で使用された燃料の再処理から生じる高レベル放射性廃液から、放射性毒性の高いアメリシウムなどを99.9%以上分離する実用的な手法として、「SELECTプロセス」を世界で初めて開発しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19042401/

2018 年度

発表年月日:19/03/29 | J-PARCセンター

固体冷媒を用いた新しい冷却技術の開発に期待
~ 「柔粘性結晶」の圧力変化に伴う分子運動の変化が巨大な「熱量効果」をひきおこすことを解明 ~

中国科学院のBing Liらの研究グループは、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)のJ-PARCセンターの川北至信 不規則系物質研究グループリーダーらと共同で、柔粘性結晶の中に巨大な圧力熱量効果を持つものがあり次世代の固体冷媒の候補と成り得ることを示すとともに、その機能発現のメカニズムを原子レベルで解明しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p19032902/
発表年月日:19/02/26 | 先端基礎研究センター / J-PARCセンター

新種の超原子核(二重ラムダ核)を発見
~ 中性子星の内部構造の謎に迫る ~ 「美濃イベント」と命名

岐阜大学教育学部・工学研究科の仲澤和馬 シニア教授のグループをはじめとする日・韓・米・中・独・ミャンマーの6カ国24大学・研究機関の総勢103名の研究者・大学院生からなる研究チームは、大強度陽子加速器施設(J-PARC)を利用した国際共同実験で、ベリリウム(Be)原子核を芯とする新種の二重ラムダ核を発見し、「美濃イベント(MINO event)」と命名しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p19022602/
発表年月日:19/01/24 | 先端基礎研究センター / J-PARCセンター

K中間子と二つの陽子からなる原子核の発見
~ クォークと反クォークが共存する“奇妙な”結合状態 ~

理化学研究所開拓研究本部岩崎中間子科学研究室の岩崎雅彦 主任研究員らの国際共同研究グループは、大強度陽子加速器施設(J-PARC)にて、クォークと反クォークが共存する「中間子束縛原子核」の生成実験に世界で初めて成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p19012402/
発表年月日:18/12/22 | 先端基礎研究センター

磁石の中を高速に伝播する"磁気の壁"の運動を電圧で制御することに成功
~ 磁気メモリデバイスの高性能化に道 ~

東京大学大学院工学系研究科の小山知弘 助教、千葉大地 准教授、電気通信大学の仲谷栄伸 教授、日本原子力研究開発機構の家田淳一 研究主幹らの研究チームは、絶縁体を介して磁石に電圧を加える「電界効果」という手法を用いて、秒速100メートルを超える高速な磁気の壁(磁壁: N極とS極の境界)の運動を制御することに世界で初めて成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18122201/
発表年月日:18/12/14 | J-PARCセンター

コバルト酸化物でスピンの量子重ね合わせ状態を創出
~ 量子演算素子の基礎となる励起子絶縁状態の実現へ ~

東北大学大学院理学研究科の富安啓輔 助教、東京理科大学理工学部の岡崎竜二 准教授、茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの岩佐和晃 教授、東北大学金属材料研究所の野島勉 准教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の神山崇 教授、石川喜久 研究員(現:総合科学研究機構)、日本原子力研究開発機構J-PARCセンターの河村聖子 研究副主幹らの共同研究チームは、低温で磁石としての性質を示さないことで知られるコバルト酸化物LaCoO3のCoをScで化学置換した新たな物質LaCo1-yScyO3において、元のLaCoO3とは磁気・電気・熱的性質の全く異なる絶縁状態が現れることを発見しました。また、X線回折・中性子分光実験の結果、この絶縁状態が、電子スピンの総和が異なる2種類の原子状態の量子力学的な重ね合わせにより現れるという、これまでに例のない発現機構を突き止めました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18121402/
発表年月日:18/12/5 | 先端基礎研究センター

磁気ゆらぎと共に現れる超伝導
~ ウラン強磁性超伝導体の高圧力下での超伝導出現と磁気ゆらぎの関係を世界で初めて解明 ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。) 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター 重元素材料物性研究グループの立岩尚之 研究主幹らは、ウラン化合物UGe2において強磁性と超伝導が協調関係にあることを世界で初めて明らかにしました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18120501/
発表年月日:18/11/22 | J-PARCセンター

高圧下における水素結合の対称化の直接観察に成功
~ 地球深部で含水鉱物の高圧相に起きる物性変化の原因を解明 ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。) J-PARCセンターの佐野亜沙美 研究副主幹らの研究グループは、東京大学大学院理学系研究科の小松一生 准教授、鍵裕之 教授、北海道大学大学院理学研究院の永井隆哉 教授およびオークリッジ国立研究所との共同研究で、大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設にある超高圧中性子回折装置PLANETおよび米国パルス中性子源SNSの高圧下パルス中性子回折装置SNAPを用いて、含水鉱物の高圧相であるδ-AlOOHの高圧下中性子回折実験を行いました。その結果、18万気圧(地下約520 km相当)という高圧下において、水素原子が隣り合う二つの酸素原子間の中心に位置する「水素結合の対称化」が起きることを初めて直接観測しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18112202/
発表年月日:18/11/5 | J-PARCセンター

鉄リン系超伝導体で高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎを世界で初めて発見
~ 鉄系超伝導体の機構の解明、新しい超伝導体の探索へ ~

一般財団法人総合科学研究機構(理事長 横溝英明)中性子科学センターの石角元志 技師、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)先端基礎研究センターの社本真一 研究主席、J-PARCセンターの梶本亮一 研究主幹らは、大強度陽子加速器施設(J-PARC)、米国のオークリッジ国立研究所、仏国のラウエ・ランジュバン研究所での中性子非弾性散乱実験により、鉄リン系超伝導体で、高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎを世界で初めて発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18110501/
発表年月日:18/10/23 | J-PARCセンター

超伝導検出器を使った全固体ワンチップの中性子高速イメージング装置を開発
~ ミクロンオーダーの高空間分解能中性子透過画像の撮像に向けて ~

大阪府立大学大学院工学研究科電子・数物系専攻、高エネルギー加速器研究機構・総合研究大学院大学、日本原子力研究開発機構、情報通信研究機構、産業技術総合研究所、大阪府立大学工学研究科量子放射線系専攻で構成される研究チームは、全固体の超伝導検出器を開発し、コンパクトな中性子高速イメージングシステムを完成しました。J-PARC物質・生命科学実験施設の中性子源特性試験装置(BL10)にて本検出器の実証実験を行い、1ナノ秒の時間分解能と22μm(マイクロメートル)の空間分解能を達成しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18102301/
発表年月日:18/10/22 | 物質科学研究センター

数万気圧環境下での中性子3次元偏極解析に世界で初めて成功
~ 完全非磁性の高圧セル開発で実現 圧力下でのスピン配列の解明に期待 ~

国立研究開発法人物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点 中性子散乱グループの寺田典樹 主任研究員と国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力科学研究部門 物質科学研究センター 多重自由度相関研究グループの長壁豊隆 グループリーダーらの研究グループは、完全に非磁性体で作られた高圧力セルを開発し、数万気圧という特殊な環境において物質の電子スピン配列を詳細に解析できる中性子3次元偏極解析実験に世界で初めて成功しました。さらにこの実験により、圧力を加えるとPC用次世代メモリ材料として期待されるマルチフェロイクス材料に変化する物質を見出しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18102202/
発表年月日:18/10/12 | 原子力基礎工学研究センター

放射性廃棄物は何へ、どれだけ変換されるか?
~ 重陽子による核変換のメカニズムを解明 ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)原子力基礎工学研究センター核データ研究グループの中山梓介 研究員らは、国立大学法人九州大学(総長 久保千春)の渡辺幸信 教授と共同で、重陽子による核破砕反応から生成される原子核の種類や量を高精度に予測する計算手法を開発しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18101202/
発表年月日:18/08/31 | 先端基礎研究センター

高速回転で探る磁石中の電子の回転運動の消失
~ 回転運動の消失による高速磁気デバイスの材料探索に道を拓く ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)先端基礎研究センター スピン-エネルギー変換材料科学研究グループの今井正樹 特定課題推進員、国立研究開発法人理化学研究所 創発物性科学研究センターの前川禎通 特別顧問らの研究グループは、磁石が磁気を持つ素となる電子の回転運動を観測する高速回転装置を開発しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18083102/
発表年月日:18/08/30 | 原子力基礎工学研究センター

シンチレーション検出器の光出力を決める仕組みを解明
~ 加速器、宇宙、医療現場などの陽子や重粒子線の正確な計測に向けて ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)原子力基礎工学研究センターの小川達彦 研究員と佐藤達彦 研究主幹、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫)高崎量子応用研究所の八巻徹也 上席研究員は、シンチレーション検出器の光出力が決まる仕組みを解明し、新たに陽子線・重粒子線に対しても発光量を正確に予測することを可能にしました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18083001/
発表年月日:18/08/24 | 先端基礎研究センター

負のミュオン素粒子で視る物質内部
~ 世界最高計数速度の負ミュオンビームで長年の夢が実現 ~

株式会社 豊田中央研究所(豊田中研)の杉山 純 主監、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の下村 浩一郎 教授、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)先端基礎研究センターの髭本 亘 研究主幹、国立大学法人大阪大学大学院理学研究科の二宮 和彦 助教、国際基督教大学の久保 謙哉 教授らの共同研究グル-プは、負電荷を有する素粒子ミュオンが物質中では水素以外の原子核に捕獲されて動かないことに注目し、負ミュオンスピン回転緩和測定により、水素化合物中の水素の作る微小な磁場とその揺らぎの観測に世界で初めて成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18082402/
発表年月日:18/07/24 | J-PARCセンター

磁気渦の生成・消滅過程を100分の1秒単位で観測
~ J-PARC MLFのパルス中性子を用いたストロボ撮影に成功 ~

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター 強相関量子構造チームの中島多朗研究員、有馬孝尚チームリーダー、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター、日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの稲村泰弘副主任研究員、総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターの大石一城副主任研究員、伊藤崇芳副主任研究員、東京大学大学院 工学系研究科の賀川史敬准教授、大池広志助教らの共同研究グループは、物質中の微小な磁気渦(磁気スキルミオン)が生成・消滅する過程を、100分の1秒単位の時間分解能で観測することに成功しました。
関連リンク:https://j-parc.jp/ja/topics/2018/press180724.html
発表年月日:18/06/15 | 物質科学研究センター

世界初!レーザーコーティング照射条件の施工前予測が可能なシステムを開発
~ レーザー加工の職人技を身近な技術に ~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 (理事長 児玉 敏雄) 高速炉・新型炉研究開発部門 敦賀総合研究開発センター レーザー・革新技術共同研究所の村松 壽晴 GL、原子力科学研究部門 物質科学研究センター 放射光エネルギー材料研究ディビジョンの菖蒲 敬久 研究主幹と国立大学法人大阪大学 (総長 西尾 章治郎) 接合科学研究所の塚本 雅裕 教授らの研究グループは、レーザーコーティング加工時に生じる固体金属の溶融・凝固過程を汎用エンジニアリングワークステーションにより評価可能な計算科学シミュレーションコードSPLICEを世界に先駆けて開発しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18061502/
発表年月日:18/05/29 | 原子力基礎工学研究センター

「宇宙線ミュオン」が電子機器の誤作動を引き起こす
~超スマート社会の安全・安心を支えるソフトエラー評価技術の開発に向けて~

九州大学大学院総合理工学研究院、大阪大学大学院情報科学研究科、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所、J-PARCセンター、日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センターの11名からなる共同研究チームは、J-PARC物質・生命科学実験施設内のミュオン実験装置MUSEにて、半導体デバイスに対する正および負ミュオン照射試験を行い、正ミュオンに比べて負ミュオンの方がメモリ情報のビット反転の発生確率が高くなることを実験的に初めて明らかにしました。負ミュオンの照射実験結果の報告はこれまでになく、ソフトエラーの正確な評価とそれに対する対策はIoTの進展による超スマート社会の実現に寄与すると考えられます。今後は、さらに試験データを蓄積し、シミュレーション手法の精度を高めたソフトエラー発生率の評価技術を確立し、その技術を次世代半導体デバイスの設計などに応用することで、自動運転やIoT分野の安心・安全な半導体技術の創出に貢献することが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18052901/
発表年月日:18/05/11 | 原子力基礎工学研究センター

電子状態の計算シミュレーションで産業利用価値の高い合金を設計する
~割れにくいマグネシウム合金開発への貢献に期待~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)原子力基礎工学研究センターの都留智仁研究副主幹らは、原子力機構の大型計算機「ICE X」(アイス エックス)を用いて、電子状態計算に基づく計算シミュレーションによって構造材料の「割れにくさ」を向上させる合金元素を探索する手法を開発しました。構造材料の機能で重視されるのは、強度と延性(のび)と割れにくさです。近年、マグネシウムは、延性が低く割れやすいものの、軽いという特徴から、アルミニウム合金に代わる材料として注目されています。今般、マグネシウムに着目し、本手法を用いて「割れにくさ」を向上させる合金元素を探索しました。この結果、これまでの研究で延性を向上させることが判っていたジルコニウムなどの合金元素が、実験結果と良い相関性を示し、本手法で割れにくさを向上させていることを明らかにしました。計算シミュレーションを用いた合金設計は、合金開発にかかる時間やコストを大きく削減できるとともに、希少元素を用いない産業利用価値の高い合金開発への応用が可能であることから、資源の少ない我が国の製造業の発展に貢献することが期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18051102/
発表年月日:18/04/27 | J-PARCセンター

アパタイト型酸化物イオン伝導体における高イオン伝導度の要因を解明
~定説くつがえす格子間酸素の不在~

東京工業大学理学院 化学系の藤井孝太郎助教、八島正知教授らの研究グループは、名古屋工業大学大学院 生命・応用化学専攻の福田功一郎教授、新居浜工業高等専門学校 生物応用化学科の中山享教授、名古屋工業大学の石澤伸夫名誉教授、総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターの花島隆泰研究員、日本原子力研究開発機構 J-PARCセンターの大原高志研究主幹と共同で、アパタイト型酸化物イオン伝導体が示す高いイオン伝導度の要因を原子レベルで初めて明らかにしました。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2018/press180427.html

2017 年度

発表年月日:18/03/29 | 先端基礎研究センター

従来の40倍もの巨大ファラデー効果を示す薄膜材料の開発に成功
~45年ぶりの新しい磁気光学材料の発見~

公益財団法人電磁材料研究所(理事長:荒井賢一)の小林伸聖主席研究員、池田賢司主任研究員、国立大学法人東北大学(総長:里見進)学際科学フロンティア研究所の増本博教授、同金属材料研究所の高橋三郎准教授および国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)先端基礎研究センターの前川禎通センター長、グウ・ボウ副主任研究員の研究グループは、全く新しい発想による磁気光学材料の開発に世界で初めて成功しました。開発した材料は、ナノグラニュラー構造と呼ばれる、ナノメートルサイズの磁性金属粒子をセラミックス中に分散させたナノ組織を有する薄膜材料であり、光通信に用いられる波長(1550nm)の光に対して、実用材料であるビスマス鉄ガーネットの約40倍もの巨大なファラデー効果を示します。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18032901/
発表年月日:18/03/23 | 原子力基礎工学研究センター

炉心溶融挙動を予測する新しい数値シミュレーションコードの開発
~デブリの詳細な組成分布の推定に光が見えた~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄 )の山下晋研究員は、今般、炉心が溶融した際に溶け落ちる構造物や核燃料などの物質の動きについて、より実態に近い溶融蓄積挙動を予測することができる数値シミュレーションコード「JUPITER」(ジュピター)を独自に開発しました。
既存手法で必要であった、溶融進展のシナリオの指定や構造物の形状などの簡略化を排除して、材料の熱力学的挙動や流動挙動を含めて溶融物の移動や蓄積の過程を厳密に計算することにより、非常に複雑な分布で堆積する溶融蓄積を可視化しました。また、JUPITERと核計算手法とを組み合わせた計算では、仮想的な初期条件の下では原子炉過酷事故時に懸念される再臨界の可能性が極めて小さくなることを推定しました。
今後、JUPITERに対しては、溶融燃料挙動を詳細に検討できるように、大規模な挙動に影響を及ぼす部分的な挙動評価から炉心全体まで拡張した条件でのシミュレーションを可能にするなどの改良を進めます。これにより、東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置に向けた燃料デブリの取り出しなどで重要となる溶融物の詳細な堆積状況といった炉内状況把握への貢献も期待できます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18032302/
発表年月日:18/03/15 | J-PARCセンター

エネルギー変換デバイスの高性能化に新たな道筋
層状結晶化合物の乱れた構造がもたらす機能発現のメカニズムを原子レベルで解明

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)、J-PARCセンターのリ・ビン博士研究員と川北至信 不規則系物質研究サイエンスグループリーダーらは、SPring-8のX線ビームやJ-PARCの中性子ビームなどを用いた実験的解析とコンピューターシミュレーションや材料情報科学に基づく理論計算を組み合わせたことで、層状結晶化合物註1セレン化クロム銀(AgCrSe2)の超イオン伝導体への相転移現象と熱電材料としての機能発現のメカニズムを原子レベルで解明することに成功しました。これにより、エネルギー変換デバイスとして社会に有用な熱電材料の高性能化に新たな道筋を開くものであると期待されます。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2018/press180315.html
発表年月日:18/02/26 | J-PARCセンター

自動車用鋼板の開発に新しい道筋
~先端鉄鋼「TRIP鋼」の引張力に対するふるまいを実験的に解明~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)J-PARCセンターのステファヌス・ハルヨ研究主幹、公立大学法人兵庫県立大学(学長 太田勲)の土田紀之准教授、一般財団法人総合科学研究機構(理事長 横溝英明)中性子科学センターの阿部淳研究員、国立大学法人京都大学(総長 山極壽一)のゴン・ウー任期付研究員らの研究グループは、J-PARCの物質・生命科学実験施設に設置している高性能工学材料回折装置「匠」を用いて、長さ5cmのTRIP型鋼試験片が千切れるまで引っ張りながら、中性子回折測定を実施し、TRIP鋼が高強度であることの原因を解明しました。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2018/Press180226.html
発表年月日:18/02/16 | 原子力基礎工学研究センター

DNA損傷の複雑さを決める極低エネルギー電子の新たな役割を解明
-放射線照射により生体の遺伝子情報はどのように変質するのか-

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)原子力基礎工学研究センターの甲斐健師研究副主幹らは、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫)の渡邊立子上席研究員ら及び東京農工大学(学長 大野弘幸)の鵜飼正敏教授との共同研究により、放射線照射による突然変異の誘発や発がんの主要な原因となる遺伝子情報の変質に関する新たなプロセスをシミュレーションにより解明しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18021602/
発表年月日:18/02/5 | 物質科学研究センター

軽量化を可能にする鋼材開発に向けた新たな分析手法の確立
-ものづくり現場における小型中性子源の貢献-

理化学研究所(理研)光量子工学研究領域中性子ビーム技術開発チームの池田義雅特別研究員、大竹淑恵チームリーダー、日本原子力研究開発機構物質科学研究センターの鈴木裕士グループリーダー、東京都市大学工学部の熊谷正芳講師らの共同研究グループは、「理研小型加速器中性子源システムRANS(ランズ)」を用いて、鉄鋼材料軽量化の鍵となるオーステナイト相分率の測定に成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18020501/
発表年月日:18/02/2 | 原子力基礎工学研究センター

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)によるがん細胞殺傷効果の理論的な予測に成功
-新しい薬剤の開発や治療計画の最適化に役立つ数理モデルを開発-

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)原子力基礎工学研究センター放射線挙動解析研究グループの佐藤達彦研究主幹、国立大学法人京都大学原子炉実験所の増永慎一郎教授、国立大学法人筑波大学医学医療系の熊田博明准教授、一般財団法人電力中央研究所原子力技術研究所の浜田信行主任研究員による研究グループは、ホウ素中性子捕捉療法の薬剤によるがん細胞殺傷効果の違いを理論的に予測する新たな数理モデルを開発しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18020202/
発表年月日:18/01/16 | 先端基礎研究センター

スピン流の雑音から情報を引き出す
-スピン流高効率制御に向けた新手法-

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の松尾衛助教(兼ERATO齊藤スピン量子整流プロジェクト・核ダイナミクスグループリーダー)、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの大沼悠一研究員、同センターの前川禎通センター長、東京大学物性研究所加藤岳生准教授らの研究グループは、スピン流雑音の基礎理論を構築し、スピン流生成に伴って試料に発生する熱量をスピン流雑音測定から決定する手法を発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18011601/
発表年月日:18/01/13 | 先端基礎研究センター

磁場に負けない超伝導
-ウラン化合物で現れる、磁場に強い超伝導の仕組みを解明-

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 (理事長:児玉敏雄) 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター 重元素材料物性研究グループの服部泰佑研究員らは、核燃料物質であるウラン化合物URu2Si2の低温での特異な超伝導状態を初めて明らかにしました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18011301/
発表年月日:18/01/11 | 物質科学研究センター

放射光光電子顕微鏡により絶縁物のナノスケール化学分析を実現
-粘土鉱物中のCs吸着挙動の解明に新たな道-

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)物質科学研究センターの吉越章隆研究主幹らは、公益財団法人高輝度光科学研究センター(理事長:土肥義治)及び東京大学の研究者らと共同で、大型放射光施設(SPring-8)の理研軟X線ビームラインBL17SUの放射光光電子顕微鏡(synchrotron radiation photoemission electron microscope: SR-PEEM)を使うことによって、人工的に2 wt%のCsを吸着した粘土鉱物(風化黒雲母:部分的に風化した黒雲母)のナノスケールでの化学結合状態の分析法の開発に成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18011101/
発表年月日:18/01/9 | 先端基礎研究センター

極小世界のビリヤード実験
-偏極陽子と原子核の衝突反応で大きな左右非対称性を発見-

理化学研究所(理研)仁科加速器研究センター理研BNL研究センター実験研究グループの秋葉康之グループリーダー、延與放射線研究室の中川格専任研究員とキム・ミンジョン国際プログラム・アソシエイト(研究当時)、日本原子力研究開発機構の谷田聖研究副主幹らが参画するPHENIX実験国際共同研究グループは、米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)の「RHIC(リック)衝突型加速器」を使って、偏極陽子と金原子核の衝突反応により生成される中性子の飛び出す方向に、左側へ約15%の偏りがあることを発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p18010901/
発表年月日:17/12/22 | 原子力基礎工学研究センター

被覆材が混ざった核燃料は水に溶けにくくなる
~燃料デブリの炉内安定性に係る新たな知見~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)原子力基礎工学研究センターの熊谷友多研究員らは、東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所における燃料デブリの取出しに先立ち、燃料デブリが健全な核燃料(二酸化ウラン)より冷却水に溶けにくい化学的に安定した性質を持つ可能性を実験により明らかにしました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17122202/
発表年月日:17/11/28 | 先端基礎研究センター

核分裂における原子核のさまざまな“ちぎれ方”を捉える
-放射性物質の毒性低減に貢献-

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄) 先端基礎研究センターの廣瀬 健太郎 研究副主幹及び西尾 勝久 マネージャーらは、東京工業大学(学長 三島 良直) 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の千葉 敏 教授、近畿大学(学長 塩﨑 均) 大学院総合理工学研究科の田中翔也 大学院生らとの共同研究により、核分裂における原子核のさまざまな“ちぎれ方”を捉え、原子核からの中性子放出と核分裂における原子核の“ちぎれ方”の関係を初めて明らかにしました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17112801/
発表年月日:17/11/23 | 原子力基礎工学研究センター

雷が反物質の雲をつくる!?
- 雷の原子核反応を陽電子と中性子で解明 -

榎戸輝揚 京都大学白眉センター特定准教授、和田有希 東京大学大学院理学系研究科博士課程学生 (理化学研究所仁科加速器研究センター)、古田禄大 同博士課程学生、湯浅孝行 博士 (元理化学研究所)、中澤知洋 東京大学大学院理学系研究科講師、土屋晴文 日本原子力研究開発機構研究副主幹、佐藤光輝 北海道大学大学院理学研究院講師らの研究グル ープは、雷が大気中で原子核反応 (光核反応) を起こすことを突き止めました。本研究では、地上に放射線検出器を設置し、2017年2月6日に新潟県柏崎市で発生した雷から、強烈なガンマ線のバースト放射を検出しました。さらに 35秒ほど遅れて、雷を起こした雲が検出器の上空を通過する際に、陽電子 (電子の反物質) からの 0.511MeV 対消滅ガンマ線の検出に成功しました。これらは、雷に伴うガンマ線が大気中の窒素と光核反応を起こした結果生じる、「中性子」と「窒素の放射性同位体が放出した陽電子」が起源と考えられ、理論的に予言されていた「雷による光核反応」の明確な証拠が得られました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17112301/
発表年月日:17/11/17 | 物質科学研究センター、J-PARCセンター

透過中性子によるスピン配列の観測に成功
~従来の回折中性子の測定より装置設計の自由度が増し、未知のスピン配列観測が容易に~

NIMSは、JAEA及びJ-PARCセンターと共同で、入射した中性子ビームが試料をどれだけ透過したかを測定することで物質の電子スピンの配列を観測することに世界で初めて成功しました。従来は回折中性子を観測していましたが、透過中性子は中性子ビーム源と試料を結ぶ直線上で観測できるため、未知のスピン配列が潜む超高圧・強磁場などの多重極限環境を実現する装置を設置しやすくなり、スピン制御による新材料開発の進展が期待されます。本研究は、国立研究開発法人物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点 中性子散乱グループの間宮広明主幹研究員等からなるチームと、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 物質科学研究センターの大場洋次郎研究員、同J-PARCセンターの及川健一研究主幹等からなるチームとの共同研究の成果です。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17111701/
発表年月日:17/11/13 | 物質科学研究センター

素粒子ミューオンの連続ビームによる、太陽系誕生時の有機物を含む隕石の非破壊分析に成功!

寺田健太郎教授(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、佐藤朗助教(同物理学専攻)および二宮和彦助教(同化学専攻)らの研究チームは、大澤崇人主任研究員(日本原子力研究開発機構)及び橘省吾教授(当時:北海道大学(現:東京大学大学院理学系研究科))他と協力し、大阪大学核物理研究センターで開発された新しいDCミューオンビームを用いたミューオンX線分析法により、有機物を含む炭素質コンドライト隕石Jbilet WinselwanのMg(マグネシウム), Si(ケイ素), Fe(鉄), O(酸素), S(硫黄), C(炭素)の非破壊定量分析に成功しました。この世界に類を見ない革新的な分析手法は、試料を壊すことなく内部の炭素濃度を定量分析(透視)できるため、小惑星からの回収サンプルのような希少なサンプルの初期分析(キャラクタリゼーション分析)に応用できるほか、考古学、材料科学など、様々な分野への応用が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17111301/
発表年月日:17/10/27 | 原子力基礎工学研究センター

放射線環境中のセラミックスがもつ自己修復能力の発見
~セラミックスの表面を観察する新しい手法による成果~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)原子力基礎工学研究センターの石川法人研究主幹らと、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(理事長:平野俊夫)高崎量子応用研究所の田口富嗣上席研究員は、特定のセラミックスが放射線に強い理由を探るために、高エネルギー重粒子線を照射したセラミックスに形成される数ナノメートルの大きさの超微細組織を観察する新しい手法を開発しました。さらに、その手法を利用して超微細組織の内部を分析した結果、超微細組織の内部が壊れて損傷しているセラミックスと、その損傷が再結晶化によって修復しているセラミックスがあることが判明しました。後者のセラミックスは、損傷してもすぐに原子の配列を直す能力、つまり自己修復能力を持っていることが示唆されました。今後、セラミックスがもつ自己修復能力の解明が進めば、宇宙や原子炉のような強い放射線環境でのセラミックスの利用の可能性が広がります。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17102702/
発表年月日:17/10/26 | 物質科学研究センター

物理的圧力と化学的圧力の組み合わせにより、新しい鉄系高温超伝導を発見

東京大学大学院新領域創成科学研究科の松浦康平大学院生、水上雄太助教、芝内孝禎教授のグループ、東京大学物性研究所の上床美也教授、量子科学技術研究開発機構(QST)の綿貫徹次長、町田晃彦上席研究員のグループ、日本原子力研究開発機構(JAEA)の福田竜生研究副主幹は、京都大学理学研究科の松田祐司教授のグループ、東京大学物性研究所の廣井善二教授、矢島健助教のグループ、香港大学、中国科 学院の研究者らと共同で、鉄系超伝導体セレン化鉄において、化学的加圧と物理的加圧を複合的に用いることで、新しい高温超伝導相を発見しました。多くの鉄系超伝導体では、化学組成の一部を置換した化学的加圧の効果は、実際に試料に圧力を物理的にかけた場合と同様な変化を示しますが、セレン化鉄ではこれらの2つの圧力効果が大きく異なることが知られていました。化学的圧力ではこの物質が示す電子液晶相が抑制され、一方で物理圧力では磁性相が出現します。今回、化学的加圧と物理的加圧の2つを網羅的に調べることにより、電子液晶相と磁性相の両方が消失した状態を作り出すことに成功し、その領域で新しい高温超伝導が出現することを発見しました。超伝導転移温度と電子液晶相、磁性相の位置関係から、磁性相が高温超伝導のメカニズムに関わっていることも明らかになり、これらの結果は高温超伝導の設計指針に重要な手がかりを与えるものと考えられます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17102601/
発表年月日:17/09/23 | 先端基礎研究センター

走査トンネル顕微鏡による電子軌道秩序の直接観察
― 物質表面に現れる新たな秩序の発見 ―

東京大学物性研究所(所長 瀧川仁)の吉田靖雄助教、Howon Kim特任研究員、長谷川幸雄准教授の研究グループは、日本原子力研究開発機構、カリフォルニア大学、国立シンガポール大学、国立清華大学等のグループと協力して、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、重い電子系超伝導体CeCoIn5の表面を調べました。STMの探針を極限まで物質最表面に近づけ、試料探針間の距離を原子スケール以下で精緻に制御したところ、原子の形状の下に隠れていた3d電子軌道を選択的に可視化することに成功しました。そして、可視化された3d電子軌道が隣同士で交互に向きを変えて並んでいる秩序状態を発見しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17092301/
発表年月日:17/09/8 | J-PARCセンター

フラストレーションと量子効果が織りなす新奇な磁気励起の全体像を中性子散乱で観測
-新しい磁気理論の指針を提示-

東京工業大学の伊藤沙也院生(現千代田化工建設)、栗田伸之助教、田中秀数教授、日本原子力研究開発機構の中島健次研究主席、河村聖子研究副主幹、高エネルギー加速器研究機構の伊藤晋一教授、茨城大学の桑原慶太郎教授、総合科学研究機構の加倉井和久サイエンスコーディネータの研究グループは、量子効果が顕著な三角格子反強磁性体の磁気励起の全体像を中性子散乱実験で初めて捉えました。研究グループは、三角格子反強磁性体の理想的なモデル物質「アンチモン酸バリウムコバルト(Ba3CoSb2O9)」に着目し、大型単結晶試料を作成、中性子を入射して、散乱中性子のスペクトルを高精度で解析。通常の磁性体で見られる磁気励起とは大きく異なる新奇な磁気励起について詳細を明らかにしました。従来の磁気励起の最小単位よりも細かい単位の励起(分数励起)の必要性を示唆する結果となり、フラストレーションと量子効果が新たな物性研究のフロンティアを開くこと、精密な中性子散乱実験が新奇な電子物性の解明につながることを示す成果となりました。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170908.html
発表年月日:17/08/19 | J-PARCセンター

世界初! 白色中性子線を用いて微量な軽元素を含む物質の超精密原子像取得に成功
― 機能性材料の性能向上に貢献 ―

名古屋工業大学の林好一教授、茨城大学の大山研司教授は、広島市立大学、高輝度光科学研究センター、熊本大学、日本原子力研究開発機構、J-PARC センター、高エネルギー加速器研究機構、東北大学金属材料研究所の研究者らと共同で、「白色中性子線ホログラフィー」の実用化に世界で初めて成功しました。白色中性子線とは、様々な波長を含む中性子線のことを指し、様々な波長の光を含んで白色となる可視光に倣って命名されています。ホログラフィーは、物体を三次元的に記録する撮像法です。白色中性子線を用いると複数の波長で多重にホログラムを記録できるため、従来技術をはるかに凌駕した精密な原子像を取得することができます。このたび開発した白色中性子線ホログラフィーとは、J-PARC で発生させる多重波長の中性子線を活かし、合計 100 波長程度のホログラムを一遍に測定できる技術です。X線回折法や電子顕微鏡法では観測できない軽元素の微量不純物の構造を感度よく観測できる点にも特徴があり、添加元素によって性能を制御する半導体材料、電池材料、磁性材料などの機能解明とともに新規材料開発に向けたブレークスルーが生まれると期待されます。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170819.html
発表年月日:17/08/18 | 先端基礎研究センター

音波を用いて銅から磁気の流れを生み出すことに成功
-磁石や貴金属を必要としない磁気デバイス開発へ-

慶應義塾大学大学院理工学研究科の小林大眞(こばやしだいま・修士課程2年)、理工学部の吉川智英(2017年3月卒業)、能崎幸雄教授、東北大学金属材料研究所の井口亮助教(当時。現 物質・材料研究機構研究員)、齊藤英治教授、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの松尾衛研究員(当時。現 東北大学材料科学高等研究所研究員)、前川禎通センター長らは、銅に音波を注入することによって電子の持つ磁気の流れ「スピン流」を生み出すことに成功しました。本研究で実証された新しいスピン流生成法によって、磁石や貴金属を必要としない省エネルギー磁気デバイスの実現が期待されます。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17081801/
発表年月日:17/08/10 | J-PARCセンター

シリコンを使わない太陽電池の設計に道筋 有機系半導体の特性を解明、次世代型太陽電池の実用化へ期待

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)とJ-PARCセンター(センター長 齊藤直人)、総合科学研究機構(理事長 横溝英明)の研究チームは、太陽電池の材料として「ヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPbI3)」に注目しました。この物質は、無機物で構成された八面体の中に、有機分子が入れ子のように入った「ペロブスカイト」と呼ばれる独特の結晶構造を持ちます。このペロブスカイト半導体の一つであるMAPbI3の大きな特徴は、電気に変換する過程でエネルギーが熱として逃げてしまう割合が圧倒的に小さい点と、高い変換効率にあります。しかし、MAPbI3がなぜそうした特徴をもっているか、その理由は不明のままでした。そこで研究チームは、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)に設置された2台の中性子非弾性・準弾性散乱実験装置を用いて、MAPbI3の原子運動を調べました。その結果、MAPbI3の中に含まれる有機分子の中に存在する正負の電荷が対となった電気双極子が独特の運動をしていること、この物質で熱を伝えているのは「光学フォノン」ではなく励起エネルギーがとても小さい「音響フォノン」であり、その伝搬速度が遅く、かつ寿命が短いため、熱伝導が極めて低く抑えられていることがわかりました。さらにMAPbI3では、半導体が光を吸収することで生成される「電荷キャリヤー」という状態が、再結合により消滅するまでにきわめて長い距離を移動できるという、太陽電池素材として有利な性質をもっており、低い熱伝導がこのキャリヤーの長い寿命を支えていることもわかりました。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170810.html
発表年月日:17/07/27 | J-PARCセンター

200年にわたる謎に終止符、ガラスの基本単位の構造を決定
- オルトケイ酸を用いた高機能・高性能ケイ素材料の創出に期待 -

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】触媒化学融合研究センター【研究センター長 佐藤 一彦】ヘテロ原子化学チーム 五十嵐 正安 主任研究員、山下 浩 主任研究員、フロー化学チーム 島田 茂 研究チーム長、同研究センター 佐藤 一彦 研究センター長は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構【理事長 古川 一夫】のプロジェクトでガラスの基本単位であるオルトケイ酸の結晶作製に成功し、国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構【理事長 児玉 敏雄】J-PARCセンター【センター長 齊藤 直人】大原 高志 主任研究員と一般財団法人 総合科学研究機構【理事長 横溝 英明】中性子科学センター 中尾 朗子 副主任研究員、茂吉 武人 研究員、花島 隆泰 研究員らの協力を得て、その構造を明らかにした。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170727.html
発表年月日:17/06/21 | 物質科学研究センター

世界初!ショットピーニングを実用レベルで解析可能なシステムを開発
―溶接継手の強度信頼性向上のために―

公立大学法人大阪府立大学(理事長:辻 洋)大学院工学研究科航空宇宙海洋系専攻海洋システム工学分野の柴原正和准教授、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)物質科学研究センターの秋田貢一ディビジョン長、一般財団法人発電設備技術検査協会(理事長:藤冨正晴)溶接・非破壊検査技術センターの古川 敬所長らの共同研究グループは、原子炉構造物の溶接部における応力腐食割れを抑制するための表面改質技術のひとつである「ショットピーニング」工法によって発生する圧縮力(=圧縮残留応力)を、実用レベルで解析するシステムの開発に成功しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17062101/
発表年月日:17/06/19 | J-PARCセンター

電子:自転がふらつくと、軌道も変わる
- 磁性物質における電子スピンのふらつきと電子軌道の結びつきが明らかに -

東京大学、日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、総合科学研究機構の共同研究チームは、中性子ビームを利用して、マンガンとバナジウムの複合酸化物における電子スピンのふらつきを測定し、磁性体において熱の伝わり方や磁石の向き、磁石の強さなどをコントロールする場合に重要な指標である電子スピンのふらつきが電子軌道の変化と結びついていることを明らかにしました。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170619.html
発表年月日:17/05/19 | 高温ガス炉水素・熱利用研究センター

ポーランド及び英国と高温ガス炉技術の協力を開始
~国産高温ガス炉技術の国際展開と国際標準化に向けて~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉 敏雄。)は、ポーランド国立原子力研究センターと「高温ガス炉技術に関する協力のための覚書」を平成29年5月18日に締結しました。また、英国のURENCO社と「高温ガス炉技術に関する協力のための覚書」を平成29年5月18日に締結しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17051901/

2016 年度

発表年月日:17/03/10 | 原子力基礎工学研究センター

原子力事故による海洋汚染を迅速に予測するシステムを開発 ~日本周辺海域の任意地点から放出された放射性物質の拡散挙動の計算が可能に~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」)原子力基礎工学研究センター環境動態研究グループの小林卓也グループリーダーらの研究グループは、日本周辺海域の原子力施設等で万一の事故により放射性物質が異常放出された際に、放射性物質の海洋拡散を迅速に予測する新たな計算シミュレーションシステム“STEAMER: Short-Term Emergency Assessment system of Marine Environmental Radioactivity(緊急時海洋環境放射能評価システム)”を完成させました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2016/p17031001/
発表年月日:17/02/3 | 原子力基礎工学研究センター

使用済燃料中パラジウム-107の存在量を世界で初めて実測 ~試料に近づかずに高純度パラジウムを分離し正確に測定~

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)原子力科学研究部門原子力基礎工学研究センター分析化学研究グループの浅井志保研究副主幹らと、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長:平野俊夫、以下「量研機構」という。)高崎量子応用研究所の佐伯盛久研究主幹らは、原子力発電で使用された燃料(使用済燃料)から高純度のパラジウムを分離し、パラジウム-107(107Pd)の存在量を世界で初めて測定しました。
関連リンク:https://www.jaea.go.jp/02/press2016/p17020301/
発表年月日:17/01/13 | J-PARCセンター

地球形成期におけるコアの軽元素の謎に迫る - 鉄へ溶け込む水素を中性子でその場観察 -

地球の中心核 (コア) は主成分である鉄に軽元素が溶け込んだものと考えられおり、どんな軽元素がどの程度存在するのかという疑問に対して、これまで数多くの実験的研究がなされてきました。有力候補の1つである水素は、高圧下でしか有意に鉄に溶け込まないこと、X線など従来の実験法では直接観察できないことなどから、その振る舞いはまだよく分かっていませんでした。東京大学大学院理学系研究科の飯塚理子 特任助教、八木健彦 特任研究員・名誉教授、東京大学物性研究所の後藤弘匡 技術専門職員らは、岡山大学惑星物質研究所と日本原子力研究開発機構J-PARCセンターとの共同研究で、水素の振る舞いを直接観察できる超高圧中性子回折装置PLANETを用いて、地球生成初期に集積した物質をモデル化した試料で高温高圧実験を行い、高圧下で温度が上昇し含水鉱物の脱水が起きると、固体のままの鉄に水素が溶け込むことを明らかにしました。このことから、水素が最初に固体の鉄に溶け込み、その後に核-マントル分離や他の軽元素の溶融鉄への溶解が起きた可能性が高いことが示唆されました。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170113.html
発表年月日:16/12/16 | J-PARCセンター

タンパク質単結晶の回折斑点強度を高精度に決定する手法パルス中性子を用いた回折データで世界初の実用化J-PARC内の茨城県生命物質構造解析装置iBIXにより確立

タンパク質中性子回折データ測定の世界的潮流は、単波長の原子炉中性子源を用いた方法からパルス中性子源を用いたものへと移行しているものの、そのデータ処理精度は芳しくありませんでした。今回の研究は、この状態の改善への第一歩を歩み出したものです。それまで単波長のX線や原子炉中性子を用いた回折に使われていたプロファイルフィッティング法という高精度の手法を、パルス中性子を用いたタンパク質の回折において実用化することに成功しました。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press161216.html
発表年月日:16/10/27 | 物質科学研究センター

中性子回折による金属材料の集合組織高速測定システムを開発 J-PARC内の茨城県材料構造解析装置iMATERIAで世界最速レベルの技術を確立

茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの小貫 祐介 助教らの研究グループが、中性子回折によって金属材料の集合組織を高速に測定できるシステムを開発しました。定量的な集合組織解析が難しく、通常のX線回折では相分率を正確に定めることも困難な二相ステンレス鋼を用いて、これらの情報を定量的に、かつ数分という短時間の測定で求めることができるようになりました。これは大強度陽子加速器施設・J-PARC(茨城県東海村)に茨城県が設置した「茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)」を用いて確立した技術で、試料を回転させる必要のない本方法は、金属材料の集合組織を高速に測定するシステムとしては世界最速のレベルであるといえます。今回の成果は、自動車のフレームに用いられる高張力鋼板や、モーターの高効率化に重要な電磁鋼板の高性能化に役立つと期待されます。また、これまで電池関連分野が中心だった「iMATERIA」の産業利用の裾野を、金属材料分野にまで大きく拡大するものだといえます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16102701/
発表年月日:16/09/29 | 原子力基礎工学研究センター

公衆の宇宙線被ばく線量を世界で初めて国や地域ごとに評価 ~世界平均値は国連科学委員会の評価値より16%低いことが判明~

人類は,絶えず自然界から放射線を受けており,原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が2008年に発表したレポートでは,全世界で自然放射線源による公衆の被ばく線量(実効線量)の約16%は宇宙線による寄与と評価されています。しかし,宇宙線による被ばく線量は,高度・緯度・経度により複雑に変化するため,UNSCEARは,国や地域ごとの詳細な評価は実施せず,限られた実測値から単純な仮定に基づいてその世界平均値のみを概算していました。このような背景から,より精緻かつ高精度な手法に基づく宇宙線被ばく線量の評価が望まれていました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16092901/
発表年月日:16/09/28 | 先端基礎研究センター

世界で初めての透明強磁性体の開発に成功 ― 新しい磁気光学効果の発見 ―

公益財団法人電磁材料研究所(理事長:荒井賢一)の小林伸聖主席研究員、国立大学法人東北大学(総長:里見進)学際科学フロンティア研究所の増本博教授、同金属材料研究所の高橋三郎助教および国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)先端基礎研究センターの前川禎通センター長の研究グループは、全く新しい発想による透明強磁性体の開発に世界で初めて成功しました。開発した材料は、ナノグラニュラー材料と呼ばれる、ナノメートルサイズの磁性金属粒子を誘電相中に分散させた金属と絶縁体(誘電体)の2相からなる薄膜材料であり、室温で大きな光透過率と強磁性を示し、かつ、透明度が磁場で制御可能な新しい磁気-光学効果を示すことを見いだしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16092802/
発表年月日:16/09/28 | 先端基礎研究センター

新たなスピン流の担い手を発見 ~量子効果を用いた熱電発電、情報伝送へ道~

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)/金属材料研究所 齊藤英治研究室の廣部大地博士課程学生と齊藤英治教授、同大学院工学研究科の川股隆行助教と小池洋二教授、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの佐藤正寛研究員(当時。現茨城大学准教授)と前川禎通センター長らは、新しいタイプのスピン流伝搬の観測に成功しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16092801/
発表年月日:16/09/13 | 先端基礎研究センター

新材料ゲルマネンの原子配置に対称性の破れ ― 省エネ・高速・小型電子デバイス実現に向けた素子開発へ道 ―

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」)先端基礎研究センターの深谷有喜研究主幹らは、東京大学物性研究所(総長 五神真)の松田巌准教授らと高エネルギー加速器研究機構(機構長 山内正則、以下「KEK」)物質構造科学研究所の兵頭俊夫特定教授らのグループとの共同研究により、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いて単原子層状物質グラフェンのゲルマニウム版であるゲルマネンの原子配置を決定しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16091301/
発表年月日:16/08/26 | J-PARCセンター

大量に塩(えん)を含む氷の特異な構造を解明

氷と塩とは互いに溶け合わない、という事実は古くから知られています。しかし、高圧氷と塩との反応については、これまで系統的な研究が行われておらず、ほとんど知見がありませんでした。パリ第6 ピエール・エ・マリ・キュリー大学のS. Klotz教授らの研究グループは、東京大学大学院理学系研究科小松一生准教授、鍵裕之教授、および日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター、総合科学研究機構 中性子科学センターとの共同研究で、塩化リチウムおよび臭化リチウム水溶液から、リチウムイオンや塩化物/臭化物イオンを高い濃度で含む氷の高圧相を合成し、これを大強度陽子加速器施設 (J-PARC) の物質・生命科学実験施設 (MLF) にある超高圧中性子回折装置PLANETを用いて観察することに成功しました。得られた中性子回折パターンおよび分子動力学法による計算結果から、高濃度に塩を含む氷は、氷の高圧相である氷VII相に似た構造を持ちながら、水分子の向きについてはほぼ等方的であり、水素結合ネットワークの多くが破壊されていることを明らかにしました。このような壊れた水素結合ネットワークは他の形の氷や水素結合を持つ物質には見られないもので、新奇な物性を持ちうる可能性があります。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160826.html
発表年月日:16/08/26 | 先端基礎研究センター

重イオン反応による新たな核分裂核データ取得方法を確立 ― 核分裂現象の解明にも道 ―

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄。以下「原子力機構」)先端基礎研究センターの西尾 勝久サブリーダー及び廣瀬 健太郎 研究副主幹らは、東京工業大学(学長 三島 良直。以下「東工大」)科学技術創成研究院 先導原子力研究所の千葉 敏 教授、近畿大学(学長 塩﨑 均)理工学部 電気電子工学科の有友嘉浩 准教授らのグループとの共同研究により、核分裂核データとして重要な核分裂片の質量数収率分布を重イオンどうしの衝突で生じる多核子移行反応によって取得する新たな方法の開発に成功するとともに、動力学モデルで実験データを再現することに成功しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16082602/
発表年月日:16/07/4 | J-PARCセンター

高圧氷に新たな秩序状態を発見 - 氷の五大未解決問題の一つを解決 -

我々の身の回りでもっとも身近な結晶とも言える氷ですが、今でも解決されていない多くの研究課題があります。氷には17種類もの多形 (異なる構造の氷) があることが知られていますが、高圧低温状態で現れるとされる氷XV相の構造と性質には多くの矛盾があり、氷の未解決問題の一つとなっていました。東京大学大学院理学系研究科小松一生准教授、鍵裕之教授らの研究グループは日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター、総合科学研究機構 中性子科学センターとの共同研究で氷XV相の低温高圧下で中性子回折の直接観察を行い、氷XV相が異なる水素配置を持つ複数のドメインからなる部分秩序相であることを明らかにしました。この結果は氷XV相に関する過去の研究の矛盾点を解消でき、さらに、氷の多形において秩序相、無秩序相に加え、部分秩序相という第3の状態を考慮に入れる必要があることを示唆するもので、氷研究におけるパラダイムシフトとなる可能性があります。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160704.html
発表年月日:16/06/30 | J-PARCセンター

充放電しているリチウム電池の内部挙動の解析に成功 - 中性子線を用い非破壊かつリアルタイム観測により実現 -

東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構、京都大学の研究グループは、実際に充放電しているリチウムイオン電池の内部で起こる不均一かつ非平衡状態で進行する材料の複雑な構造変化を原子レベルで解析することに成功した。中性子線を用いて、非破壊かつリアルタイムに観測し、そのデータを自動解析するシステムを開発した。刻一刻と変化する電池反応を観測し、解明できる手法の開発は画期的である。蓄電池の信頼性や安全性に関する詳細な情報が容易に得られるため、リチウムイオン電池のさらなる高性能化だけでなく、全固体電池などの次世代蓄電池開発にも大きく貢献すると期待される。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160630.html
発表年月日:16/06/14 | 物質科学研究センター

世界初!ステンレス鋼の加工時に生成するナノサイズの結晶相を、放射光X線により観測! ~水素による脆化を防ぐ研究開発への応用に期待~

公立大学法人大阪府立大学(理事長:辻 洋)理学系研究科 久保田 佳基 教授と、同工学研究科 森 茂生 教授、新日鐵住金ステンレス株式会社(代表取締役社長:伊藤 仁)研究センター 秦野 正治 上席研究員、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉 敏雄)原子力科学研究部門 物質科学研究センター 菖蒲 敬久 主任研究員らは、さびにくい鉄鋼材料として原子炉シュラウドをはじめ最も実用材料として使用されているステンレス鋼SUS304の加工誘起マルテンサイト変態における中間相として六方晶ε相が出現することを明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16061401/
発表年月日:16/06/8 | J-PARCセンター

金属強磁性体SrRuO3を用いて電子状態の量子力学的な位相をスピンの運動として初めて観測

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 物質構造科学研究所の伊藤晋一教授のグループは、国立研究開発法人理化学研究所創発物性科学研究センター (CEMS) の永長直人副センター長、十倉好紀センター長のグループ、および、Institute for Basic ScienceのJe-Geun Park教授のグループと共同で、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設 (MLF) に設置された高分解能チョッパー分光器HRC (以下、HRC) を用いて、次世代型太陽電池への応用などが期待される金属強磁性体SrRuO3のスピン波のエネルギーを温度の関数として正確に測定することで、「電子状態の量子力学的な位相」に関する情報を得て、それが電子輸送現象である「ホール効果」と関連づけることができることを世界で初めて明らかにしました。
関連リンク:http://j-parc.jp/ja/topics/2016/Press160608.html
発表年月日:16/05/10 | 先端基礎研究センター

森林から生活圏への放射性セシウムの移行を抑制する新技術

茨城大学工学部の熊沢 紀之 准教授の研究室と、熊谷組グループ((株)熊谷組、テクノス(株))、日本原子力研究開発機構(JAEA)の長縄 弘親 博士らによる研究グループは、放射性セシウムを吸着できるベントナイト(モンモリロナイトという鉱物を主成分とする粘土の総称)と、電荷をコントロールしたポリイオンコンプレックス(反対電荷を持った高分子が静電力によって自己集合したもの。)を用い、放射性セシウムの移行を抑制する技術を新たに開発しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16051001/
発表年月日:16/04/21 | J-PARCセンター

パーキンソン病発症につながる「病態」タンパク質分子の異常なふるまいを発見 ―発症のカギとなるタンパク質の線維状集合状態の形成過程解明の手がかりに―

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、国立大学法人鳥取大学、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター、一般財団法人総合科学研究機構らは共同で、中性子準弾性散乱装置を用いて、パーキンソン病の発症と密接に関係する脳内のあるタンパク質の動きを分子レベルで調べ、このタンパク質同士が線維状に集合した状態で異常なふるまいを示すことを世界で初めて発見しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2016/p16042101/

2015年度

発表年月日:2016/3/18 | 高温ガス炉水素・熱利用研究センター

工業材料で製作した熱化学法ISプロセス水素製造試験装置による水素製造に成功 ―実験室段階から高温ガス炉による水素製造の研究開発が前進―

高温ガス炉の熱を利用するための熱化学法ISプロセスによる水からの水素製造技術の研究開発を実施しています。この度、この熱化学法ISプロセスの工業化を見据え、実験室段階(反応器などをガラスで製作)に続く取り組みとして、3反応工程毎の環境に耐え得る工業材料(金属、セラミックス等)を用いて反応器を開発し、各反応工程別の機能確認に加え、世界でも例の少ない3反応工程を連結した水素製造試験装置の試運転に成功し、実用化に向けた研究開発が大きく前進しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p16031801/
発表年月日:2016/3/7 | 先端基礎研究センター

全反射高速陽電子回折法によりグラフェンと金属との界面構造の解明に成功 ― グラフェンを用いた新規材料開発に道 ―

原子力機構とKEKが共同で開発した全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いてグラフェンと金属基板間の境界面の構造(界面構造)を詳細に調べ、金属の元素によるグラフェンとの結合の違いを実験的に明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p16030701/
発表年月日:2016/1/11 | 量子ビーム応用研究センター

レーザーでトンネルコンクリートの健全性を高速で検査する - レーザー計測技術の高度化により、遠隔・非接触のトンネル安全性検査の高速化に道筋 -

コンクリート内部の外からは見えない「ひび割れ」等の欠陥をレーザーにより検出する「レーザー欠陥検出法」と呼ばれる技術を高速化し、従来の50倍の速さでの欠陥の検出に成功しました。今後、実際のトンネルコンクリートで想定される様々なタイプの欠陥の検出を検証していくことで、従来の打音法に代わる、遠隔・非接触のトンネル安全性検査技術として期待されます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p16011101/
発表年月日:2015/12/18 | 量子ビーム応用研究センター

抗がん剤の作用メカニズムの『鍵』を原子レベルで解明 ―より効果の高い抗がん剤の開発に繋がると期待―

本研究成果により、がん細胞に特異的に細胞死を引き起こす抗体の立体構造とその作用の「鍵」となる基本単位を、原子レベルで明らかにすることに成功しました。近年、抗体の特性を活かした分子標的治療が盛んに行われており、数多くの抗体分子が医薬品として臨床応用されています。本研究で得られた原子レベルでの知見は、より効果の高い抗がん剤の開発を推し進め、将来的に副作用が低減した抗がん剤の創製に繋がると期待されます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15121801/
発表年月日:2015/11/26 | 量子ビーム応用研究センター

機能性食品の開発に新たな道筋 ―植物種皮のアントシアニン蓄積を支配する遺伝子をイオンビームで発見―

アントシアニンとは、黒大豆のような種子の色などを決める植物色素のポリフェノールの一種で、強い抗酸化力を持つことも知られています。アントシアニンがどのようにして液胞と呼ばれる細胞小器官へ蓄積するのか、そのメカニズムはほとんどわかっていませんでした。今回、赤い未熟種子をつける特殊なシロイヌナズナを利用し、この種子にイオンビームを照射して種皮のアントシアニン蓄積量が減少した変異体を作出し、この変異体に関する詳細な細胞観察や塩基配列の解析から、アントシアニンの蓄積に必須の遺伝子の同定に世界で初めて成功しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15112601/
発表年月日:2015/11/5 | 量子ビーム応用研究センター

放射線障害を回避する染色体タンパク質の立体構造の変化を初めて観測 ―DNA損傷修復機構の解明と放射線障害の防止に期待―

放射線を照射した細胞が、染色体を構成するタンパク質の立体構造を自ら変化させることを発見しました。この構造の変化は、放射線で傷ついた遺伝子(DNA)の修復を促していると予想されます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15110501/
発表年月日:2015/9/28 | 先端基礎研究センター

イオン照射による新奇複合ナノチューブの新たな創製方法の開発に成功 -小型化・省電力化された電子・発光デバイスへの道を拓く-

イオン照射により、結晶状態をコントロールできるようにしたことで、新しい構造を持った新奇複合炭化ケイ素(SiC)系ナノチューブの創製方法の開発に成功しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15092801/
発表年月日:2015/6/26 | 原子力エネルギー基盤連携センター

加速器中性子で製造した医学診断用テクネチウム99mの実用化へ大きく前進(お知らせ)

核医学診断に多用されている放射性同位元素テクネチウム99m(99mTc)を、加速器中性子で生成したモリブデン99(99Mo)から熱分離精製し、その純度が放射性医薬品基準をクリアしていることを確認するとともに、骨診断用医薬品を用いたマウス生体内分布画像を初めて取得し、既存の99mTc製品と同等であることを明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15062601/
発表年月日:2015/6/1 | 高崎量子応用研究所

原子力機構高崎研のイオンビーム育種技術支援が民間の花の新品種作出に貢献

地域や企業が有する特色ある農作物等のブランド力の強化や高品質化を通じて農業の振興に貢献するため、機構は高い専門知識を有する技術支援員を配置し、新品種の開発に取り組む民間の団体や企業のユーザーに対する技術支援を行ってきました。その一環として、イオンビーム育種(イオンビームが誘発する突然変異を利用した植物などの有用品種の作出)において、このたび、海部苗木花き生産組合連合会(愛知県)、有限会社精興園(広島県)、及び横浜植木株式会社(神奈川県)は、新品種の作出に成功し、販売に至りました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15060102/
発表年月日:2015/5/15 | 先端基礎研究センター

強い磁場でよみがえる超伝導のしくみを解明- 磁場で制御するウラン化合物の新しい機能性の解明と材料開発の推進 -

ウラン化合物URhGeでは、磁場でいちど壊された超伝導が、さらに強い磁場をかけると再び出現するという、これまでにない現象が見つかっていました。今回、核磁気共鳴実験からこの新しい超伝導のメカニズムを初めて明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15051501/
発表年月日:2015/5/7 | 量子ビーム応用研究センター

放射線がん治療の副作用低減に新たな道筋-放射線が当たっていない細胞で起こる「バイスタンダー効果」の特徴を見出すことに成功-

放射線が当たっていない細胞で起こる「バイスタンダー効果」(放射線が当たっていない周囲の細胞があたかも放射線に当たったかのような反応を示す現象)に関して、細胞内で合成された活性な窒素化合物である一酸化窒素が引き金となって、かつその合成量に応じて起こることを世界で初めて明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15050701/
発表年月日:2015/4/27 | 量子ビーム応用研究センター

これまでになく強く明るいX線を発生する新たな技術誕生へ―毎秒1億回の電子ビーム・レーザー衝突でX線を作る―

エネルギー回収型リニアックにおいて電子ビームとレーザービームを微小スポットで、1秒間に1.625億回という非常に高い頻度で衝突させることで、エネルギーのそろったX線ビームの生成に成功し、新たな計測・観察ツールとしての次世代光源へ道を開きました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15042701/
発表年月日:2015/4/23 | 量子ビーム応用研究センター

ヨシはなぜ塩水でも育つのか―根の中でナトリウムを送り返す動きをポジトロンイメージングで観ることに世界初成功―

放射線を利用した画像化技術(植物ポジトロンイメージング技術)を使い、塩分による害を引き起こすナトリウムがイネとヨシの内部を動く様子を画像化し、ヨシは一旦根の中に吸収したナトリウムを、根の先端に向かって常に送り返して排除していることを世界で初めて明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15042301/
発表年月日:2015/4/13 | 量子ビーム応用研究センター

非磁性体の電子スピンを“ありのまま”で観測~陽電子ビームの可能性の創出~

スピン偏極陽電子ビームを用いて、電流を流した非磁性体中の電子スピン配列現象をスピン偏極陽電子ビームを用いて直接観測することに初めて成功し、スピントロニクスの材料研究の分析手段として陽電子ビーム手法が有用であることを実証しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15041301/
発表年月日:2015/4/9 | 先端基礎研究センター

103番元素が解く、周期表のパズル-ローレンシウム(Lr)のイオン化エネルギー測定に成功-

103番元素ローレンシウム(Lr)のイオン化エネルギー測定に成功しました。測定したイオン化エネルギーは他のアクチノイドと比べて極端に低いこと、この値を理論計算で再現すると、最外殻電子が相対論効果の影響を受けて周期表から期待される軌道と異なることを高い精度で明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2015/p15040901/

2014年度

発表年月日:2015/3/12 | 量子ビーム応用研究センター

セシウムイオンを選択して吸着するタンパク質を発見-生物における放射性セシウムの動態を知る新たな手がかり-(お知らせ)

これまでタンパク質にはセシウムを選択的に吸着する部位は知られていませんでしたが、X線結晶解析さらにX線の異常分散効果を利用して、セシウムイオンを選択して吸着する部位を発見しました。これにより、セシウムを吸着しやすいタンパク質を多く持つ生物や生体内の組織、即ち、セシウムを蓄積しやすい可能性がある生物や生体内の組織を探し出すことができます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p15031201/
発表年月日:2015/3/12 | 原子力基礎工学研究センター

原子核崩壊データを網羅した原子核の世界地図「原子力機構核図表2014」の完成

最新の原子核崩壊データをまとめた冊子「原子力機構核図表」を大きく改訂しました。本核図表には、原子核の半減期をはじめ原子核崩壊データが収録されています。実験的に確認された3,150核種の原子核崩壊データとともに、理論的に存在が予言されている1,578核種の半減期も収録しています。この核図表を広げて見ると、最前線の原子核研究に必要な情報を得られるとともに、「宇宙で、どの様に元素ができてきたのか?」等の教育にも活用できます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p15031202/
発表年月日:2015/3/10 | 量子ビーム応用研究センター

光で鉄の原子核を一気に加速 -光は天体現象や元素合成過程の解明に迫る新しい手段となるか?-

強いレーザー光で電子をまとわない状態の鉄の原子核を作り出し、その原子核を世界で初めて一気に光の1/5の速さまで加速することに成功しました。この手法を応用すれば、これまで実験室内で生成できても短時間ですぐに壊れるため取り出すことが困難であった原子核を取り出すことが可能になり、原子核の詳細な研究・分析に新しい道を拓くことが期待できます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p15031001/
発表年月日:2015/2/26 | 量子ビーム応用研究センター

爽やかな青色の花色素を作り出す酵素のしくみを解明-青色色素原料との結合状態の観測に世界で初めて成功-

植物の花や果実などの発色を担い、医薬品の原料としても期待される色素“アントシアニン”を大型放射光施設SPring-8等を利用したX線結晶構造解析によりアントシアニジンが酵素に結合した様子を世界で初めて観測し、発色の異なる色素原料を識別する分子メカニズムを明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p15022601/
発表年月日:2015/2/6 | J-PARCセンター

J-PARCの3GeVシンクロトロン加速器が性能を大幅に向上-1MW相当のビーム加速に成功-

大強度陽子加速器施設J-PARCの第2段加速器である3GeVシンクロトロン(3GeV Rapid Cycling Synchrotron: RCS)において、平成27年1月10日の試験運転時に、所期性能である1MW相当のビームパワーでの陽子の加速に成功しました。大強度の高繰り返し陽子シンクロトロンとしての世界最高性能を更に向上させたことになります。今後、J-PARCで行われている、物質科学、生命科学、素粒子物理、原子核物理など各分野における研究の更なる進展が期待されます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p15020602/
発表年月日:2015/1/14 | 量子ビーム応用研究センター

重粒子による高いがん治療効果をもたらす「DNAの傷の塊(かたまり)」を発見-放射線によって生じるDNAの傷の微視的分布の観測に世界で初めて成功-

独重粒子線によって生じたDNAの複数の傷が極めて近接して塊のように存在していることを世界で初めて見出しました。重粒子線などの放射線で生じるDNAの傷のミクロな分布を明らかにしたことで、重粒子線がん治療の高度化や重粒子線を含む宇宙放射線の人体影響の正確な評価が可能になります。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p15011401/
発表年月日:2015/1/8 | 量子ビーム応用研究センター

先端X線分光法が「働く触媒中の電子の動き」を捉える~触媒の新規創製、性能向上に指針を与える新しい測定技術を実証~

独自に開発を進めてきた先端X線分光法(共鳴非弾性X線散乱法)により、触媒反応の過程で変わりゆく電子の動きを、反応しているその場で精緻に調べることを可能にし、自動車排ガス浄化のためのインテリジェント触媒が働いている環境下の測定により触媒となる貴金属とその触媒を支える担体との間での電子の動きが触媒の自己再生能、さらには反応ガスの吸着能を支配していることを解明しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p15010802/
発表年月日:2014/12/22 | 原子力基礎工学研究センター

J-PARCがもたらす新たな元素分析法 -大強度パルス中性子による迅速・高精度分析-(お知らせ)

大強度陽子加速器施設(J-PARC)で得られる大強度パルス中性子の利用と、測定技術の高度化によって、従来、ガンマ線と中性子を個別に測定していた元素分析技術を融合した分析法を世界で初めて実用化しました。融合による相乗効果でこれまで分析が困難であった元素でも高精度に分析出来る事を示しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14122202/
発表年月日:2014/12/19 | 先端基礎研究センター

金属中の磁気・電気の流れを切り替える- 原子力分野での熱電発電利用に向けて -

極僅かにイリジウムを添加した銅において、磁気の流れを電気の流れ(もしくはその逆)に変換する物理現象(スピンホール効果)で生じる電圧の符号が、電子同士の互いに反発しあう力によって反転することを理論的に示しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14121901/
発表年月日:2014/12/18 | 高温ガス炉水素・熱利用研究センター

高温ガス炉の国際安全基準の策定に向けて 国際原子力機関(IAEA)の下で協力研究計画を開始します(お知らせ)

日本原子力学会「高温ガス炉の安全設計方針」研究専門委員会にて、高温工学試験研究炉(HTTR)4)の試験データに基づく高温ガス炉の安全基準案についての検討を実施しております。原子力機構は、今般IAEAで開始が決定された協力研究計画に対し、当該基準案を提出し、その国際標準化を目指すこととしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14121801/
発表年月日:2014/12/12 | 先端基礎研究センター

熱の流れが磁場で変わる仕組みを解明- 磁場を用いた熱流制御の可能性 -

フォノンホール効果について、なぜ熱流が磁場によって向きを変えるのかは謎でしたが、今回、当研究グループは、この現象の起源が、非磁性絶縁体に極僅かに含まれた磁気を持ったイオン(磁性イオン)によるものであることを、理論計算によって明らかにしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14121201/
発表年月日:2014/11/21 | 量子ビーム応用研究センター

SPring-8とレーザーを組み合わせた新しい観測手法と数値シミュレーションにより、レーザー加工時の金属の溶融・凝固の様子のその場観察に世界で初めて成功 推進で成果活用へ
今回の成果は~ 戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) 課題「革新的設計生産技術」に提案・採択された課題で活用することとなっており、現在本格的な研究を展開しています。

SPring-8とレーザーを組み合わせた従来にない高精度の観察手法を開発し、更に数値シミュレーション技術と組み合わせることにより、レーザー加工時に金属が溶融・凝固する様子を精密に観察することに世界で初めて成功しました。今回の成果により、溶接時に溶けて液体化した金属部分が周辺部分から受ける影響を正しく把握できるようになり、レーザー溶接の大幅な品質向上が期待されます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14112101/
発表年月日:2014/11/14 | 先端基礎研究センター

下水汚泥焼却灰中における放射性セシウムを90%以上回収することに成功 -放射性物質を含む汚泥焼却灰の処理に道筋- (お知らせ)

東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故によって生成された、放射性セシウムを含む下水汚泥焼却灰の化学状態を分析し、灰を数百ナノメートルサイズの粒子まで粉砕して処理することで、90%以上の放射性セシウムを回収することに成功しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14111401/
発表年月日:2014/10/31 | 量子ビーム応用研究センター

福島の土壌が僅かなセシウムの取り込みにより多量のセシウムを呼び込むメカニズムを解明 -放射性セシウムが吸着した粘土鉱物のミクロな構造変化- (お知らせ)

土壌成分のひとつである粘土鉱物「バーミキュライト」が、セシウムイオンを多量に取り込むメカニズムの解明に成功しました。この成果は、福島県の汚染土壌を取り扱う上で有用な知見を含んでおり、セシウムイオンの環境移行、土壌からのイオンの溶脱方法、減容化方法の開発など、福島県内の環境回復問題に大きく貢献することが期待されます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14103101/
発表年月日:2014/10/30 | 原子力基礎工学研究センター

エマルションフロー法でレアアース・レアメタルのリサイクルに大きく貢献 -廃材内レアアースを低コスト・高効率に高純度で回収-

カメラや眼鏡に使われる高屈折率ガラスには、多量のレアアースが使用されています。新たな放射性廃液の浄化方法として開発したエマルションフロー法を利用して、光学ガラスなどの廃材から酸処理によって溶出させたレアアースを、低コストで高効率に、純度99.999%(ファイブナイン)にまで分離・精製することに成功しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14103001/
発表年月日:2014/9/26 | 量子ビーム応用研究センター

鉄に溶けた水素はどこにいる? -鉄中の水素を中性子で観測することに成功-

水素を観測することができるJ-PARCの大強度中性子線を利用して、高温高圧力下において鉄に水素が溶ける過程と鉄中に高濃度に水素が溶けた状態を、そのままの状態で観察することに成功しました。その結果、鉄中の水素の存在位置が定説とは異なることを発見しました。今回、実験的に鉄中の水素の位置や量を決定できたことにより、鉄-水素系に新しい理解をもたらし、鉄鋼材料の劣化や地球内部の状態など鉄と水素が関わる研究の進展が期待されます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14092603/
発表年月日:2014/9/22 | 先端基礎研究センター

まだら模様に凍る電子 ─ 磁場で変化する重元素化合物による新しい原子力材料開発の推進 ─

重元素と呼ばれる元素のうち、イッテルビウム(Yb)化合物について、核磁気共鳴法を用いて電子状態を観測した結果、低温で低磁場の環境下においては、水と氷が共存するように、二つの異なった電子状態が、まだら模様になって共存することが初めて見出されました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14092201/
発表年月日:2014/8/29 | 量子ビーム応用研究センター

DNAの曲がりやすさにも遺伝子発現情報が含まれている -J-PARCにおける中性子準弾性散乱実験とシミュレーション計算により、DNAと水和水の運動の観測に成功-

シミュレーション計算で曲がりやすさが大きく異なると予測された二つのDNAに関して、DNAの水和水の運動を直接観測できる中性子準弾性散乱実験をJ-PARCで実施し、その運動の詳細をシミュレーション計算により追跡した結果、DNAの曲がりやすさは塩基配列によって異なることを実証しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14082901/
発表年月日:2014/8/4 | 原子力水素・熱利用研究センター

インドネシア原子力庁と高温ガス炉の研究開発に関する協力を開始(お知らせ)

原子力機構は、高温工学試験研究炉(HTTR)の研究開発において獲得した知見等を活用して、インドネシア原子力庁(BATAN)が進める高温ガス炉(試験・実証炉)の導入計画に協力し、我が国の高温ガス炉技術の国際展開及び国際標準化を図ることとしました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14080401/
発表年月日:2014/6/27 | 先端基礎研究センター

ウラン系強磁性超伝導体における新しいタイプの磁性現象の発見(お知らせ)─磁性が共存する超伝導メカニズムの解明へ─

磁性と超伝導が共存する唯一の超伝導体として知られているウラン系強磁性超伝導体において、既存の磁性理論では説明できない全く新しいタイプの磁性現象を発見しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14062701/
発表年月日:2014/6/11 | 先端基礎研究センター

強磁場で引き出されたウラン化合物の特異な磁性 ─世界最高磁場で核磁気共鳴法を応用─

ウラン化合物(Uru2Si2)に対して、世界最高磁場を用いて状態を変化させて出現した磁気状態を、核磁気共鳴(NMR)法により調べた結果、特異な構造を決定しました。新しい機能をもったウラン化合物を作るための原理を解明し、将来の原子力科学の発展に寄与します。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14061101/
発表年月日:2014/5/21 | 先端基礎研究センター

回転運動によって操作された原子核スピンの直接測定に成功 ~スピンを用いたナノメカニクス研究の加速へ~

核磁気共鳴法を独自に発展させ、1秒間に万回転する物質中の原子核スピンを分析する手法を開発しました。これにより、高速回転運動が素粒子のスピンへ与える効果を直接測定することに成功しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14052101/
発表年月日:2014/5/2 | 原子力基礎工学研究センター

原子力施設の解体物などを詰めたドラム缶中のウランの総量を非破壊測定する技術を実証

廃棄物ドラム缶内に含まれるウランの総量を正確に把握することが必要です。従来の技術では、ドラム缶中のウランの位置によってウラン量の測定値が数倍以上変化してしまう問題があり正確な測定が困難でした。そこで、私たちは高速中性子直接問いかけ法という技術を開発し、短時間で従来の技術よりずっと高い精度で測定できることを実証しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14050201/
発表年月日:2014/5/2 | 原子力基礎工学研究センター

新しい放射性廃液処理技術 ~エマルションフロー法での除染廃液からのウラン除去 ~

放射性廃液の処理でウランなどの放射性物質だけを除去したいとき、溶媒抽出という、油に目的成分だけを抽出して除去する方法が使えます。この原理に基づく新たな抽出法として開発してきたエマルションフロー法を利用した溶媒抽出装置は、高性能、低コストで、しかも扱いが容易です。この装置を3台連結すれば、廃液から99.9%のウランを選択的に回収・除去できることを実証しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14050202/
発表年月日:2014/4/25 | 量子ビーム応用研究センター

量子ビームの合わせ技で電子の動きを捉える ~三種の非弾性散乱を用いて銅酸化物高温超伝導体における電子励起状態の全体像を解明~

三種の量子ビーム、軟X線、中性子、硬X線の非弾性散乱を組み合わせることで、負の電荷が導入された(電子ドープ型)銅酸化物高温超伝導体におけるスピンと電荷の励起の全容を明らかにしました。特に、電子ドープ型の励起はホールドープ型と大きく異なり、電子がより動きやすい状態にあることを発見しました。今後、実験結果を統一的に記述する理論モデルの探索から銅酸化物における超伝導発現機構解明に近づけるものと期待されます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14042502/
発表年月日:2014/4/22 | 量子ビーム応用研究センター

蛍光X線ホログラフィー法により リラクサー強誘電体の局所構造の3次元可視化に成功 - 新規高機能誘電・圧電材料実現へのブレークスルー -

蛍光X線ホログラフィー法をペロブスカイト構造を持つ典型的リラクサー強誘電体に適用し、不均質系結晶における3次元局所構造の解明に世界で初めて成功しました。今回の成果により、今後、リラクサー強誘電体の高機能物性の起源の解明が進み、鉛等の有害物質を使用することなく高性能な誘電・圧電性を有する強誘電体を実現するためのブレークスルーがもたらされます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14042201/
発表年月日:2014/4/21 | 先端基礎研究センター

全反射高速陽電子回折法「TRHEPD法」の高度化により究極の表面構造解析が可能に)

高強度低速陽電子ビームを高輝度化して、TRHEPD(全反射高速陽電子回折)法の高度化を実現しました。 この手法をシリコン結晶の(111)表面に適用して、その表面超高感度性を実証しました。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14042101/
発表年月日:2014/4/18 | 先端基礎研究センター

DNA損傷が正常な染色体にも影響を与えることを発見(お知らせ)

DNAが損傷を受けることで、細胞中の被ばくしていない正常な染色体にも異常が生じることを発見しました。生物に対する照射影響では、直接損傷を受けたDNAが正常に機能できないことが主に考えられていましたが、細胞内では複雑なメカニズムを介して非照射染色体中のDNAにも影響が及ぶ可能性を示唆する結果と言えます。
関連リンク:http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14041801/

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